21 優雅?な学校生活
ミスって同じ話が二個あったので改善しました。
ご迷惑をおかけしました。
よければフォローと☆お願いします!
あれから4ヶ月後。
4時半に音がなる魔道具で目覚めた俺はすぐに動きやすい服に着替え、約300mの道をダッシュする。それを十秒のインターバルでこなす。
次に腹筋、背筋、腕立て、バービー、片足ジャンプを自分の部屋でこなす。
これをそれぞれ20〜30秒行い、15秒ほどのインターバルを挟む。因みに10セットずつだ。
傭兵時代の訓練よりは楽だが、朝にできる訓練としては最上級のものだ。
俺の筋肉が疼く。良い兆候だ。
訓練が終わると、襲ってくる眠気覚ましも兼ねてシャワーで汗を流す。
そして登校。エドワードと協力して眠りこけているルイとストマックを叩き起こしぐっちゃぐちゃになっっている金髪と黒髪を無理やり整え、寮の食堂へ向かう。
「お前野菜食えよ」
「やだ」
「エレメンタリースクール生かよ・・・」
割と真ん中のテーブルに陣取り、配膳された野菜を食べないストマックをなんとか諭して野菜を食べさせていると、ティルス女子組がやってくる。
「おはよう!」
「ん、おはようエリ」
「おはようみんな!」
「おはようへルマンダ」
そんな感じで女子達も席につき、朝食を食べる。
食べ終わるとHRに移動し、授業を受ける。まずは社会術。
「よって大魔王サタンの秘術とは目を見たものを眷属にすることであり・・・」
これが終わると貴族社会術。
「この場合は税率を下げ、民が沢山買い物をするようにするのです・・・」
昼飯。
そして午後からは武術系統とダンジョンについてだ。
俺の魔術ははっきり言ってチートだが、流石にみんなついてくることが出来ている。
俺とストマックは力をセーブしているがな。
俺は毎日鍛えているが、この威力の魔法を使うのは肉体に負荷がかかり、中々に骨が折れる。
こればっかりは龍族のストマックが羨ましい。
まあそんなストマックにも悩みはあるんだから仕方のない思いなのだが。
「今回は2段相当の魔術、”
ほう、鎌鼬か。
鎌鼬は斬撃魔法だ。
風の刃を相手に叩き込む。
少し切り傷を負わせるのにも使えるし相手を殺すのにも使える。
戦闘にも制圧にも使える便利な魔法だ。
え?なんで俺がこんなこと知ってるのかって?
当たり前だろ。もう使えるからだよ。
そもそも”
呪文は手先に力を込めて、風や火など、使う魔術の系統を想像することで使える。
俺はもちろん詠唱はしないでいいが、あまり想像しにくい時は詠唱が手助けになるのだ。
と、いうことで早速!
「”鎌鼬”!」
シュバ!
斬撃が的を粉々にする。
そして手もヒリヒリする。
痛ってえーー
「流石!素晴らしいですね!カイくんは」
そういって先生は拍手を俺に送る。
「お前、ちょっとやりすぎじゃないか?」
ストマックが俺に言う。
周りのオーラが痛い。きっとトマーゾやらゲオルグやらが後ろから手を回しているのだろう。
本当に狡い奴らだ。
その後は選択授業だ。
剣術と上級迷宮学。
俺はもちろん剣術の選択だ。
ストマックとジェイダも同じ選択で、エリは俺と選択が違うと知ったら残念そうにしていた。
素振りをし、模擬戦。
そして戦場での実践的な戦い方について。
「確実に相手の急所を刺します。乱戦になると相手の魔術により必ず目が狙われます。その際は剣をこのようにして・・・」
そしてその後は算術。今回は二桁の掛け算だ。
一瞬で解けた。この世界には筆算がないからな。
ズルなんて言い方はよせよ。これでも頭を使っているんだから。
次は迷宮術。
「ダンジョンに最奥部には基本的に堕天使ルシファーから”名前”を授かった者が住み着いていると言われており・・・」
そして一日の工程が終了した。
「さて、ダンジョンにでも行きますか!」
俺の鶴の一声で俺達、”高貴な意思”は出発する。
・・・”高貴な意思”って今考えると凄いな。迫力っつーか。こんな九歳ばっかりのパーティには勿体ない名前だな。
「あら!カイくん達!こんにちは!」
ギルドに入ると受付嬢が俺達を歓迎する。
「あ、こんにちは!マリーナさん!」
ここで歳上殺しのルイの眩しい挨拶。
「あ!ルイくんこんにちは?今日はどこに行くの?」
「うーん、折角だし北のダンジョンはどうだ?」
ルイになると露骨にニコニコする受付嬢ことマリーナ。
「分かったわルイくん!手続きはお姉さんに任せてください!」
そういってマリーナが胸を張る。
「わかりました。ありがとうございます!」
ルイが笑顔で言う。
マリーナは全速力で手続きをしに行った。
にしてもルイは末恐ろしいな。
めちゃくちゃ女の子を侍らせて、うむ。よきにはからえ〜とかやってそうだ。怖い。
そう思いながらみんなの所に戻ると何故かエリたちは不機嫌だった。
「どうしたの?エリ」
「学校でみーんなカイくんのことを嫌な奴扱いするんだもん!みんなで文句を言っていただけよ」
