十三
演奏会の余韻に浸りながら、俺は早々に音楽準備室へ戻っていた。指揮者とはいえ、吹奏楽部の部員としかほとんど面識が無い人相の悪い男が、その場に留まっても仕方無いと思ったからである。奏者達はというと、お互いを称え合ったり聴衆に感謝を言ったりと、まともに振る舞っていた。俺としてもできる限りのことはしたつもりである。あとはノルマである部員二十名の獲得が達成できるよう祈るしかない。
指揮棒をケースにしまう。パチンという金属音がやけに大きく響いた。今日はもう合奏練習をしない予定だ。どうせ土、日も練習がある。あんなコンサートを見せられては、その後にもう一度気を取り直して合奏練習などできない。初めて会ったときは悲劇的で終末感すら漂わせていた彼らが、聴衆と一緒に楽しみながら演奏会を成功させたのだから、この一ヶ月の成長具合といったら凄まじいものがある。
「――どうしてあなたは輪に加わらないんですか?」
目を閉じて椅子に座っていた俺に、質問を飛ばす者がいた。
「逆に、お前はどうしてこんなところに来たんだ?」
声を聞いただけで誰なのか特定できた。薄目を開けると、お嬢様然と佇む少女が困惑した表情で俺を見つめている。
「聞きに来てくれたんだな。ありがとう」
「そんな、お礼なんて……」
いっそう困ったような顔をするのは、吹奏楽部から逃げ出して岩戸に閉じこもった天照――もとい、美月であった。
「萌波、頑張っていたよな?」
「……」
「じゃあ、演奏はどうだった?」
「……」
「お前、わざわざこんなところまで何しに来たんだ」
称賛も批判もせず、迷子の子どもみたいに立ちすくんでいる美月は沈黙を貫いた。素直じゃない奴だ。つい数日前に買った携帯電話をポケットから取り出した俺は、ある人物へメッセージを送る。
「あなたが萌波ちゃんを変えたんですか」
「変えた、なんて烏滸がましい。あいつは自分で変わったんだ。今日も本番前はびくびくしていたしな」
「あなたはいったい何者なんですか?」
「ただのOBだ――」
「あんな演奏する先輩達なんて見たこと無かった!」
急に大声を出されたので耳鳴りがする。
「萌波ちゃんも、もう変わっちゃったんだ……」
「そんなことを言いに来たのか?」
茶化すつもりは毛頭無いけれど、ただひたすらに困った様子の美月が何を考えているかなど、わかる由もなかった。
「……楽器を取りに来たんです」
「今さらどうして?」
「もう私には居場所が無いからですよ!」
涙混じりに美月が叫ぶ。
「そうか。それは残念だな。……萌波はどう思う?」
「えっ」
驚いて目を見開く美月。その視線の先には、先ほどメッセージで呼びつけた萌波がいた。肩で息をしながら美月を睨んでいる。
「また逃げるの?」
「あ、あ……」
普段の両者とは真逆のやり取りに、俺が介入する隙など無い。
「美月ちゃんは、どうして吹奏楽部に入ったの? 私が誘ったから、ってだけ?」
「……」
「私のことが嫌いになったんでしょ? なんで退部届を出さないの? 私達が消えるのを待つなんてまどろっこしいことをするのはどうして?」
「……うるさい」
「そこまでしてしがみついてたのに、今日の演奏を聞いただけで全部投げ出しちゃうの?」
「黙って!!」
マシンガンのように容赦無く質問を続ける萌波に、堪えきれなくなった美月が金切り声を上げた。さらに追撃するかと思われた萌波がそのまま黙ってしまったため、室内にはなんとも言えぬ沈黙が漂う。
「……もう、いなくなるんだからいいでしょ? 私のことなんか忘れて、残った時間を楽しく過ごせばいいじゃん」
