第10話 マウンセアの冒険者ギルド

「冒険者登録をしたいのだが」

「はい。こちらで承ります」


 華奢で、清廉な雰囲気を身にまとう受付の娘が対応する。

 フォレスのギルドカードを提示すると。

 

「拠点はフォレス領なのですね。こちらには移住されて来たのですか?」

「いや、こちらまでの護衛も今後増えそうなので、どうせならここでも登録をと」

「そういうことですね。すごい! A級冒険者なのですね」


 その言葉を聞いた周りの冒険者が騒ぎ出す。


「あの小僧がA級冒険者だと? 本当か」


 ――まあそうなるだろうな。A級冒険者なんて、ギルドマスター含め一つのギルドに数人いる程度だもんな。

 

 冒険者の等級はA級からF級の六つ。冒険者はF級からスタートし、実績によりランクアップしていく。A級冒険者は盗賊で言えば一〇個以上の首領の首が必要だ。すなわち、一〇個の盗賊団の討伐ということだ。


 採取の依頼も高難度のものであれば、A級冒険者まで上がることが出来る。やれ竜の卵や鱗だの、やれミスリル鉱石だの、と危険度も比例する。


 国にとって多大な功績を上げるとS級になれる。S級冒険者は爵位と領地を与えられ大貴族となれるが、国王の命を救ったり、敵国との戦争で勝利の決定的功績が必要だったりと、ほぼ不可能に近い条件がある。


 ――「以上で冒険者登録は完了です。活躍を期待しております」


 冒険者ギルドを出ると、ちょうどマーロックの使いに声を掛けられた。

 

「マーロック支部長が、食事の席を設けておりますのでおいでください」

 ――至れり尽くせりだな。


 ***


「やや、ライアスさん、今回の護衛は本当にありがとうございました」

「いえいえ、仕事ですので」

「今朝、賊の身元がわかったとおっしゃってましたが……」

「ええ。多分、フォレス領の貴族が抱える騎士たちでしょう」

「なんと! しかしなぜ?」


 俺は事実と嘘を織り交ぜながら話す。

 

「フォレス領の商業を牛耳っているのはゴルデア商会です。その後ろ盾は?」

「フォレスの領主様と貴族たち……」

「はい。ゴルデア商会にとってファルマン商会は邪魔だったのでしょう」

「なんと非道な」


「実は、賊を逃がす時に、実は一芝居打ちまして」

 ――本当は【記憶改竄フォルサファイド】だけど。


「俺が賊に寝返って、売上金を折半しようと持ちかけたんですよ」

「その受け渡しを明日の夜にしたんです。場所は俺達が襲われた所で、と貴族に伝えるように言って逃がしたんです。額が額ですので必ず貴族も一緒に来るはずです」

「なんとそんな事を……」


「そこでなんですが、マウンセアの冒険者ギルドに依頼を出してほしいのです。盗賊を装いファルマン商会を襲った黒幕の貴族を捕らえるという依頼を」

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