葵さんと楽しむ遊園地
僕は正平の策略にハメられて葵さんと2人で遊園地を楽しむ事になった。
僕は葵さんの事が好きだ。そしてお節介な正平はおそらく僕のそんな気持ちに気づいてこのような事をしたのだろう。
「しょ、正平は体調不良で来られなくなったみたいだ…」
僕は葵さんに彼から来たメッセージを見せる。
「えっ、藤堂君大丈夫なんでしょうか? …ど、どうします? わ、私としてはせっかく来たのだから本山君と一緒に遊園地を楽しみたいのですけど…」
「あ、葵さんが良いのなら…今日は2人で楽しもうか」
葵さんは僕と2人で回るのを承諾してくれた。
…女の子と2人っきりで遊園地を回る。これってもしかしなくても…デートだよね?
今まで何度か葵さんと遊んだ事はあったが、それはゲームを通してだったり、間に正平がいたから僕もリラックスした状態でいられた。
でも今回は正真正銘2人きり…。
好きな女の子と2人きりでデートするという事実に僕は緊張で身体が強張った。
…でもこれは彼女と仲良くなれる絶好のチャンスでもある。僕は彼女ともっと仲良くなりたい、僕の事を好きになって貰いたい。
葵さんは僕と2人で遊園地を回るのを承諾してくれた。だから嫌われているという事は無い…はず。嫌いな人と一緒に遊園地を回ろうとは思わない。
だから彼女にこのデートを楽しんで貰えれば…僕に好意を抱いてくれるかもしれない。
大丈夫、大丈夫。落ち着け。
僕は自分にそう言い聞かせて暗示をかけた。そうでもしないと心臓が破裂してしまいそうだったのだ。
「本山君…? もしかして…本山君も体調が悪いとか?」
葵さんが心配そうな表情で僕の顔を覗いてくる。僕は覚悟を決めると彼女に笑いかけた。
「なんでもないよ。せっかく来たんだから楽しまないとね」
「そうですね。行きましょうか♪」
僕たちは入場ゲートで割引チケットを見せ、お金を払うと遊園地に入場した。
○○〇
「葵さんはどういうアトラクションが好きなの?」
僕たちは遊園地のパンフレットを貰うと地図を見ながらどのアトラクションに乗るのかを相談した。
僕は葵さんにこのデートを楽しんで貰いたい。だから今日は全てにおいて彼女の希望を優先する事にした。この際自分の希望はどうでもいい。いや、むしろ楽しんでいる彼女の笑顔を見る事こそが僕にとって最高のアトラクションなのだ。
「そうですねぇ…。私はやっぱりスリルを感じる系が好きですかね?」
なるほど、ジェットコースターやバイキングのようなアトラクションが好みなのか。…意外だなぁ。
「OK! じゃあまずはジェットコースターに行こうか?」
「はい♪」
僕たちは1番初めに遊園地の定番中の定番、ジェットコースターに乗る事にした。休日だけあってそこそこ人はいたが、20分程でアトラクションに搭乗できた。
「ひぃぃぃぃぃ!!」
「キャーーーーー♪」
最初僕は意気揚々とジェットコースターに搭乗した。外から見た感じあまり傾斜のキツくないコースだったので、そこまで怖くないだろうと完全に油断していたのだ。
…だが実際はあの程度の傾斜でも凄い恐怖を感じた。高所からコースターが落ちる瞬間、割とガチで身体から魂が抜けるのではないかと思った。
ジェットコースターを降りた僕は足がフラフラしていた。でも葵さんはそのスリルに満足したようだ。
「楽しかったですねぇ♪」
「そ、そうだね」
葵さんはホクホクの笑顔でそう言った。僕はまだフラフラしていたが、無理やり笑顔を作ると彼女にそう答えた。
いかんいかん、彼女に楽しんで貰わないといけないのに僕が辛気臭い顔をしてちゃダメだろ。
次に僕たちが向かったのはバイキング。海賊船に乗って思いっきり揺られるアレである。
「あばばばばば!」
「わぁーーーー♪」
これも怖かった。もしかすると僕は絶叫系があまり得意ではないのかもしれないとこの年になって初めて気づいた。…遊園地なんて小さい頃、親に1度連れて来てもらったきりだからなぁ。
しかし葵さんは大満足なようだった。…僕は彼女が喜んでいるならそれでいい。
○○〇
「次は…ウォーターライドに行こうか?」
「私の好きな物ばかり乗るのも申し訳ないですし…次は本山君の好きなアトラクションに行きませんか?」
いくつかのアトラクションを堪能し、次のアトラクションに向かおうとしたところで葵さんが口を開いた。彼女はそう言ってくれたが、僕は特に乗りたいものなど無かった。彼女が楽しいのならそれでいい。
「僕は特に乗りたいもの無いし…葵さんに合わせるよ」
「今日の本山君、ちょっと無理してません?」
「えっ?」
「絶叫系…あまり得意ではないのではないですか? 私が好きな物を優先してくれるのは凄く嬉しいです。でもせっかく2人で遊んでいるのだから、私は本山君にも楽しんで欲しいんです」
しまったな…バレていたのか。彼女に気を使わせてしまった。
…でも確かに。葵さんの言う通り2人で楽しんでこそのデートだよな。彼女を楽しませたい気持ちで頭が一杯になり、それを優先しすぎていたのかもしれない。
「そうだ! じゃあ私と本山君、2人共楽しめる所に行きません?」
「2人共楽しめる所?」
「はい! さっき地図を眺めていたら見つけたんですよ!」
葵さんはそう言って僕を遊園地の端にある建物に連れて行った。
◇◇◇
2人が向かった先とは?
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