自暴自棄になった美月のもとへ、音もなく忍び寄る萌波。その瞳には一筋の光も差していない。玲香もそうだが、ここの部員は時々アサシンみたいな行動をする。吹奏楽部としては一ミリも必要の無いスキルである。
「ひっ」
一瞬で距離を詰められた美月は情けなく悲鳴を上げた。
「それ、本気で言ってるの?」
ブラウスの襟に掴みかかる勢いで萌波が詰め寄る。
「本気だよ! 今さら戻れる訳無いでしょうが!」
……ついに美月の本音が飛び出した。
「へえ。やっぱり戻りたいんだ」
すかさず萌波が追求する。どうでもいいが二人の顔が近過ぎて目のやり場に困る。
「戻りたいなんて言ってない! 揚げ足取らないで!」
余裕の無い美月は即座に反論したが、萌波の目を直視できない。
「今日の私、どうだった?」
「そ、それは……」
唐突な萌波の質問は、さらに美月を困惑させた。昼休みの俺と美月の会話について、萌波には何も話していない。だが、開演前に美月が何を考えていたのかなど、萌波にはお見通しなのだろう。
「……あんなの、萌波ちゃんじゃない」
負け惜しみのような言葉を美月が絞り出す。あんなの、とはずいぶんな言いようだ。
「うん。普段もあの調子で過ごせって言われたら自殺する」
どれだけ嫌だったんだ。
「でも、あの瞬間なら別。いつもと違う自分になれたの。今まで味わったことが無い感覚だった」
「なんでそんな簡単に変われたの……」
「――簡単?」
ほんの少し戻りかけた萌波の瞳の光が、すっと消える。
「簡単な訳無いじゃん! めちゃくちゃ緊張したに決まっているでしょ!?」
激しく両肩を揺さぶられ、美月はひたすら怯えていた。
「私達はそもそも聞いてくれる人のことなんて何も考えてなかった。あの昼休みのコンサートもそう。だから見放されたんだよ」
俺は当時の演奏を聞いた訳ではないが、きっとひどい演奏だったのだと思う。街中で大音量のBGMを撒き散らしながら走行する車と大差無い、自己満足の雑音である。昼休みという安息の時間を毎日邪魔されるのだから、校内での印象が悪くなって当然だ。
「美月ちゃんは『楽しければいい』っていつも言ってたよね? そんな自分勝手な演奏を、誰が喜んで聞くの?」
「でも、その頃は萌波ちゃんも先輩達も、つらそうに演奏していたじゃない! 奏者ですら楽しんでいないんだから、お客さんが嫌になるのは当たり前でしょ!」
「そうだよ。だから変わるしかなかった。今までの自分では考えられないテンションで司会をした。他のみんなもそう。私と似てあんまり表に立たない優一君だって、あんな素敵なソロを吹いたでしょう?」
「そ、それは……」
「私達は、秋村さんに会って変わったの。バラバラだった私達の音を束ねてくれたんだよ」
美月が信じられないような目で俺を見るが、そこまで大仰なことをした覚えは無い。俺自身が人生の落伍者なのだから、未来ある高校生達の見本となるなんて烏滸がましいと思ったが、口を挟むのも野暮なので黙って二人の会話を聞くことにする。
「もし、まだ音楽が好きで頑張りたいっていう気持ちがあるなら、私は美月ちゃんとまた演奏してみたい」
真剣な眼差しで萌波が言うと、気まずさから視線を逸らした美月は一歩後ずさる。
「そんなこと言われても、もう私は……」
「日向ちゃんが、最後に遺した言葉を覚えてる?」
「……え?」
唐突な萌波の問いに、美月は面食らっている。ちなみに日向の姿はここには無い。まだ講堂にいるのかもしれない。
「『絶対に音楽を続けて』……。その中には、もちろん美月ちゃんも入っているんだよ。私達はその言葉に縛られ過ぎて暴走しちゃったけど」
美月は黙って俯いている。
「もう一度聞くよ。美月ちゃんはどうして吹奏楽部に入ったの?」
「……萌波、ちゃんが」
「え?」
