ドスの新政(命懸けの恋)

@k0905f0905

第1話

「あっ、ごめんなさーい」

わたしはそのとき何かに人ごみで

ぶつかった。

 そりゃあ、人だろう。人に違いない。

わたしは堀田硬貨。十七才のロングヘア―の

似合う(エへへ)十七才だ。

夏休みに渋谷で友人の金田幹と

ショッピングとしゃれこんでいるところだった。

「お嬢ちゃん、オイタはいけねえなあ」

ぶつかった大柄の頬に傷のついた男は

凄みを効かせると、仲間らしき男たち

数人とわたしと幹を取り囲んだ。

「なっ、なにをする気?」

木の強い幹が男たちに睨みを効かせた。

「警察を呼ぶわよ」

「へっへっへっ、気の強いお嬢ちゃんたちだ」

大柄の男が舌なめずりをした。

「やめとけっ」

そのとき顔中に龍の入れ墨をした痩躯

の男が声をかけて来た。

「げっ、ドスの新政」

男たちが震えだし、見る見る血の気を

失っていく。

「ここはオレの顔を立てて、引き下がっては

くれないか」

新政と呼ばれた男は丁寧な口調で言葉を

選ぶようにそう話した。

「へ、へええへへ。そりゃあもう。新政の

兄貴のお言葉なら、オイ引き上げるぞ」

男たちが人ごみに消えて行った。

「どっ、どうもありがとうございました」

そういって私が顔をあげたとき

ドスの新政はもうそこにいなかった。

      (つづく)



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