第2話
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車で、街中を出て、森に入った。舗装されていない山道を抜け、大昔に旅館だったという廃墟に着いた。ルーカスは、拳銃を手に持ち車をおりた。
「この廃墟を放置していた管理人が、久しぶりにここへ来たらしいです。その時、赤目の殺人鬼に出会ったとのことです。まだ、この廃墟の中にいるはずなのですが」
後輩が説明している間、ルーカスは廃墟を見渡していた。廃墟の周りには、何台ものパトカーがあり、何人もの警察官が廃墟を取り囲んでいる。今にも崩れてしまいそうな、廃墟は蔦に覆われていた。廃墟の屋上に黒い何かいる気がする。ルーカスが、それを凝視していると、それがゆっくりこちらを向いた。月の光を受けて、真っ赤な何かが煌めいた。
「先輩?!」
ルーカスは走り出した。廃墟の中に入り階段を駆け上った。屋上にたどり着くと、何かを手に持った、黒髪の男が屋上の端に立っていた。
「お前が殺人犯だろう。大人しく手をあげろ」
ルーカスが落ち着いた口調でそう言い放つと、黒髪の男がゆっくりと振り向いた。
「よぉ、お前は警察官か」
男は赤色の目を持ち、顔や服には血が付着している。そして、手には人の首を持っていた。
ルーカスは銃を構える手に力がこもった。
「手をあげろと言っている」
ルーカスの言葉に、男は怖がることも無く嘲笑している。
「ははっ、そーだな。銃持たれちゃ勝てねーわ」
男は手に持っていた首を雑に落として手をあげた。ルーカスは、他の警官に無線で連絡した後、ゆっくりと男に近づいた。
「腕を出せ。お前を連行する。犯罪者は正しく裁かれるべきだ。」
男の細い腕に手錠をかけた。男は舌打ちをして、不服そうな顔をしている。
「なぁ、見てくれよ、この赤い目。血と同じ色で気持ち悪いだろ?」
ルーカスは男の目を見た。赤黒く、珍しい目の色をしている。男は青白い肌と黒い髪を持っていて、細くて小さい体つきをしている。顔の造形から、この国の者ではないことがわかった。
突然、男がしゃがみこんだ。そして、ルーカスに足払いをかけた。ルーカスはそれを跳んで避けたが、男は身をかがめたまま、走り出した。
「じゃーな!俺、お前に捕まる気ねーから!」
ルーカスは、無線で連絡を取り廃墟の入口全てに警察官を配置した。窓から脱出されないよう考えながら追いかけた。男は、床の抜けた場所も簡単に飛び越え、倒れた柱などの障害物もスルスルと避けて走っていく。
「チッ、ここにも警官いんのかよ……」
ルーカスは、逃げ場をなくした男に近づいた。男の背には壁。左右に道はない。
「観念しろ。ここで逃げるより、行動を改め罪を償った方が有意義な時間を過ごせるぞ」
ルーカスは銃を向けながら近づいた。男は、苦々しい表情をした後、ナイフを取り出した。
「償うとか趣味じゃねー。ほら、さっさと撃ち殺せよ。俺はナイフ持ってんぞ?」
男は、口角を上げて手錠の着いた手でナイフを持っている。ルーカスは、一定の距離までゆっくりと近づいた。そして、ある程度近づくと、身をかがめて男に急接近した。驚く男の腕を持ち、ナイフを奪い取った。そして、後ろの壁に叩きつけるようにして、男を押さえた。
「痛っ!わーったよ!逮捕されてやるよ!」
男は観念したのか、ため息をついて大人しくなった。ルーカスが男を連れて外に出ると、他の警官から賞賛の声があがった。屋上に、誰かの首があるということを告げ、男と共に車に乗って、警察署に戻った。
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