「萌波ちゃんのせいだよ!」
美月が叫んだ。まるで萌波が悪者だが、当の本人は反論することもなく優しい目をして美月を見つめている。
「私以外とはまともに会話もできなかった萌波ちゃんが、中学で吹奏楽を始めたらどんどん顔つきが良くなっていって。毎日楽しくて仕方が無いって感じだった。相変わらず友達はいないみたいだったけど、私がいなきゃひとりぼっちだったくせに……」
今度は段々と美月の瞳から光が消えていく。
「萌波ちゃんのパパとママも演奏会の後にはすごく幸せそうで。ずっと羨ましかった。私の萌波ちゃんを奪った音楽なんて、大嫌いだった」
娘が在籍しているにも関わらず吹奏楽部の対外活動を禁止した美月の父親とは対照的な話だ。そもそも汐田は娘への関心が薄いように見える。きっとそれは幼い頃からだったのだろう。美月は、まるで自分こそが萌波の唯一の理解者だと思っているのだろうが、事実は真逆なのかもしれない。だからこそ「私の萌波ちゃん」などという言葉が自然に出てくるのだ。
「悶々としたまま高校に入学した私に、萌波ちゃんは言ったよね。きっと楽しいから美月ちゃんも一緒にやろうって。だから仕方なく入ったのに……」
それまでろくに目を合わせなかった美月が、萌波を鋭く睨みつける。
「楽器は地味なのに難しいし、コンクールにも出られないし、練習中の萌波ちゃんは修行しているみたいに無愛想だし! 先輩は変人ばっかりだし、ひたすら練習、練習だし……。楽しいことなんて一つも無かった」
「……ごめんね。私が深く考えずに誘ったばかりに」
心底申し訳無さそうに萌波が謝罪すると、美月は首を横に振った。
「ううん。私は音楽に嫉妬していたんだ。こんなにしんどいことの方が、萌波ちゃんにとって私よりも大事なんだっていうのが悔しかった。だから、辞めたら負けだと思ってた。でも……」
少し涙を浮かべながら、美月は寂しそうに俯く。
「今日の萌波ちゃんを見て思った。私は萌波ちゃんをあんな風に輝かすことはできないって。だからもういいの。萌波ちゃんも、そこにいる指揮者も、私に諦めさせたかったから演奏会に呼んだんでしょ? それに初心者と変わらない私なんて、いてもいなくても同じ――」
美月が言い終わる前に、パン、と乾いた音が鳴った。頬を庇いながら呆然とする美月との距離をもう一度詰めた萌波が、彼女を叩いた手で両肩を掴む。
「美月ちゃんは全然わかってない!! 今日頑張れたのは、美月ちゃんが来てくれるって信じてたから! 他のお客さんと同じように、美月ちゃんにも楽しんで欲しかったからだよ! 吹奏楽部に誘ったのも、私の一番大事な友達に、私の一番好きなことを好きになってもらいたかっただけなんだよ……」
涙ながらに告白する萌波に、美月は力が抜けたのかその場に座り込んでしまった。彼女に合わせてそっと膝をついた萌波が、彼女を抱き寄せる。
「寂しい思いをさせてごめんね……」
萌波が耳元で呟くと、美月の瞳から涙が溢れた。
――美月がこれまで退部届を出さなかったのは、音楽への嫉妬と対抗心だった。そして、彼女と吹奏楽部を繋ぎ止めていたのが、日向の言った「演奏会が成功すればもっと楽しくなる」という言葉であった。
「私達が新しい吹奏楽部で成功すれば日向先輩の言葉の意味もわかると思ったし、萌波ちゃんもパパも、もう一度私を見てくれるかなって……」
掠れた声で告白した美月をさらに強く抱き締めながら、萌波は「ごめんなさい」と繰り返した。
「――お前さっき、トロンボーンは地味って言ったよな?」
久しぶりに俺が声を上げると、萌波が慌てて美月から離れた。どうやら存在が消えていたらしい。
