15 ストマック・”ジルス”・グラックス(1)

レビュー来てました。最高です。ありがとうございます。足舐めに行くので住所を教えてください♡

もっとどしどしレビュー待ってます!




「お前、その名前を言ったな?」

 ストマックは見たこともない形相でブリッジナ生徒会長の方に歩み寄る。


「なにするんだ!」

 俺はとっさに地面に手を着け、魔法陣を展開する。


 ブォオオン


 ストマックの周りに結界が産まれる。


 ダアン!


 結界に阻まれ、ストマックは怒り狂う。


 怒り狂ったストマックは、徐々に体を変化させる。


 まず頭から、禍々しい、ゲームや本で何度も見た、おなじみのフォルムへと、徐々に、徐々に。


 オーラは怒りと戸惑いだ。


 俺はとっさに魔法陣結界を上書きし、封印結界を織り交ぜる。


 封印されたストマックは、人の姿に戻り、再び拘束された。


「お前はアラステア・ジルス・グラックスの息子だったんだな」

「・・・ああ」

「つまりお前は龍族だということか」

「ああ。早く殺すなら殺せ」


 ストマックは諦めたかのような表情で俺に言った。



 ▼ ▼ ▼ ▼ ▼



 俺の父は、”狂気王”の異名をもつ、アラステア・ジルス・グラックス。


 昔のオルタン共和国、オルタン王国の王族の出だ。オルタン王族出身の者の性はグラックス。その中でも祖先の龍、ジルスの血が濃く、龍族であるものが”ジルス”を名乗る。



 話は俺がティルスに行く前に遡る。



「ほう、ではもしお前に無理やりファミリーネームを聞き出そうとした者がいたらどうするのだ?」




「その時は力で退けます」


「ハッハッハ!大きく出たな!ストマックよ。自信はあるか?」


「あなたのむすこですゆえ」



 俺にファミリーネームを名乗らせたくない父は、偽名を名乗るように俺に言ったが、俺はそれを退けた。


 その後だった。



「ふむ、お前は俺を超える才があるかもしれんな。少なくとも俺が5歳の頃はこんな答弁はできなんだ。よし、ならお前に伝えよう」


 そういうと、アラステアの雰囲気が変わる。

「なんでしょうか?」


「お前は、俺が死んだあとの後継者だ」


「は?」

 理解が追いつかない。


「お前も知っているであろう?私は5大王の中で唯一、不死身ではない。そして不死身になるための研究のの成果で、様々な発明を生み出した、と」

 落ち着いた口調でアラステアは話す。


「それは半分本当で、半分嘘だ」


「え」


「俺は寿命を伸ばしてこの世にしがみつこうとは思わん。不死身になるということは、即ち痛い死に方をすると言うことだ。だから俺は寿命で死ぬことを選んだ。よって、俺が死んだあとの”狂気王”の称号はお前に託す」


