11 入学

なろう版の方に世界地図を掲載いたしました。ご一読ください。

https://44235.mitemin.net/i847782/ ◀世界地図です。こちらからも飛べるはずです。




 オルタンは巨大な国である。


 首都タイトンのトレードマークは、これもアラステアの発明である各住居に魔法陣を描かせる住居型魔法陣、そして街に高くそびえ立つ魔力監視塔マジックタワーだ。


 それを横目に、俺達の馬車は、ティルスとは比べ物にならないほど豪勢な街の中を進む。


「ねえカイくん!カイくんってどうしてそんなに強いの?」

 ヘルマンダが俺に聞く。


「そうだぜ!カイは強いんだぜ!」

 ストマックが乱入。コイツほんとに次席とは思えんぐらい頭悪いな。


「うーん・・・。そういえば俺、産まれ時に死にかけた・・らしい」

「え?カイくん死んじゃうの?」

 しどろもどろで答えた俺に、うたた寝をしていたエリが飛び起きて俺に聞く。


「いやいや、赤ちゃんのころ死にかけて、その御蔭で魔力の制御がうまく扱えるようになった・・・らしい」

「え?じゃあ死なないの?良かった!」

「ああ、死なないさ」


 俺はだいぶ友達と話せるようになった。オーラを解析してくれる俺のスキルのお陰で悪いやつを俺の身の回りからはじき出せる。


 それでもなかなか安心しきって話せないのだから、俺の人間嫌いは本物だろう。


「うわあ!」


 そんなバカ話をしていると、歓声が挙がった。

 俺も歓声の上がる方を見やる


「す、すげえ!」

「こんなの見たこと無い!」


 俺達は今、あまりの豪快さに開いた口が塞がらない。


 目の前にそびえ立つのは、俺の家にもあった龍の装飾が施された門だ。

 こんな門、見たこと無い。


 デカい。デカすぎる。


 優に中層ビルぐらいの高さを誇る門は、俺達をまるで飲み込むかのように口を開けて鎮座していた。


「うそだろ・・・」

 この学校は全部デカい。門も、塀も、建物も。


 日本武◯館ぐらいありそうな体育館に連れてこさせられ、俺達は入学式だ。


「やあ新入生諸君!俺の名前はコーディ・シアフ・エンドラー。この学校の校長だ!」

 そういって、漆黒のローブがはち切れそうな日に焼けた年齢不詳のムキムキマッチョマンが続ける。


「新入生は560人!みんな切磋琢磨し、認め合って褒めあえ!以上!」

 そして一瞬で式辞が終わった。クソ長ったらしい日本式とは大違いだ。


「えーつぎ、生徒会長のお言葉でーす」

 メガネをかけた進行役の男子生徒が言う。貴族学校なのに上品もひったくれもない。


 気の強そうな、13,4歳ぐらいの水色の髪の女子生徒が壇上へ上がる。


 何故か視線が合う。

「私の名前はカーラ・ブリッジナ。生徒会長よ。これからあなた達は、ここでともに学び、成長しながら七年間を過ごしてもらいます。


 この街は昔から何度も戦火に焼かれてきました。この大陸のほぼすべての街道はこの都市から始まっており、さらに世界最大の川であるアレラ川が流れる交通の要衝ですが、守りには適していません。


 実に有史から数えて34回も侵略を受けてきました。


 ですが、それをも勝ち抜きこの地を手に入れ、大陸に領土を広げ続けるこの国、オルタン。

 今や史上最大の領地を手に入れ、押しも押されもせぬ史上最強の国家、それを形作っているものはなんでしょうか?


 それは、圧倒的な政治基盤と圧倒的な軍事力です。

 他の国とは違い、平民の貴族化が柔軟な国ですから、有能だと証明された人材は積極的に登用されます。新陳代謝が激しいのです。


 今、私達に求められているのは、この国を率いるリーダーになることです。

 あなた達が勉学と武術をよく学び、この国に必要な人材になられることを願っています。

 貴族学校生という自覚を持って、日々鍛錬を積んでください。


 そうすれば、あなたの未来も切り開かれるはずです」


 そう、恭しくもハキハキと式辞を述べ、ブリッジナ生徒会長は壇上から降りる。


 へえー、こんなはっきりと喋ってるやつなんか見たこと無いな。

 俺が見たことあるリーダーは、ボソボソと惰性で喋る高校生生徒会長と、あせが吹き出したおっさん社長と、体育会系の頂点とも言える厳しい訓練部隊隊長だけだ。


 コツン


 感心していると、隣から何かが触れる。

 ストマックがこっちに倒れ込みながら寝ていた。


 俺はそれに一発入れて、みんなの流れる方向に進んでいった。



「いってえなあ。なにすんだよ!」

「おめえが寝てるから悪い」

 悪態をつきまくるストマックを連れ、同じティルス出身の先輩の背中を追いかけ、俺はブルガンディ男子寮に向かう。


 何回目の寮ぐらしだろうか。

 高校も寮、そこから会社を変えまくってた時期も合わせると・・・。


 やめた。数えるだけ嫌な思い出が吹き出してくる。


「あなたがカイ様ですか?」

 俺が物思いにふけっていると、引率の先輩から声がかけられる。


「あ・・・、えと、お初にお目にかかります。カイ・ティルス・ブラッドリーです・・・。」

 俺はなんとか返す。


「ああ、僕はゲオルグ・バーボルシュタットです。三年生です。以後、お見知りおきを」

「ちょ、ちょっと、敬語なんて使わなくて大丈夫ですよ・・・」

 俺は早くこの人とは離れたいが、敬語は直してもらわねばならん。良からぬ噂が立つ。


「いいえ?のご領主様の後継者様ともなれば、敬語じゃなければねえ」

 そうやって、コイツはニチャアと下卑た笑いを出す。


 明らかに俺を敵視したオーラを振りまきながら、そいつはもったいないぐらいのイケメンで愛想を振りまいていた。

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