第5話

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この街が、犯罪の多い場所ということもあり、何度も犯罪現場を目撃した。その度に、ルーカスは犯罪者を捕まえた。そのせいで、車のライトを付けなければいけない時間になってしまった。

「なぁ、お前って幾つだ?」

車に乗っている間、零はずっと話しかけてきた。

「28だ」

「へぇ、俺は幾つだと思う?」

ルーカスは、最初は無視していたが、無視しても喋り続ける零に負けて、適当に返事をするようになっていた。

「顔は幼いが、言動的に20前半くらいか?」

整った顔立ちのせいか、幼く見えるが、社会の闇を知っているかのような話し方を考慮して、そう答えた。

「残念、18だ」

ルーカスは驚いた。零が関わったとされる事件は、6年前だ。たった12歳の時に人を殺しているということになる。

「……なんで犯罪なんて犯したんだ」

犯罪者を捕まえる度に思っていたことだった。金がなかった、興味本位、アイツが嫌いだった、など色々聞いたが、他に方法はあっただろうと思う理由ばかりだった。

「んー?俺の過去に興味ある?教えて欲しい?」

零は、ルーカスの方を面白そうにみている。零の話し方にストレスを感じたが、黙って頷いた。

「そーだな、まず、両親がクソでな。金が無くなったからとか言って、俺の事を売り飛ばしやがった」

「……」

「で、俺を買ったのが殺人鬼。殺しの手伝いの為に買ったんだとよ。まぁ、他にも色々と奴の欲に付き合ったりもしたが、大抵はそんなかんじだ。別に元々殺しが好きなわけじゃねーよ」

ただ、使われていただけ、そんな事があるのか。犯罪者は全員、後先考えず、感情で動いていると思っていた。だが、零は、親に売られ、どうしようもない状況下にあった。

「それは……辛い過去だな。だが、君はまだ若い。いくらでも更生の余地がある」

「ま、5人くらいは俺の意思で殺したけどな!」

零はそう言って声を上げて笑った。ルーカスは、先程まで持っていた少しの同情を消し去って、零を睨んだ。

「なぁ、もう寝ようぜ。夜遅いし」

一頻り笑った後、零がそう言った。月が沈みかけている。

「俺は寝ない」

「えー、じゃあ場所だけ教えてやるから、勝手に運転しといてくれ。ちなみに、俺を連れてかないと捕まえられないと思うぞ」

そう釘を刺してから、零は場所を示した。そして、助手席で目を閉じた。

途端に車内が静かになった。ルーカスは、無意識に零の方を見た。大人ぶった話し方をすると思っていたが、眠る顔はただの子供だった。はだけた服の下に、無数のアザや傷が見える。この少年は一体どんな人生を歩んできたのだろう。

「……痛い、ごめ……なさ……」

零が目を閉じながら呻いている。

「どうした?大丈夫か?」

ルーカスは、車を停めて零を揺すった。零の目には涙が浮かんでいる。

「あ?人が気持ちよく寝てたのに、何起こしてくれてんだ」

零は、ルーカスを睨みながら目を開けた。

「心配してやったんだ。もういい、寝てろ」

ルーカスは、零に自分の上着を渡し、もう一度車を走らせた。零は、上着とルーカスとを不思議そうな顔をして見比べてから、上着に包まってもう一度眠りについた。気のせいか、笑顔で眠っているようにも見える。もう、悪夢はみていないようだ。

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