第8話
10日後、俺は釈放された。このまま刑務所に行くんだろうと思っていたので、正直肩透かしをくらった気分だった。
警察が来た時に、妻を襲っていたと思った男は妻の不倫相手だったと伝えた。妻に呼び出させた事は言わなかったけれど。
それで自首という形で逮捕された。
身元引受人にはユリがなってくれていた。
正直、俺は会うのが気まずかった。
ユリを許した訳じゃない…、だけどユリを利用して浮気相手に復讐をした引け目がある。
警察官に連れられて、留置所を出るとユリが居た。ピシッとしたスーツを着て背筋をピンと伸ばして、俺のことを待っていた。
綺麗なストレートロングの黒髪、整った顔立ち、凛とした雰囲気を纏っていて10日前とは大違いだ。浮気するような女には見えないわw
しかしこうやって見るとユリはやっぱり美人だ。
俺が一目惚れして、半年くらいかけて口説き落として付き合い始めたんだよな。
ユリが俺に気づいて、小走りで近寄ってくる。
「あなた、おかえりなさい。」
「えっ、あぁ…。迷惑かけて悪かった。迎えに来てくれてありがとう。」
なんかユリの雰囲気が、変わった気がする。何が違うのか分からないけど、嫌な感じがしなかった。すんなりと話すことが出来る。
一緒に家に帰る時に、あの後の事を色々教えてくれた。
まずあの男はすぐに救急車で運ばれ、命に別状は無いらしい。ただ奴のチ○○と金○は再起不能だそうだ。グチャグチャに潰れていた為、どうにもならなかったらしい。
それとあの日アイツが着ていた服から大麻が見つかったそうだ。家宅捜査が入って媚薬の中に違法のモノが混じってたらしく、まだ捜査中で詳しいことは教えて貰えなかったみたいだが、まぁ前科が付くことは確定みたいだ。
薬物絡みでユリの会社の同僚のとこにも警察が行ったらしい。マリって同僚は既婚者だったらしく、家庭は悲惨な事になっているらしい。
まぁその夫も色々あるみたいで泥沼だそうだ。
ユリも薬物検査をしたらしいが、それについては陰性だったそう。
「いっそ陽性反応が出てくれれば、良かったのにね。そしたらあのクズ、もっと追い込めたかもしれないのに。」
ユリは笑って言った。ん〜ずいぶんとこの短い間に強くなったな。あの男の事もクズ呼ばわりかwこれなら俺と別れても、大丈夫そうだ。
ユリは俺が連れて行かれた後、すぐに警察にあの男との事を、俺が命令して呼び出させた事以外、洗いざらい全て話したらしい。LIMEの履歴も全て残っていたので、それも見せて脅迫されていたと説明したと言っていた。
ユリが、俺が呼び出させた事を言わなかったから、早めに釈放されたのか。
何で俺の事は言わなかったんだと聞いたら、
「この事は私、お墓に入るまで秘密にするよ。私と貴方、2人だけの秘密。ふふふっ…」
と微笑を浮かべながら答えてた。ちょっと怖い。これは俺の弱みになるのか。
警察の取り調べが終わった後に、自分と俺の両親にすぐに連絡を取ったそうで、両方ともすぐに飛んで来たらしい。
ここでも俺がクズを呼び出させた事について言わなかったそうだ。全部私とクズが悪かったと説明したところ、ウチの両親からは
「ヒロはやり過ぎたかもしれないけど、でもあなたを守ろうとして行動した結果だから、私達はヒロの味方よ。私達に出来る事があれば、あの子を守る為なら何でもするわ。」
「正直ユリちゃんが浮気しなければって思いはあるけど・・、まぁ色々あったみたいだから、私達はあなたを許すわ。」
「私達はね、ユリちゃんの事を自分の娘のように思っていたから、浮気についてはすごくショックだった。でもユリちゃんが本当に悲惨な事になる前に終わって良かったと思ってるの。」
「別れる、別れないについては、俺達がどうこう言う事じゃない。ただ2人にとって最良の選択をして欲しい。」
こんな感じの事を言われたそうだ。
両親が面会に来てくれた時には、おれは謝ることしか出来なくて、ほとんど会話出来なかった。
「迷惑かけて、ごめん。」
「この馬鹿ヤロウがっ…。でもまぁ・・、何かあったら言って来い。それだけだ。」
で終わったから。だから直接では無いけど本音を聞けて良かった。真実を知ったらブチ切れると思うけど。親父、母さん、ごめん。
義両親は、ユリに激怒したらしい。お義父さんはめちゃくちゃ俺に同情してくれたらしく。
「お前の浮気でヒロ君の人生は変わってしまったんだぞ!悪い男に捕まった、それはあるかも知れないが、何で最初に話さなかった!」
「お前は私達の子供だから、見捨てたりはしない。辛かっただろうとも思う。」
「けどな、ヒロ君の事を考えると俺はとてもじゃないが、本当にやり切れん…」
「お前は何にせよ、ヒロ君に救われたんだ。離婚を切り出されたら、素直に別れなさい。もし別れない事を選択してくれたなら、その時はヒロ君に尽くしてしっかりと過ちを償いなさい。」
「お父さんはお前達が別れたとしても、ヒロ君を守る為に全力で動くからな。」
聞いていて、めちゃくちゃ申し訳なかった。
事実は俺の復讐だったのに。
俺の面会にも来てくれて、その時にも本当に申し訳ないって顔をしてた。
「ヒロ君、本当にすまなかった!私達に出来る事があれば何でも言って欲しい。」
