第5話

私は全てを夫に告白した。


あの男が私を本気で弄ぶようになってから、私は本当に狂っていたのだと、夫に懺悔をしながら自分の行いを振り返る事で心底理解した。


最初の間違いを犯した時の後悔、裏切りの泥沼に足を踏み入れた時に償いとして夫へ自らの全てを捧げようと誓った事。

全て、独りよがりで歪んだモノかも知れないが、その時は確かに私の心に刻み込んだはずだったのに・・・、私はそれらを忘れて快楽に、色に狂っていた・・・。


心と身体は別だからしょうがないの・・狂っていた時、私はそう思っていた。

懺悔をし、冷静になってみれば私は快楽に心が負けてしまっていたのだと理解した。

快楽に負けて、それに狂い、関係を続け、全てを忘れて愛する人を裏切り続けた・・・


話をしている最中に突然服を脱ぎ、全裸で土下座をしたのだって、その日の行為の最中にあった出来事が頭に浮かんで咄嗟に行動に移しただけ・・・

ただ・・、あの男のモノ、人では無いただの性欲処理のモノになるなら、せめて愛する夫のモノになりたいと思ったからだ。


身体はあの男に靡いてしまったとしても、心は夫だけを本当に愛しているから。


だから私は側に居る事を許された時、夫の全てを信じて受けれようと決意した。


夫にあの男を呼べと言われた時には、夫の前でしっかりとあの男と決別をしようと思った。


まさか夫のいる家であの男に抱かれろと言われるとは思っていなかった・・・


たった今、これからは夫に尽くし続けると、誓ったばかりなのに…


夫にを見られたくない。全てを信じて、受け入れ、償っていくと決意したばかりなのに、その決意はすぐに揺らいでしまう。

夫の前であの男に抱かれたく無くて、馬鹿な提案を咄嗟にしてしまう。


提案した後、すぐに後悔した。最初の提案を受け入れていれば、抱かれたとしても見られるのは演技をしている私だったのに・・・

夫に渡した画像と動画に写っているのは、夫を忘れ、快楽を貪る浅ましい本性を曝け出した私だ・・・


夫は私に蔑みと落胆の表情を浮かべながら、冷たく言い放つ。


「俺は明日お前に浮気相手に抱かれろって言った。それはこのデータがあろうがなかろうが関係ない。俺の言う事に従うのが嫌なら、俺が信用出来ないなら、もうこの話は終わりだ。今すぐ荷物をまとめて出ていけ。」


もう私に選択肢は無かった。夫の命令を受け入れるだけ・・・、それでも・・、せめて・・、あの男に抱かれる前に、夫に抱かれたかった。

私は夫のモノなんだと、身体に刻み込んで欲しかった。


私の願いは、自身の愚かな過ちの結果を更に自覚させる事となった。


「はぁ⁈嫌だよ、今日知らない男に抱かれて来た汚い身体なんか抱ける訳ないだろ。とりあえず少ししたら今日はもう寝るわ。お前は風呂でも入ったら?」


汚い身体・・・、私の身体はあの男の好みに開発され、あの男の癖がつけられ、あの男の手垢まみれになってしまったのだ・・

そんな身体を普通には抱けないのだろう。


優しかった夫は、今までこんな言い方をすることは無かった。私が変えてしまったのだ・・・


汚れてしまった身体、変わってしまった夫、この現実を私は受け入れなければならない。犯してしまった罪に対する罰なのだから・・・


浴室に行き、シャワーで身体を洗う。

股間に手を伸ばし、中を掻き出すように強く洗う。股を広げ無様な格好で後悔に塗れて、少しでも罪を洗い流したくて、洗っているのに・・

変えられてしまった身体はその行為にすら快楽を感じてしまう。

余りにも自分が惨めで、涙が止まらなかった。


リビングに戻ると、まだ夫が起きていた。

身体を洗い終えた事を伝えると、夫に俺はリビングで寝るから、お前はベッドで寝ろと言われてしまった。

本音は一緒に寝たかったがそれは言えず、せめて夫にはベッドで寝て欲しいと伝えた。


「お前の匂いを嗅ぎたくない、いいからお前がベッドで寝ろ。」


また自分の罪を再確認してしまう・・・

私はただ「ごめんなさい」としか言えず、寝室に向かった。


ベッドに横になる。何度も夫と交わったベッド、私の過ちが無ければ、今だって夫と一緒に寝れていたはず。優しく抱かれ、私の身体はそれで満足していたはずなのに・・・


「ゔぅ・・、ひっぐぅ・・、うわぁ゛ぁぁ」


失ってしまった幸せだった日常と未来を思い、嗚咽を漏らしてしまう。


明日私は、夫との思い出が詰まった家で、このベッドであの男に抱かれなくてはいけない。

想像して吐き気を催してしまい必死に抑える。


「ゔぅ、お゛ぇ~・・、うぅ、もう死にたい・・・」


実際にはそんな選択をすることが出来ない癖に、口からそんな言葉を漏らしてしまう。


私は明日の事、これからの事、楽しかった過去、全てが頭の中でぐちゃぐちゃに浮かび考え、夜の間は寝る事が出来ず、朝方になって気を失うように眠りに落ちてしまった。



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