第9話
「あなた、おかえりなさい。」
私は色々な思いを噛み締めながら言った。
もう二度と夫に言う事が出来ないかもしれないと思っていた言葉。
「あぁ・・ただいま」
言葉を返してくれた。嬉しい…
私は面会には行かなかった。あの日から夫が帰って来るこの日に全てを賭けると決めていたから。
「ねぇ、ヒロ君はこれからさ、どうしたい?」
私はまず夫の気持ちを確かめてみる。
だけど私のやるべき事は変わらない。
「俺かぁ・・・、実際どうしたいんだろうな。
まだ判決が決まった訳じゃないしな、これから裁判して、判決が決まってどうなるか。まぁ、その前にちゃんと離婚してやるから。」
・・・絶対に嫌だ!!
「警察から聞いてないの?あのクズ、訴えを取り下げるみたいだよ。父親が地方の市会議員でこれ以上話を大きくしたくないんだって。」
クズの実家を調べて、両親に土下座してクズの親の所に一緒に行って貰った。もし訴えを取り下げないなら、私も訴えると。全てを暴露して息子だけじゃなくお前達も全員道連れにしてやると。
クズの親は黙って頷き、訴えを取り下げることを了承した。
「あの時ね、何であのタイミングで入ってきたの?」
夫はあの時、私を憎んでいたはずだ。だから私がクズに抱かれて醜態を晒すのを望んでいるのだと、その姿を見て決定的に私を見限りたいのだと思っていた。
実際私の惨憺たる裏切りの内容がクズの口から語られていた。
私自身、余りにも最低な自分の行為に耐え切れずあの時は本当に自殺を決意した。
それなのに・・・
あの時の…、夫の姿・・そして「俺の女」その言葉が頭から離れない。
「あぁ、最初からクズが襲いかかったら、やろうと決めてたからな。何処に自分の女が犯されるの見て喜ぶヤツがいるんだよ。」
「自分の女」
その言葉を聞いて、私は背筋が震えた・・・
私の中の雌が喜び叫んでいる。股間からどぷっとドロドロの愛液が溢れたのが分かった。
私はもう止まれない…
「ねぇ、私と別れるの?」
受け入れて貰えなかったら、私は死のう…
でもね、私は・・・出来る全てを・・やるからね。
「そっちの方がいいだろ。もう前と同じには戻れないんだから…。」
私は前とおんなじ関係なんて望んでいないんだよ・・・・
好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き
私のご主人様・・・愛してる・・大好き
「ユリも俺と一緒に居ると苦しいだろ。少なくとも俺は、お互い相手に気を遣いながらの生活は遠慮したいよ。」
ううん、そんな対等な関係じゃないんだよ…
だって私は・・・あなたのマゾ雌なんだから…
「ヒロ君はね…、私になんか気を遣わなくていいんだよ・・・」
ガチャ・・
私は後ろ手で玄関の鍵を掛けた。
最後の・・・、本当の覚悟を私は決めた。
「私はね・・、決めたんだ。あなたに・・・私の全部曝け出すって…何も隠さないの…」
私はゆっくりと、服を脱いでいく。
夫を全力で誘惑する。私のご主人様になって貰えるように淫らに、媚びるように・・
「おっ、おい!ユリ?」
夫が動揺している。夫の前で初めて曝け出す私のマゾ雌の本性…
本当の本当に心から願う…
受け入れて貰える為なら何でもするよ…
だから神様、最後にお願いします。私の人生に他にはもう何も要りません・・・
だから・・・
「ねぇ、お願い・・・。あなただけの・・マゾ雌、飼って欲しいな…」
だから、お願いします・・・
「マゾ雌にもね・・、ご主人様を選ぶ権利があるんだよ…わたしはね、あなただけの・・、メスになりたいの…」
私は何度だって伝える…
「ねぇ、見て…あなたのことを考えて、あなたのためだけに選んだ、あなただけにしか見せない、私の下着姿…」
夫を想像して、夫に喜んで貰えるように、それだけを考えてお店を何件も回って2日間かけて選んだ下着。
私はね、全力であなたを誘惑して・・・、媚びるよ・・・
「私の身体、あなたの好き放題にしていいんだよ・・・全部ね、ここにいる雌が受け入れてあげるよ」
私は希う《こいねがう》・・・
あなたの全てが欲しいと・・
「私にね、あなたの全て受け入れさせて・・」
あなただけの雌にして欲しいと・・・
私の汚れた身体を全部上書きして、
あなた色に塗り潰されたいと・・・
「いいのかよ?俺は容赦しねーぞ。」
私の子宮から背中・・そして脳へ、甘い甘い震えが走った…
疼きが止まらない・・・きっと、私は今絶頂しいてる・・
「もちろんだよ・・、ねぇ、そしたらね・・、あなただけの・・マゾ雌、調教して・・・♡」
私はずっと下腹部にあてていた手をそっと離した・・・
子宮を模した卑猥なハートマークの紋様、その中心に夫の名前を入れたタトゥー。
あなただけのマゾ雌の証だよ・・・♡
****
あの後、数え切れないくらいにイってしまった。
死ぬかと思うほど気持ち良かった。
あのクズなんて比べ物にならないくらい、夫は上手かった。今まで手加減されていたのだろうか?一晩で完全に上書きされてしまった・・
そして完全に分からせられた。夫は私の想像以上のご主人様だった・・
誰相手にこんなテクニックを学んだのだろうと、マゾ雌の分際のくせして、激しく嫉妬してしまった・・・
好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、
好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、
横で寝ている夫の寝顔をずっと見つめて、ゆっくりと夫の髪を撫でた。今ここに一緒に居られる幸せを噛み締める。
んん〜
夫が起きた。
「おはよ、すごかった・・♡」
夫の頬にキスしてから、朝ご飯を作りに行った。
何を作ろうかなぁ・・・
夫がベッドから出て、台所に来た。
「なぁーユリ〜、メシ食べたら家探しに行くぞ〜」
夫との新しい生活のスタート。
2人の新しい関係。
もう前には戻れないけれど、でもきっとこれで良かったのだ。
あの時、夫が言っていた。
「なるべくしてなった」
多分そうなのだろう。
私は堕ち切る寸前だった、全てがギリギリで…
でも救われた。
運命っていうのを、私は信じたい。
だって性的な相性がばっちりのパートナーに出会えるなんて運命でしょ。
ハートマークにヒロLOVEと描かれた小さめのタトゥーの入ったお尻を振りながら、私は満面の笑みで答えた。
「はいっ、あ・な・た♡」
おしまい。
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