「ちょ、ちょっとまってください。い、いくらなんでもそれは――」

 話が急展開過ぎる。


「そういうことだ。では、また」


 そんな、そんなバカな話があるか!だって父上は・・・

「ち、父上!父上は龍の血族!簡単に死んだりなど・・・」


「いくら龍族でも、己の寿命には逆らえん。俺はもう十分生きた」

「いや、しかし、私にそのような力は・・・」


「お前は俺の息子である。よって力が無いなどとは言わせない。良いな!」


 バタン


 ドアが閉まり、その場は静寂に包まれた・・・。



 俺には力がある。


 常人には考えつかないような力。


 ジルス家は、世界でも有数の力を持つ魔族だ。


 なぜそのような力が俺にあるのか。



 それは俺が”龍族”だからだ。



 俺の父、アラステアは数少ない龍の生き残りだ。


 それは息子である俺も同じだ。


 俺の血筋の子供はすべて純粋な龍として産まれる。


 そして龍とバレないように人間に擬態して過ごすのだ。

 擬態には30年かかる。


 元々あった体ではなく、作りだした肉体の方を実体に置き換えるのにかかる時間だ。


 よって俺は40歳なのだ。



 俺は最初、アラステアに姓を名乗らないで置いてくれと言われた意味がわからなかった。


 だが、それも一瞬で分かった。


 カイ・ティルス・ブラッドリーに俺の名前がバレないためだ。



 龍族を殺した者はルシファーとの面会が許されるという。


 そしてルシファーと面会した者はとてつもない力が与えられるということだ。



 龍殺しは人類の悲願なのだ。



 龍はその圧倒的な力の代償に、自分よりも強いものが自分のことを龍だと気づいた場合、必ず殺されるという呪いがある。



 はっきり言ってカイには俺は刃が立たない。

 強すぎる。


 父は恐らく、カイの近くで学ばせることで、他の五大王に優位に立ちたかったのだろう。


 だが、それは叶わない。


 なぜなら俺の正体がカイにバレたから。


 俺はここで殺される運命なのだろう。


 まあ受け入れようではないか。


 コイツ親友に殺されるなら本望さ。



 ▼ ▼ ▼ ▼ ▼



「さあ早く殺せ!」


 そういってストマックは喚く。


 どういうことだ?確かにストマックは龍族だが、なぜ殺すことになるんだ?

