第4話
*****
「それでね今日…男に・・言われたの・・・
『挿れて欲しかったら全裸で土下座してお願いしてみろよ』って笑いながら・・」
「それで土下座したのかよ?」
「ううん、しなかった。本当よ。頭にあなたの事が過ぎったの、きっと偶然なんだと思う。でもそれをしてたら・・、もう私は終わりだったと思う。」
内心、腑が煮えくり返っていたが、冷静なフリをして言った。
「しても、しなくても俺は変わらなかったと思うけどなw」
ユリはもう一度裸で土下座をしながら言った。
「あなたからしたら、そうかも知れないけど・・・私はこんな事をして、あなたを裏切って、快楽に溺れて・・最低な女だけど、まだあなたを愛してるの。心は本当にあなただけなの・・・。」
「だから許してくださいって言いたいのか?」
正直馬鹿な女だと思う。許す気なんて無い。
全てが今さらだ。
「ううん、許してなんて言わない。私の一生を掛けて償わせて欲しいの。あなたに尽くさせて欲しい。私はあなたの奴隷でもいい。」
償う?どうやって償うっていうんだ?
俺が失ったのは信頼していた妻、幸せだったであろう未来、それに俺の男としての尊厳だ。
それの代償になるモノなんか無い。
尽くすって一方的に尽くされて幸せな訳ないだろう。お互いに相手に尽くすから幸せなんだ。
しかし俺はユリに対して、尽くしたいと思う程の価値観を感じなくなってしまった。
「なぁ、俺が何を言っても、お前は俺を信用出来るのか?」
「えっ、うっ、うんっ!まだ私が・・、あなたの側に居てもいいの・・?」
「俺を信用するというならさ・・、明日お前の浮気相手をウチに呼べよ。」
「わ、分かりました。すぐに連絡するね。」
「あぁ勘違いするなよ。話し合いじゃない。俺は居ない事にして、いつも通りに振る舞って家で浮気相手に抱かれろよ。」
「えっ、そっそんな・・・むっ無理だよ…」
「別に今まで散々浮気相手に抱かれてたんだ。今さら1回増えようが関係ないだろ。」
「だっ、だけど・・・」
「お前達の行為を録画して、それを証拠に浮気相手を訴える。今のところ、今日俺が撮った写真しか無いからな。せめて慰謝料くらいは取らなきゃ、俺の気が済まない。」
「うっ、そっ、そうだよね・・・」
「嫌なのか?」
「待っ待って!・・浮気相手として訴えるなら私のLIMEに残ってる画像とか動画じゃダメかな・・・」
「そんなのまであるのかよ・・。携帯を貸せ、その画像と動画は俺も念の為持っておく。」
「はい…」
俺はデータを携帯に移し替えた。
胸糞悪い写真を見て、イライラする・・・
「俺は明日お前に浮気相手に抱かれろって言った。それはこのデータがあろうがなかろうが関係ない。俺の言う事に従うのが嫌なら、俺が信用出来ないなら、もうこの話は終わりだ。今すぐ荷物をまとめて出ていけ。」
「えっ、そんなっ!・・わっ…分かりました・・今からLIMEで連絡します…明日の昼くらいで良いですか?」
「あぁ、ちゃんといつも通りにやれよ。」
「はい… あっ、あの・・・今日…私の事抱いて貰えませんか?」
「はぁ⁈嫌だよ、今日知らない男に抱かれて来た汚い身体なんか抱ける訳ないだろ。とりあえず少ししたら今日はもう寝るわ。お前は風呂でも入ったら?」
俺は今までずっと・・、自分自身で忌諱していた部分を我慢しない事に決めた。
もうこの先、望んでいた未来は手に入らない。
ならもう全てがどうでも良い。残りはどうせオマケの人生だ。
「ごっ、ごめんなさいっ!分かりました。・・おやすみなさい…」
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