2.知るべき
キャーキャーと教室の外が騒がしい。それと微かにタッタッと動作音が聞こえる。
騒がれていたのは、川のせせらぎのようなリズムを崩さない凛とした女生徒だった。
「何やってるんだ馬鹿ちんが」
佐伯は、驚いた様子で一歩下がる。それを逃すまいと女は、教室の外の廊下から助走する。教室の入口からジャンプで飛び、そのままの勢いでドロップキックで佐伯を蹴り飛ばした。
女の蹴りは、立花の蹴りと比べて、速さに重さが数段上だった。
「ふう」
何者何だ、この女は。
「じゃあ、全員正座」
「ふざけんな、誰が正座何か!」
「そうよ!」
「正座っ」
目の前に足の裏があった。何でコイツ素足なんだと思った次の瞬間、俺は踏まれた。無理やり頭を地面につけられ、というか床にめり込んだ。
隣を見ると、威勢の良かった男子学生は踏まれ。私の目の前にも足の裏が見えた。あ、このお姉さん紐パンだ。
何かエッチだ。
何って思っていると、私も同じように床にめり込み、痛いし屈辱的である。
「生きが良いのは大変結構、しかしだな、場をわきまえろ。もうすぐ全校集会だぞ」
「しかし高橋さん、コイツらが先に喧嘩吹っ掛けてきたんですぜ」
「一年の不始末は、学校全体の問題だ。違うか?」
「その通りで」
「さあ、行くぞ」
「はいっ」
俺と立花は、この女に首根っこ掴まれずるずる引きずられながら、連れてこられたのは体育館だった。
「高橋生徒会長、遅かったですね」
「すまんな、エリゴール。ちょっとしたトラブルでな」
「その一年が何か?」
鉛筆がポッキリと折れた、無意識ながら殺気を感じる。
「そう怒るな、入学したばかりの一年にはルールを教えねばならない」
高橋は、エリゴールの頭をポンポンと撫でるように触れて宥める。
「わかりましたよ」
朗らかに笑うと、キリッとした表情で狼煙を上げる。
「すまんな、では生徒会出陣だ」
むにゃむにゃと、隣では立花が眠っていた。周りには学園の生徒が勢揃いしている。
「では以上」
「生徒会からの挨拶でした」
気絶している間に何かが終わっていた。何で俺は、服を脱がされて下着一枚なんだ?女学生がチラチラこちらを見て笑っている。これは恥であり、屈辱だ。
「おや、もう起きたのかい。君も以外と頑丈だね。隣の立花ちゃんもなかなかのものだ」
「あれが、高橋七伎か」
「そう、あれが高橋会長だ」
「何で俺負けたんだ?」
「そうだね、まずフィジカルが足りないし。才能はあると思うんだけど、場数が話しにならないね」
「今の俺じゃあ、アンタにも勝てない」
「それがわかるだけ大進歩だよ」
「何かスゲー楽しい」
「そりゃあ良かった。じゃあ、これあげるよ。怪我したらここに連絡するといい」
差し出されたのは一枚の名刺だった。
「佐伯病院?」
「じゃあ、またねー。後輩君」
何だアイツ、つかみどころがない。何はさておき服を取り戻し、帰るか。
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