第8話 家族団欒で夕食を
俺はガイアンからの報告書を家の庭で焼き、処分すると、身支度を整えファルマン商会へと向かう。街の一等地に居を構えるファルマン商会の財力がうかがえる。
商会の門をくぐると、ちょうど葬儀が終わったところだったようだ。
悲しみを堪えた表情の、支部長のマーロックに話しかける。
「誰か亡くなったのですか?」
「あなたは、えーっと冒険者の方だ。盗賊団の討伐祝いの時、酒場にいらっしゃいましたね」
「あんなに多くの人が居たのによく覚えてますね」
「はい、商売人でございますので。ああ、話しがそれましたね。実は商品の輸送中に盗賊に襲われて、護衛の一人が亡くなったのです」
「そうか、それは残念でしたね。俺は盗賊討伐専門の冒険者のライアスといいます。次に輸送するときは、冒険者ギルドに俺を指名依頼してください」
「なんと、それはありがたい。ちょうど今週マウンセアの街まで行くので、是非そうさせていただきます」
数日後、俺は冒険者ギルドに呼び出され、指名依頼の件を説明された。報酬は一〇万ゴルド。気前のいい金額だ。勿論承諾し、五日間の旅の準備をする。
街のはずれの家まで続く一本道を歩いてる。もっと街の近くに家を買おうか。そのほうがバロンも暮らしやすいだろうし、飲んだくれの父親も酒場が近くなるし。
――突然、背後から、肩を掴まれた。
驚いて振り向くと、父親が立っていた。
「おう。息子様! お仕事帰りか?」
「なんだ、父さんか、驚いたよ。酒でも買いに行ったの?」
「いや、ちょっと材料を買いにな」
手には鋼の鋳塊を持っている。
「珍しいね。仕事の依頼が入ったの?」
「いや、まあ、なんだ。そんなところだ」
「そうだ父さん。俺、明日から五日間任務で家を空けるから、今日は飲みに出かけないで家族で飯食べよう」
「そうだな。たまにはそうするか。お前の料理はそこら辺の店よりうまいからな」
家に帰ると、晩飯の準備に取り掛かる。まるで、料理人のように手際よく、俺は料理を作っていく。
豚肉を叩き、麦の粉を振る。溶いた鶏卵に漬けたら細かく擦り下ろしたパンの粉を漬けて豚の背油で揚げる。根菜と葉物は鳥の骨から取った出しに入れ、トマトと松の実を入れたスープを作る。ついでに五日分の常備菜も作り冷蔵庫に入れる。
この冷蔵庫という摩訶不思議な道具。畜魔石に氷属性の魔法を貯めて、庫内の温度を下げるという魔法道具。俺は自分の家以外で見たことがない。小さい頃、父親に冷蔵庫の仕組みを教えてもらったがちんぷんかんぷんだった。「親戚のじいさんからの貰い物」だそうだ。
「父さんが酔っ払ってないのを久しぶりに見たよ。ねえライアス兄さん」
「ははは。そうだな。俺が、一緒に飯を食おうって誘ったんだよ」
「いや、俺はうまい飯を肴に今から酒を飲むぞ! ライアス、たまには酒に付き合え」
「……そうだな。たまには飲むか」
終始機嫌の良い父親と、笑顔で黙々と飯を平らげるバロンを見ていると、なんか和むな。この日は俺も酒を飲み気分良く眠りについた。
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