第4話
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「おー!やっぱパトカーってカッコイイな!」
結局、根負けしたルーカスは零を連れて外に出た。後輩や部下たちは驚いた顔をしていたが、あの事件の犯人を特定出来るかもしれないという話をすると、何かを察したのか頷いてくれた。裁判までには必ず帰ると言い残し、パトカーに乗った。
「逃げ出そうするなよ。罪が重なるぞ」
零の手には手錠をつけたままで、その手錠を助手席に固定してある。
「わかってるよ。お前から逃げるの無理そうだし」
零は助手席でくつろいでいる。零の指示に従って車を走らせた。外はもう夜だ。
「なーなー、お前ってなんで警察官やってんだ?」
車を走らせて数分後、零が話しかけてきた。
「全ての人間が安心して平和に暮らせるためだ」
「そんだけか?面白くねーな」
「面白さなんて必要ない」
ルーカスの言葉に零はため息をついて窓の外を見た。外を歩く親子を見ているようだ。母親と父親に手を繋がれ、子供は嬉しそうに歩いている。
「あ、アイツ、盗むぞ」
零が、親子の後ろを歩く男を指さして言った。
男は、母親の肩を殴り、鞄をひったくった。母親と子供は倒れ、鞄を盗んだ男は走って逃げていった。
「あーあ、馬鹿だな。あんなに警戒心ゼロで歩くなんて……っ!おい!なんで車停めた?!」
ルーカスは車から降りて、鞄を持った男を追いかけた。見失う前に急いで捕まえ、鞄を取り返した。男は暴れているが簡単に取り押さえることができた。
親子が走ってルーカスの元にやってきた。
「あ、ルーカスさん!妻の鞄を取り戻して下さったんですね。本当にありがとうございます!」
親子が通報したのか、警察がやってきた。ルーカスは、盗人の男を引き渡し、車に戻った。
「人気者なんだね!街のヒーロー様!今度は僕の平和のために、この手錠外して?」
零が、甘ったるい声で、揶揄うように言ってきた。
「断る。お前を自由にしたら、他の人間に危険が及ぶだろう」
零は、ルーカスの言葉に舌打ちをして、窓の外を見た。外では、先程の親子が、泣く子供の頭を撫でながら、ルーカスに手を振っている。零は、それを無表情で見つめていた。
「さぁ、案内を続けろ。嘘だった場合、重い罰が……」
「わかってる。早く車出せ」
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