第7話

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車は山道に入った。道はあるが長い間使われていないのか、草が生い茂っている。

「なーなー、本当はなんで警察してるんだ?正義感が強いのはわかるが、焦りすぎだろ。今回の未解決事件と関係あるのか?」

短い沈黙の後、ルーカスはため息をついて話し出した。

「……この事件で、1人だけ生き残りがいた」

犯人のために山へ食べ物を取りに行った子供。

「それがお前か。だからこんなに焦ってるんだな」

20年前、山の中で焦げ臭い匂いに気が付き村を見ると、大好きな、大切な故郷が燃えていた。急いで戻ると大人たちは殺され、子供たちは消えていた。チップなんてない時代、犯人は特定されなかった。

「お前はさっきどうして逃げなかった?」

「ふふふ、知りたい?」

「あぁ、知りたい」

「明日になったら教えてあげるよ」

零はそう言って笑った。

今日は、零の裁判の日だ。ルーカスの村を焼いた犯人を捕まえ、急いで戻らなければいけない。

零の指定した場所に着いた。山の反対側には海が見える。

「奴はどこにいる?」

その場所には何も無い。大きな木や高い草が生えているだけで、建物はなかった。

「まぁまぁ、着いて来いって」

零は歩き出した。腕は手錠でルーカスと繋がれている。零に腕をひかれながら森を進んで行った。鋭い草が零の体を切り刻んでいる。ルーカスは上着を脱いで、零の肩にかけた。

「なんだ?」

「そんなボロボロの服で森を歩くな。肌が切れてるぞ」

零は立ち止まって自分の腕を見た。

「本当だな、ま、これくらいの出血じゃ死ねねーし。服もこれ以外持ってねー」

「はぁ、そんな服では社会に復帰できないだろう。今度買ってやる」

そんな言葉が口をついて出た。

「えっ!買ってくれるのか!?俺、お前の服が欲しい!」

「これは警察官の服だ。着たいのなら罪を償って、警察官になればいい」

零の強さなら即戦力になるだろう。

「……上着貸してくれてありがとな。もうちょいで着くぞ」

零の足が速くなった。ルーカスが貸した上着を羽織って進んでいく。

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