「……実際、地味じゃないですか。だいたいトランペットの陰にいるし、旋律があってもゴツいし、ホルンみたいに吠えることも無いし。そもそも位置が最後列の端だし……」
美月が理由を羅列した。申し訳無さそうな顔をしているのは、普段嬉々としてトロンボーンを吹いている萌波が目の前にいるからだろうが、その割にはボロクソである。こいつは萌波に興味があるのであって、楽器は二の次のようだ。
「トロンボーンがかつてどんなふうに呼ばれていたかも知らないくせに、よくそんなことが言えるな」
肩を竦めながら俺が非難すると、美月から反抗的な視線を向けられる。
「『かつて』って……。トロンボーンは最近の楽器でしょ?」
「何言ってんだ。めちゃくちゃ昔からあるよ」
「へえ。じゃあ、なんて呼ばれてたんですか?」
「神の楽器」
即答すると、美月だけでなく萌波の目も点になった。
「トロンボーンって、どう考えても唯一無二の楽器だろ。あんなに音程を操作できるのが容易な楽器は他に無い」
スライドの伸縮で音程を決めるトロンボーンは、正確な音程のポジションの把握などは難しいが、調整は他の楽器に比べてしやすい。また、音域が男性の声域に近く合唱の伴奏などに適したトロンボーンは、発明されてしばらくは主にカトリックのミサにおける聖歌などで使用された歴史がある。ちなみに初めて交響曲にトロンボーンが採用されたのは、ベートーヴェンの第五番――『運命』である。
「……逆に言うと、宗教音楽以外で使うのは憚られたんだよ。だから『神の楽器』と呼ばれた。そんな素晴らしい楽器に対して、お前は地味だのゴツいだの世俗的な文句ばかり……」
俺がねちねち文句を言うと、美月はきまりが悪そうに自らの楽器のケースへ目を向けた。
「もしお前がトロンボーンの本当の魅力を知りたいなら、目の前の先輩と音楽を続けなさい。ここで辞めたら、その子も寂しがるだろ」
美月のことを待っていたのは萌波だけじゃない。数ヶ月も放置されていた彼女のトロンボーンも、再びステージに上がることを待ちわびていることだろう。
「その楽器、たしかお父さん――校長先生が買ってくれたんだよね?」
萌波が問い掛けると、美月は頷きながらケースに触れる。
「やりたいって言った時はびっくりしてたけど、嬉しそうだったな、パパ。そか、私は本当に……」
一つ息を吐いて立ち上がった美月が、そのまま俺の目の前にやって来る。
「いろいろと失礼を働きました。すいません」
「俺は失礼をされても文句が言えない人種だから、謝らなくてもいいよ」
プライドの欠片も無い返答をすると、一瞬驚いた顔をした彼女から笑みが零れた。
「――あんた達、何してんの?」
ほんの少し和やかな空気が流れたと思ったのに、そんな雰囲気をぶち壊すような機嫌の悪い声が入口から聞こえた。
「……淑乃先輩」
「萌波が帰って来ないから何かと思えば……。あんた、またうちらを引っ掻き回しに来たの?」
「淑乃ちゃん、やめて」
敵意剥き出しの淑乃の前に立ちはだかったのは萌波だった。
「美月ちゃんは今日からまた復帰するから。淑乃ちゃんも先輩らしくして」
「……あっそ」
素っ気ない態度の淑乃はおおよそ先輩とは呼べないほど大人げなく、不機嫌なまま踵を返してしまった。
「萌波がさらっと『復帰する』って言ったけど、良いのか?」
張本人の美月は、一度萌波の顔を見てから頷く。
「そうか。だが、いきなり試練だな」
美月のことを快く思わないのは淑乃だけではないだろう。
「みんな、私が体調不良で休むのをよく思ってないので……」
そういえばこいつは体が強くないのだった。
「ちなみに、持病でもあるのか?」
「美月ちゃんは喘息なんです」
その病名を聞いた瞬間、俺の頭にとある人物が浮かぶ。
