放課後に3人で遊ぶ

 その日の放課後、僕と正平、そして葵さんの3人は急遽遊ぶ事になった。


「それで…どこで遊ぶ?」


 学校終了後に校門前に集合した僕たちは本日の行き先を相談をする。


 …正平と一緒に遊ぶ時は近くにあるオタショップに行ったりだとか、一緒にネットで対戦ゲームをやったりする。僕と正平はアニメやゲームが好きなため、いつもはそんな感じで遊んでいた。


 だが流石に女の子と一緒にそんな所には行けない。…女の子は普段どういう所で遊んでいるんだろう? 


「そうだな、この近くにあるゲーセンはどうだ? そこならみんなで遊べるものもあるし…」


 正平がそう提案した。


 えっ、ゲーセン!? 確かにみんなで遊べると言えば遊べるけど…葵さんはそんな所で大丈夫なのだろうか? 


 完全に偏見だが、女の子はあまりゲームをやらない印象がある。


「私はどこでも構いませんよ♪」


 葵さんは正平の提案に笑顔で返答した。


 …へぇ、女の子ってゲーセン大丈夫なんだ。まぁ彼女が良いと言っているのだからそこでいいのだろう。


 相談の結果、僕たちは学校近くにあるゲーセンへ向かう事にした。



○○〇



 十分後、僕たちはゲーセンに到着した。ジャカジャカとゲーム機から流れる音楽が店内にうるさく鳴り響いている。この音を聞くとゲーセンに来たという感じがする。学校の近くにあるだけあって、店内には他の学生の姿もちらほら散見された。


「何をやろうか?」


 僕は3人でできるゲームを探して辺りを見渡した。


「私、実はゲームセンターに来るの初めてなんです。あ、これ…ネットのCMで見た事ある」


 僕がみんなで遊べるゲームを探していると、葵さんが近くにあったゲーム機に興味を示した。それは有名なゾンビシューティングゲームで、内容としては銃を構えて迫りくるゾンビを撃ち殺すものだ。2人で協力プレイもできる。


 葵さんはそのゲームに興味津々のようで、画面に流れている映像を目を輝かせながら覗いていた。


 葵さんが興味があるのならそれでいいか…と一瞬思ったが、あのゲームは最大で2人プレイしかできない。葵さんがプレイするのは確定として、僕か正平のどちらかが余る事になってしまう。


「あ、俺ちょっと腹痛いからトイレに行ってくるわ。その間2人でなんか適当にやってて!」


 正平はそう言うと腹を押さえながら慌ててトイレの方へ行ってしまった。


 …彼は昼休みも腹の調子が悪いと言っていたな。何か悪い物でも食べたのだろうか?


 しかしトイレに行ったのなら仕方がない。その間2人でこのゲームをやっておこう。


 僕は葵さんに声をかけた。


「葵さん、そのゲームやる?」


「いいのですか!? 私、これやりたいです!」


 僕が誘うと葵さんは大喜びで承諾した。よっぽど興味があったのだろう。ゲーム機に硬貨を入れ、ゲームを開始する。


 …今更だけど僕はゲームが得意だ。シューティングゲームはその中でも特に得意だし、このゲームは正平と何度か遊んでいるので敵が出てくる大体のパターンなどは覚えていた。  


 どうせなら葵さんを上手くアシストして見事エンディングまで到達してみせよう。


 彼女はゲーセンに来た事が無いと聞く。なのでこのゲームを通してゲーセンの面白さを理解して貰えたらゲーム好きの僕としては嬉しかった。せっかく一緒に遊ぶのだから彼女には楽しんで貰いたい。


「やり方はわかる?」


「はい。こう…銃を構えて敵を『バーン!バーン!』って撃つんですよね?」


 彼女は銃を構えながら威勢の良い声を出す。…可愛い。


「そうそう、それで画面に出てきた敵を撃ち殺すの。おっ、始まるよ。頑張ろう!」


「頑張りましょうね本山君。…家ではあまりゲームができないのでかなり楽しみだったりします♪」


 ほぅ…ならば葵さんには全力で楽しんで貰わないとな。 



○○〇



「葵さん、右上!右上! 右上から来てるよ!」


「えっ? あっ、こんなところから。えい!」


「ボスが出たよ。コイツの動きは早いから気を付けて!」


「あ、あれ…? どうして当たらないんですか?」


 初心者の葵さんと一緒にゲームを進めていく。僕は葵さんのフォローに回り、彼女が撃ち漏らした敵を確実に仕留めていく立ち回りを心掛けた。


「…本山君凄い!」


「凄くはないよ。僕は何回かプレイして敵の出るパターンを覚えているだけだから。葵さんこそ筋が良いよ。初プレイでここまでできる人は中々いないよ」


「数回プレイしただけで敵の出るパターンを覚えている方が凄いと思いますけど…。うわっ、上から来ました!?」


「任せて!」


 僕たちは順調にゲームを進めていく。…ゲーセンでのプレイはこうやって友達とワイワイやりながらプレイするのが楽しいんだよな。彼女にもこの楽しさを理解して貰えたら幸いである。


 数十分後、僕たちは最ボスを倒しゲームクリアまでこぎつけた。


「ゲームクリア…? やったー! やりましたよ本山君!」


 彼女は画面に表示された「ゲームクリア」の文字を見て感嘆が極まったのか、僕にいきなり抱き着いてきた。僕は彼女に抱きつかれて思わず身を強張らせてしまう。


 女の子特有のいい香りが鼻を通して脳を刺激し、その柔らかな感触が肌を優しく包み込む。女の子に抱き着かれるのなんて僕の人生で初めての経験だった。


 心臓がバクバクと早鐘を鳴らしている。正直どうにかなってしまいそうだった。僕はなんとか声をしぼり出して彼女に離れてくれるように促した。


「あ、葵さん。は、離れて…みんなが見てるよ」


「あっ…//// す、すいません。私ったらつい…喜びのあまりはしたないマネをしてしまいました…////」


 彼女は頬を赤く染めつつも僕から離れてくれた。


 いや、本当にびっくりした。危うく心臓が止まりそうになったよ。


 でも葵さんはゲームを楽しんでプレイしてくれた様だった。これで少しでもゲームが好きな人が増えてくれると僕も嬉しい。


 僕は機体に付属している銃を元あった位置に返す。そしてチラリとスマホで時間を確認した。


 …そういえば正平はまだ帰ってこないのか。彼がトイレに行ってからもう30分は経っているのだが…そんなに腹痛が酷いのかな?


 僕は葵さんに声をかけて正平の様子を確認しようとトイレに行こうとした。しかしその時、僕たちに向かって怒声が響いた。


「オイコラァ! クソ陰キャ! 葵から離れろ!」


 怒声のした方を見るとそこには木島誠也が激怒した様子で立っていた。



◇◇◇


まさかの誠也の襲撃、2人はどうなる?

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