「そうだよ。なんでカイがそんなこと言われなくちゃなんないんだ!」
珍しくエドワードもキレてる。
どうやら上級迷宮術の授業で俺の陰口を叩く輩がいたらしい。
まあ正直どうでもいいな。負け惜しみは自分の存在価値を下げるだけだ。
「まあ俺は気にしていないし、いいよ」
「まあカイくんに直接攻撃してくる人はいないだろうしね」
ジェイダが何故か得意げに言う。
「ああ」
俺はうなづく。
そう、だから俺は強くなければならない。
傭兵時代は部下に舐められた時点でおしまいだった。
ここは軍ではないとはいえ、自らみんなに嫉妬を受けるルートを取ったのだから、せめて暴力でのやっかみぐらいは跳ね返さねばな。
「おーい!カイ!クエスト決まったぞ〜」
ルイが笑顔で俺に近づいてくる。
相変わらずコイツは交渉がうまい。
外行きの笑顔も見事にイケメンだし、何より相手から自然に譲歩を引き出せる話術を持っている。
そして剣の腕もいいと来た。
スキルは持っていなかったようだし、将来は文官なのだろうか。外交官なんかも向いているかもしれない。
「それで?クエストはなんなんだ?」
「ああ、北の洞窟の四階層でオークのモンスターハウスが発見されたそうだ。俺達はその討伐と道中のアダマンタイトの採掘を任された。上手く行けば魔石の一攫千金で結構な金が入るし、三割のアダマンタイトを持ち帰れる!」
おお、これは素直にすごい。
こんなに高待遇のクエストをよく他のパーティに取られなかったな。
やはり色仕掛けは最強ってことか。
「いってきまーす!」
こうして俺達はダンジョン討伐に繰り出したのだった。
▼ ▼ ▼ ▼ ▼
ダンジョンに到着した俺達はズカズカとその中に踏み入る。
入口から踏み入ったそこはレンガの道が続いている。
おもむろに俺の魔力感知が反応する。斜め前、10m先ぐらいか。
「(”鎌鼬”)」
俺は敵に悟られないように無詠唱でドワーフ製の杖を目標に向ける。
ジュバッ!
血しぶきが上がる。
そこではゴブリンが輪切りになっていた。
「すげえなカイ!よくあそこにゴブリンがいるって分かったな!」
エドワードが興奮気味に俺に聞く。
「ああ、まあ、慣れだよ」
俺はそれに適当に返す。
ドンドン階を踏破していくと、ついに四階。階段を降りた先には、結構な数のアダマンタイトが散らばっていた。
アダマンタイトとは半透明でとても硬い金属だ。
半透明なので美術品としての価値が高いだけでなく、しっかりと金属光沢や展性も持ち合わせており、かつ魔力との織り合わせもいいため、金属としての価値も高い。
これを三割持ち帰れるって、どんな交渉術使ったんだよルイ・・・。
あ、そうそう。そういえば試してみたいことがあったんだ。
洞窟は暗いし、割と指示が伝わりにくい。
だからここで俺のスキル、”指揮者”が役に立つかもしんない。
ということで!
「スキル、”指揮者”」
よし、これで有効になったはずだから、試しに指示をしてみよう。
「アデレード?そっちにモンスターハウスの扉があったりする?」
俺は防御戦士であるアデレードに偵察を依頼する。
ドクンッ
お?なんか、脳内に・・・映像が・・・
あ、あ、ヤバい・・・めまいが・・・。情報が制御できない!溢れそうだ!
こ、これはヤバい!死ぬ!
耐えろ!耐えろ!耐えろ!
よ、よし、なんとか情報を制御できたな。
おお、これはアデレード視点じゃないか!
というかモンスターハウス発見!でかしたアデレード!
「だ、大丈夫!?カイくん!」
俺の異変に気付いたエリが俺に言葉を掛ける。
「だ、大丈夫だ」
てか何時まで俺の脳に映像が流れ込んでくんだよ・・・。
もしや一生解除できないってこと無いよな?
「リンク解除」
俺が呟くと映像は脳内から出ていった。
こ、こりゃあいい!まるで俺の手先みたいに扱えるじゃないか!
覚えておこう。
ああ、前世でこのスキルがあったら俺は殺されなかったのかもなあ。
というか今度は戦闘中の指示をしてみよう。
なにか変わってるかもしれない。
というかこれでスキルの接続を切れるなら他のスキルも――
「カイくん?ホントに大丈夫?さっきからなにか独り言をしているけれど」
「うおっ!え、え、えと、大丈夫!じゃあモンスターハウスに行こうか!」
エリがとても心配していた。
ということで俺達はモンスターハウスに突入した。
中に入ると約20体のオークが攻撃を仕掛けてきた。
「まずはエドワードとアデレードがオークの最初の攻撃をいなして!次に俺とエリが魔法攻撃を放つよ!俺達が攻撃した後に怯んだオークの足を狙ってジェイダは攻撃してね!その隙にストマックは糸でオーク同士をぶつけて転がして!ルイとへルマンダはオークの動きを遅らせる妨害魔法陣をだしてくれ!風魔法でさらなる妨害もあればもっと助かるかな!あとは全員で陣形を崩さないようにね!」
俺はとても9歳児には理解できそうにない指示を敢えて羅列する。
「「「「「「分かった!」」」」」」
ガキン!