「――それなら、なおさら練習を頑張れ」
「は?」
美月はきょとんとしている。
「秋村さん、パワハラですよ」
萌波が感情の無い声で俺を糾弾した。
「発作が起きたら楽器を吹くどころじゃないんです。小さい頃は私がよく介抱してました。本当につらそうで、かわいそうで……。そんな子に向かって『なおさら頑張れ』なんて、失望しました」
「待て待て。違うんだよ」
「何が違うんですか? やっぱり全国大会に行くほどだから、昔は病人でもキツくしばかれていたんですか?」
話がどんどんおかしな方向へ向かっている。
「萌波ちゃん、ちょっと落ち着いて」
「でも……」
まだ何か言いたそうな萌波だが、美月に手を握られて渋々黙った。今日の演奏会もそうだが、萌波は美月が絡むと性格が豹変するのかもしれない。もう言うまでも無いが、この二人は親友とかそういう次元の付き合いじゃない気がする。
「肺の機能を鍛えれば、症状が軽くなるかもしれないから頑張れって言ったんだよ。アレルギー性の喘息じゃなければ、だがな」
ようやく本旨を説明したが、二人は頭の上にクエスチョンマークを浮かべている。
「音楽をやる時は基本的に腹式呼吸だから、気管への負担が減るんだ。むしろ何もしないで呼吸が浅いままの方が、発作のリスクは高い」
「……なんでそんなに詳しいんですか?」
「高校時代の部長も、喘息だったからだ」
「部長って、もしかして……」
「ああ。日向のお姉さんだよ」
太陽のように明るい楓花の、唯一と言ってもいい弱点が喘息だった。
「トランペット吹きだったんだが、発作が起きた時のことを踏まえて教えられたんだよ。まあ、実際に発作が起きたことは無かったけどな。だからお前も頑張れ。しっかり楽器を鳴らせば、自然に呼吸を司る筋肉は鍛えられるから」
「そう、だったんですか……」
美月はトロンボーンのケースを抱き締めた。
「逃げちゃって、ごめんね……」
俺と萌波は、目を合わせて微笑む。
「――岩戸に閉じ籠もった天照の興味を引いたのは、
俺が萌波に語りかけると、少しだけ目を見開いた彼女は「そうですか」と短く答えた。ダイナマイトを仕掛けると言った人物と同一には見えない穏やかな表情である。
「まあ、吹奏楽部に光が戻るかどうかは、お前ら次第だがな」
「……はい」
この二人が『神の楽器』を担当しているのは、数奇な縁だと思った。しかし冷静に考えてみると、結局のところ後輩達がストライキを起こした原因の大半が、この二人の痴話喧嘩だったと言っても過言ではない。
そんな事実を前に笑っている場合ではないのだが、丸く収まるのならそれでいいとも思えた。たとえその丸が、不格好で歪だったとしても。
――こうして、一ヶ月近くにわたる勧誘活動が幕を閉じた。桜の花も完全に散り、アスファルトの上には薄汚れたピンク色の絨毯が広がっている。たった一週間程度しか花をつけられない桜の儚さが、最後に一瞬の煌めきを見せた吹奏楽部のイメージと重なった。だが、教師でないどころか手に職も無い俺に出来ることは、もはや祈ることだけだ。
俺がしたことは、そうたいした指導ではない。昔話をして、昔の演奏を聞かせて、指揮を振っただけである。それに、もともと三年生達は血の滲むような努力を重ねてきたのだ。たった一人で音楽室を去った俺のようにはなってもらいたくない。
これまで病的なまでに退屈な日々を過ごしていたのに、不安や焦りを抱えた瞬間、どんどん時間が過ぎていく。少しでも長く音楽に触れていたいと思う俺を嘲笑うかのように、約束の日はあまりにも早く近づいて来るのだった。
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