第9話 賊の襲撃
今日から五日間かけて、フォレスとマウンセアを往復する。今回の目的は三つだ。
・ファルマン商会の護衛
・賊の正体を突き止める
・マウンセアの冒険者ギルドに登録する
二台の荷馬車にマーロック支部長と幹部二名。俺とガイアンを含めた護衛は六名。今回はフォレス領での売上金の輸送とあって、しっかりと護衛を固めている。二〇〇〇万ゴルドもの大金だ。万が一にも奪われるわけにはいかない。
マウンセア領との境で、荷馬車の先頭の馬一頭が横から矢を射られる。次の瞬間隊列の前後を六名ずつの賊により囲まれた。
――戦時、補給部隊を襲う時の戦術だ。盗賊は殲滅をするのが目的ではないので、片方しか塞がない。
戦争用に特別な訓練をしている騎士の特徴だ。ということは……黒幕は貴族か。さてどうしたものか。殲滅するか、生け捕りにするか。俺とガイアンがいればどちらも難しくないだろう。
「護衛の人たちは、荷馬車とマーロック氏を守って! ガイアンさんは後方の守備を」
そう指示を出し、前方の賊に飛びかかる。次々と賊の剣が空を切り、代わりに俺の二本のミスリルの短剣が返されていく。賊の太腿を狙って。機動力を削ぎ落とす。後方の賊はガイアンが鉄壁の守備で抑え込み、退却した。
「さて、騎士の諸君。君たちの処遇は後で考えるとして、とりあえず、お縄についてもらうよ」
捕縄術で五名全員を縛る。フォレス学園初等科で習った技術が役に立つ。捕まえた騎士たちを木に括り付け、この日はこの場所で野営する事となった。この夜俺は驚くことになる。
――ふっかふかだ。なんだ、この寝心地は!
商団の野営装備に驚いた。厚手の天幕は雨風ではびくともしなさそうだし、ふかふかとして寝床は肌触りも良い。ガイアンの報告書通りだ。
その夜、俺は騎士たち全員に【
***
朝、商団の護衛隊長の声が騒がしい。
「おい! 賊どもが居ないぞ! 逃げられたか」
「身元がわかったから、俺が逃したんだ。五人も連れて旅をするのも大変だし、無駄な殺生もしたくないからね」
「そうでしたか。シーフハンターのライアスさんがそう言うならば、私達に異論はありません」
マーロックが言う。
追手もなく、順調な旅路。夕方にはマウンセアの街に着きそうだ。
街に着くと、ファルマン商会本部まで見送り、一旦別れた。俺はその足でこの街の冒険者ギルドに向かう。
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