その時は俺よりもユリの事を助けてやってくれと思っていたから、「大丈夫ですよ。気にしないで下さい。」ってさらっと流してしまったんだよな。悪い事したな。
「ユリ、お前正直に言えば良かったのに。そうすれば、そこまで悪者にならなかったろ。」
「ううん、私はね・・あなたに救われたの。あなたを裏切り続けたにも関わらず・・。だからあなたが悪者扱いされるくらいなら、私がどんな仕打ちだって受けるわ。」
「でもあなたのご両親からは優しくされてしまったけどね。」
そんな会話をしながら歩いていると、いつの間にか、もう家に着いた。2人で家に入る。
「あなた、おかえりなさい。」
ユリが静かに、その言葉を噛み締めるように、ゆっくりと言った。
さっきまでの空気が少し変わった気がした。
「あぁ・・ただいま」
「ねぇ、ヒロ君はこれからさ、どうしたい?」
これから?裁判して、刑務所行って・・・
復讐した後の、その先なんて考えてなかったんだよな。
それでも人生は続いていく・・・かぁ…
「俺かぁ・・・、実際どうしたいんだろうな。
まだ判決が決まった訳じゃないしな、これから裁判して、判決が決まってどうなるか。まぁ、その前にちゃんと離婚してやるから。」
「警察から聞いてないの?あのクズ、訴えを取り下げるみたいだよ。父親が地方の市会議員でこれ以上話を大きくしたくないんだって。」
なおさらどうしようか、分からなくなったんだけど。
しばらく沈黙が続いた。
その沈黙を破ったのはユリだった。
「あの時ね、何であのタイミングで入ってきたの?」
「あぁ、最初からユリにクズが襲いかかったら、やろうと決めてたからな。何処に自分の女が犯されるの見て喜ぶヤツがいるんだよ。」
「ねぇ、私と別れるの?」
「そっちの方がいいだろ。もう前と同じには戻れないんだから…。」
壊れてしまった2人の関係…
「ユリも俺と一緒に居ると苦しいだろ。少なくとも俺は、お互い相手に気を遣いながらの生活は遠慮したいよ。」
「ヒロ君はね…、私になんか気を遣わなくていいんだよ・・・」
ガチャ・・
ユリが後ろ手で玄関の鍵を掛けた。
なんかまずい気配がする・・・
「私はね・・、決めたんだ。あなたに・・・私の全部曝け出すって…何も隠さないの…」
突然ユリが自分の服に手を掛けた。玄関でゆっくりと、俺を誘うように服を脱いでいく。
「おっ、おい!ユリ?」
「ねぇ、お願い・・・。あなただけの・・マゾ雌、飼って欲しいな…」
今日迎えに来てくれて、ずっと感じていた違和感…多分だけどコイツ、覚悟を決めてる。
許されようとは思ってないし、許されるとも思ってない。全部を、全てを曝け出して、それで何があっても、俺と一緒に居るつもりなんだと分かった。
「マゾ雌にもね・・、ご主人様を選ぶ権利があるんだよ…わたしはね、あなただけの・・、メスになりたいの…」
ユリが下着姿になった。めちゃくちゃ煽情的な下着だ。思わずゴクリと喉が鳴る。
「ねぇ、見て…あなたのことを考えて、あなたのためだけに選んだ、あなただけにしか見せない、私の下着姿…」
やばい・・・これは…
「私の身体、あなたの好き放題にしていいんだよ・・・全部ね、ここにいる雌が受け入れてあげるよ」
脳みそが溶けてしまう・・
「私にね、あなたの全て受け入れさせて・・」
「いいのかよ?俺は容赦しねーぞ。」
雄の本能が、俺の脳を支配していく・・・
「もちろんだよ・・、ねぇ、そしたらね・・、あなただけの・・マゾ雌、調教して・・・♡」
****
めちゃくちゃ抱いた。Sっ気も出して、たくさん苛めた。やりたい放題。
ユリもめちゃくちゃ乱れてた。演技じゃないと思う、若干の不安はあるけどw
俺はもともとそっちの気があったけど、ユリには隠してたから。
嫌われたらどうしようって思うじゃん。やっぱりさ。
セックスに対して、俺達は仮面夫婦だったんだな。こっちの方も分かり合えた気がする。お互い本能剥き出しのセックスはめちゃくちゃ相性が良かった。
NTR性癖じゃなくて良かったわ。
ただアレにはちょっとひいた。アイツ何してんの。マジで・・
朝起きたら、嫁さんが横で俺の方をじっと見てた。先に起きてたみたいだな。
「おはよ、すごかった・・♡」って、俺の頬にキスしてから、朝飯を作りに行った。
スッキリした。身体もだけど・・w
浮気が分かった時、あの時が多分やり直せるギリギリのラインだったんだと思う。少しでも何かに躊躇って時間が経っていたら、無理だった。
それにユリには言ってないけど、風俗は何回か利用した事もあったし。それだって人によっては浮気だもんな。まぁ俺だってそこまで人の事を責められる程、綺麗なモノじゃないんだと思うと気が楽になる。
お互い、またゼロから関係を作っていけば良いか。だいぶ歪んだ関係になりそうだけどさ。
ユリが俺以外の誰かのモノになるって思うと、正直それはイヤなんだわ。
ベッドから出て、嫁さんの所に向かう。
「なぁーユリ〜、メシ食べたら家探しに行くぞ〜」
「はいっ、あ・な・た♡」
とびきりの笑顔で答えたユリは、裸エプロンだった・・・
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます