第7話 ちょっとズレたガイアンの報告書
諜報員の盗賊、ガイアンがファルマン商会に潜入してから一週間が経った。
酒場の昼営業に昼食を食べに行く。麦でできた麺を茹で、マウンセア産の二枚貝と和えた料理を完食し、会計をする。店を出ようとすると店主に呼び止められた。
「お客さん! 忘れ物ですよ」
「ああ。ありがとう」
渡された書類を持って家に戻り、封蝋を剥がす。
【ガイアンの報告】
――潜入一日目
指示通り、ファルマン商会へ潜入しました。商会の従業員の中には武に長けた者が五名いました。私の採用試験で彼らと手合わせをしました。腕前は冒険者で言うところのC~Dと言ったところでしょうか。
――潜入二日目
ファルマン商会フォレス支部の長、マーロックと食事をしました。この一年でフォレス領での売上シェアの一割を目標とし、同時に他の領地にも展開をしていくとのことです。
――潜入三日目
今日から二日かけて、フォレス領の特産品をマウンセア領の本部に輸送。支部の副長ミカルドと幹部、護衛は私を含め三名です。グラフト盗賊団の壊滅もあり、普段より手薄な護衛体勢のようです。
――潜入四日目
特に何もなくマウンセア領に向かっております。野営をしましたがテントが快適でした。我らの砦の寝床より数段良い寝心地です。快適な睡眠が大切であることがわかりました。大収穫です。
――潜入五日目
マウンセアの街に到着しました。石畳が整っており街道も整備されています。海沿いの街ということもあり、海産物が新鮮で安いです。浜辺では民たちが遊んでいたり、行楽地となっております。水着姿の女を見ましたが、あれはほぼ裸同然です。
――潜入六日目
フォレス領に運ぶ商品を積み、出発しました。フォレス領にほど近い場所で野営をしたところで、八名の覆面をした賊の襲撃を受けました。護衛の一人が死にました。もう一人の護衛は重傷を負いました。副長ミカルドと幹部を守りながらだったので、賊は取り逃がしましたが、賊が操る剣術は、貴族の騎士たちと酷似していました。
――潜入七日目
荷馬車に死んだ護衛を乗せてフォレスの街に到着しました。手厚く弔うのだそうです。季節的にすこし腐敗臭がきつかったです。獣と一緒で、死んだらすぐに血抜きと内臓を出さないと鮮度が保てません。
以上、ファルマン商会へ潜入した報告です。――ガイアン。
「うん。ガイアンって奴はちょっとズレたやつだな。でも、きな臭いってことはわかった」
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