「なぜ、お前を殺さないとならないんだ?」


「お前は俺の本当の正体を知らないのか?」

 ストマックが頭にハテナを浮かべて俺に聞く。オーラが困惑に変わる。


「ああ、お前は龍族だろう?」


「ならなぜ殺さない!」

 ストマックが信じられないという表情をとる。


「逆になぜ親友であるお前を殺さなくてはならない」


「な、なぜ?の、呪いが効かないのか?」

「呪い?」


「俺達龍族は自分よりも強き者に発見された場合は必ず殺されるという呪いがあるはずだ・・・なぜ?なぜ殺さない!」


 そいつは初耳。


「まあ俺にその呪いは効かないらしいな」

「な、なぜ?」

「お前が俺よりも強いか、俺が特異体質だからだろうな」


「う、嘘だ・・・」

「嘘だと思うならブリッジナ生徒会長に聞いてごらんよ。基本こういう証人尋問には嘘発見器が導入されているはずだ。ってか手に持ってたな」


 嘘発見器とは、魔道具で、主に事情聴取などで用いられ、被告が喋ることが嘘か真かを判断する。



「俺はお前のことは殺さない。絶対の誓いだ」


「ほんとか?」


「ああ、ホントだ。あの嘘発見器に向かって誓うよ」


「分かった」


「ね?生徒会長・・・って」


 ブリッジナは失禁して気を失っていた。


 あちゃー。


「やれやれ」

「プッ」


「なんだよ?」

「いや、なんでもないさ」

 さっきまで死にそうにしていたストマックが急にケロッとしだしたのを見て、思わず笑ってしまった。


「お前なんか失礼なこと考えてただろ?」

 ストマックが眉間にシワを寄せ、俺に問いただす。


「いやいや、そんなまさか」

「ほんとか?」

「ほんとだ」


 ウーウーウー


 ブリッジナの手に持っていた嘘発見器が嘘警報を発令した。



 ▼ ▼ ▼ ▼ ▼



 あのあと、ブリッジナの痕を掃除し、ブリッジナを起こして、俺達の長い一日は終了した。


 ブリッジナは赤面すると同時に、ストマックに何度も何度も謝っていた。


 余程答えたと見える。


 いくら生徒会長とはいえどコンプライアンス個人情報は守れよな。



 さて、俺達は今、HRから武道場に向かって歩いているのだが・・・。


「ねえねえ?あれが問題のカイって下級生?」

「あのゲオルグ様の静止を振り切り実験で寮を半壊させた?」

「まあ!なんてひどいことを!ゲオルグ様はご立派ね・・・」


 さっきから視線が痛い。


 ゲオルグのイケメンパワーによって、俺は完全に悪者に仕立て上げられているらしい。


「なんでカイくんが悪者になるのさ」

 ルイが頬を膨らませる。


「ああ、カイは悪くないぜ!気にするなよ!」

 エドワードが俺を励ます。


 イイ男♡


 あとエリさん、無言で噂をささやく女子生徒に近づいて行かないでください。これ以上問題を起こしたくはありませんよ。


 そしてストマックはなぜあんなに女の子にモテるのか。

 エルマンダもジェイダも完全に女の顔してるぞ。


 死にかけてたときの顔を見せてやりてえよ。



「もう!なんで止めるのよ!」

「これ以上問題を起こしたら俺が父様に殺されるよ」


 暴れるエリを抑えながら、俺は剣道場で授業が始まるのを待つ


「いいでしょ〜ちょーーーっとわからせてあげるだけよ♡」

「ダメ」

「なんでよ〜!」


 ダメに決まってんだろ。


「まあ!今度は女の子まで虐めるの?アンタ!」

「そうよそうよ!ちょっと調子に乗りすぎよ!」


 エリと押し問答をしていたら、同じフロアで授業を受ける予定の上級生の女の子が近づいてきて文句を立てる。


「アンタ!ゲオルグ様にちょっかいだしておいていい加減にしなさいよ!」

「そうよ!早く責任をとって退学しなさい!」

「「「そうよそうよ!」」」


 すると騒ぎを聞きつけた同級生も乱入してくる。


「お前!俺のエリちゃんを虐めるな!」

「そうだぞ!エリちゃんも嫌がってるだろ!」

「最低ね。カイくん」


 チッ。これだから人間は嫌いなんだ。


 確実でもなんでもない情報に踊らされて一個人を必要なまでに叩いて、いざそれで人が死んだり病んだりしたら手のひら返して「可哀想〜」なーんて言うんだろ?


 気色わりいんだよ。


 あといつからエリはお前のになった。そこのフツメンモブ男子よ。


「あのなあ――」

 俺が呆れて反論をしようとした時だった。


「あの?なにがあったかも知らないのにカイくんを悪者にするの、やめてもらえます?不快なんですけど」


「「「「ヒッ」」」」


 とてつもなく冷たい声を出したエリは、周りを睨みつける。


「あなた達の一方的な妄想でそんな私が傷ついているなんて言わないでもらえます?」


 一気にエリはまくしたてる。

「カイくんが最低?むしろ横から見て勝手に私の気持ちを分かったかのように本人の眼の前で勝手にカイくんに罵詈雑言を浴びせるほうが最低だと思いますけどね!」


「で、でも、そいつは寮をぶち壊した!」

 フツメンモブ男子が反論する。


「寮をぶち壊した?それはバーボルシュタットさんがカイくんを傷つけようとしたからカイくんが反撃しただけです。そんな不確かな情報に踊らされる貴方になんて靡きませんよ。なーにが「ぼくのエリ」なんでしょう。それに・・・」


「カイくんは私だけの物です♡」


 そういってエリは俺の腕に抱きついて頬を擦ってきた。


 グフフフフフ ういやつめ〜


 ハッ。いかんいかん。煩悩に支配されるところだった。


「そういうわけで、私とカイくんについて変な噂を流すのはやめてくださいね♡」

 そういってエリは周りをニッコニコの笑顔で見渡す。


 まあ目は笑ってないんだけどね。



 にしても嬉しいもんだな。


 こんなに自分のことを好いてくれる女の子がいるなんて・・・。


 それに、小学校のころは俺が助けてばっかりだったのに、逆にエリに助けてもらっちゃったな。


 なんか・・・寂しいけど・・・、エリの成長も感じられて嬉しい・・?のかもな。


 そう思って未だに抱きついているエリの頭をなでてやると、エリは今度は目もニッコリと笑ってとても八歳児とは思えない惚けたような笑顔を送ってきた。


 それにつられて俺もニッコリと笑い返すのだった。


 そ、それにしてもその笑顔はヤバい・・・死人が出る・・・。


 あっ、道場に入ってきた先生も鼻血出した・・・。

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