防御戦士隊が盾でオークをいなし、俺達が攻撃するためのコースを空ける。
「「大地の加護よ、我らに知を求めん!”
俺とエリは全く同じ魔法を唱える。
俺は敢えて最低出力の魔法を撃つ。
バンバンバン!
土の弾丸がオークの眉間で弾ける。
オークが12体ほど倒れる。
「ストマックくん!」
「おう!」
ジェイダとストマックの同時攻撃。
オークが地面に転がる。
残りのオークも逃げようとするが、上手く魔法陣が機能して逃げ出せない。
もう十分だと判断した俺は土魔法の弾丸で残りのオークの眉間を撃ち抜き、クエストは完了した。
俺は今、冷や汗が止まらない。
これはとんでもない力だ。
俺の飛ばした指示に忠実に従うどころか、完璧にシナリオ通りに事は運んだ。
エリは俺調べ一番オークに効くと思われる魔術を教えてもいないのに使ったし、ジェイダとストマックの位置取りや攻撃のタイミングなども、全て俺の予測通り・・・。
これは禁忌だ。間違いなく開けてはならない扉だ。
言い換えてしまえば、”必ず一発の銃弾で相手を殺せる力”が俺に手に入ったことになる。
魔術でも、どうしても人を殺そうとするときには戸惑いや恐怖が産まれることになるだろう。
だが、もし今日のパーティメンバーのように完璧に俺の描いたシナリオ通りに人を動かせるのなら、その戸惑いや恐怖心は俺の命令によって生じるスキルの強制力で全てもみ消す事ができる。
傭兵時代の俺のクローンとも呼べる人格破壊人間の工場みたいな能力が俺に備わってしまったのだ。
この能力は間違いなく戦争の在り方を変えてしまう――
「カイくん?さっきから様子がおかしいよ?」
気づけばエリが俺の顔を覗き込んでいた。
「ああ、すまん、早くダンジョンを出よう」
▼ ▼ ▼ ▼ ▼
「ありがとうございましたー!」
俺達はダンジョンを出てギルドで換金し、夕日の中、帰宅の道を歩んでいる。
にしてもこの力はヤバい・・・。
なんで神様はこうも俺に災難を――
「ねえカイくん。何をさっきから悩んでいるの?」
「え?い、いや?悩んでなんか――」
「ねえカイくん。私ってカイくんの”いいなずけ”よね?」
急に俺の話を遮ってエリは言う。
「そうだな。お前と俺はほぼ婚約していると言ってもいいだろう」
「じゃあ悩みぐらい私に教えてくれても良いんじゃないかしら?」
有無を言わさぬ迫力がその声にはあった。
「っ・・・そ、そも、もし俺が勝手に遠い所に行ってしまったら、エリはどう思う?」
「ええ?カイくんが・・・?」
「うん」
「そうなりそうなの?」
「いや、まだわかんないんだけどね・・」
一瞬、エリの顔に陰りが見えた気がしたが、きっと拳を握って、俺の目を見ながらエリは続ける。
「もしそうなったら、私はカイくんが戻って来るのを一生待ち続けるわ!」
屈託のないその言葉で、俺の心は晴れ渡るような感じがした。
「そう言ってくれて嬉しいよ。ありがとう!」
そう、こんな力を持っていれば、いつ俺の心は壊れるか判らない。しかも、今現時点で俺のいちばん大事なスキルである魔力感知が使えなくなった場合、もしかしたらエリのことをエリと識別できなくなるかもしれない。
そんな危険性を、俺の心は何時までも潜在的に孕んでいる。
でもそんな俺でも、エリなら受け入れてくれそうな気がした。
こんな気持ちになるのはは初めてだった。
▼ ▼ ▼ ▼ ▼
「”魔力感知”、解除」
寮に帰って、夕食に行く前、俺は魔力感知を切って夕食に行ってみることにした。
俺は現時点でこの能力に依存しすぎている。
ちゃんとこのスキルに頼らずに生きていかないと。
そう思って扉の前に立つと、動悸と震えが止まらなくなる。
も、もしこの瞬間に誰かに裏切られても俺は察知する事ができないし、相手の不快な気持ちも察知できない・・・。
空気が読めないって、無理だ。俺には無理だ。
ま、まあ明日もあるし気長に行けばいいよな!そうだ!
「”魔力感知”」
結局俺は魔力感知をつけっぱなしで夕食に行った。
怠惰に負けた自分の心がどこか許せなくて、その日は後味の悪い一日となってしまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます