「なんでもいいですけど、本当に指揮を振ってくれるなら私もありがたいです」

 静寂を破ったのは部長の一声であった。

「まあ、いいんじゃない?」

 生徒指揮者も同調した。幹部連中の意見が一致しているため、他の部員も反発する様子は無い。

「ちょっと待って!」

 絵理子は先ほどから取り乱している。良い気味だ。

「あなた達、なんなのよ! そんな簡単にこいつへ鞍替えするなんて!」

「鞍替えというか……。先生は引き続き顧問をしてくれるんじゃないんですか?」

「嫌よ!?」

「えー」

 部長があまりにも棒読みなので絵理子の発狂具合が際立つ。

 絵理子が指揮を振れないこと、そして演奏会の予定が無いこと。この二点から、おそらくまともな合奏練習をしていないことは容易に想像できた。ずっと個人練習をしていれば腐ってもおかしくないが、よっぽど日向の「最期の言葉」とやらが効いているのかもしれない。しかし絵理子が今やっていることはただの放置であり、飼い殺しである。そんな状態の彼らの前に、曰くつきとはいえ指揮者が現れたのだ。俺が彼らから全否定されることは無いだろうとは思っていたし、絵理子が語った俺の素性も、音楽さえできればそれでいい彼らからすれば本当に些末なことなのだ。俺も高校時代は音楽以外のことなどほとんど無関心だった。絵理子が一般人であればあるほど、俺や部員達の人となりを理解するのは難しいであろう。

 しかし、いつまでも絵理子に対して優越感に浸っている場合ではない。彼女が本物の凶器を所持していることを忘れてはいけない。調子に乗って刺されたら全てが水の泡だ。

「どうしてこうなるのよ……」

 深淵の底にいるような絶望的な声で絵理子が嘆く。そして、改めて一同を見渡しながら口を開いた。

「さっきこの人が言ったように、私が無能なのはみんなもわかっているでしょうけど」

 そんなことは一言も口にした覚えが無い。

「この男にできるのは、せいぜい練習を見ることくらいよ。何か過度に期待をしているならやめておきなさい」

 たしかに現状であれば絵理子の言う通りだ。

「でも先生。このままじゃ私達、この狭い部屋の中で自己満足にもならない時間を過ごすしかないんですよ」

 部長が現実的な意見を述べた。たしかに、演奏会はおろかコンクールの予定まで白紙だというのに地道に練習し続けるのは、冷静に考えなくても狂気の沙汰である。

「そんなこと言われてももう仕方無いじゃない」

 とても顧問とは思えぬ冷たい口調で、絵理子は部長の気勢を削ぐ。

「どうしてですか。まだ私達の頑張りが足りないんですか」

「いや、そうじゃなくて……」

「先生、これからもう一度校長室をしゅうげ――」

「黙りなさい!」

 絵理子が叫ぶと、部長の言葉はぴたりと止まった。無表情の棒読みが急停止するので、ロボットと錯覚しそうだ。

 ……いや、そんなことより最後の言葉が引っ掛かる。「しゅうげ」ってなんだ。俺の乏しいボキャブラリーでは、そこから完成する熟語など一つしか思い浮かばない。さらにおぞましいのは「もう一度」という言葉が挟まっていたことだ。目の前にいる集団は山賊か? 集団じゃなくて軍団なのか?

「あなた達、誰に向かってそんなに偉そうな口を利いているのかしら?」

 ぼんやり考えていると、不敵に微笑んだ絵理子が感情の無い声を出した。こんな教師を野放しにしていいのか、と学校側の管理責任を問いたくなるくらいひどい言い草である。

「音楽室に引きこもって夜遅くまで練習していたあなた達に付き合わされたのは誰? 目を離した隙に占拠した多目的ホールで合奏練習していた事件を収めたこともあったわね。毎日昼休みにゲリラコンサートを開いたせいで食傷気味になった他の教員から事あるごとに嫌味を言われたのも、全員分のスコアを用意するために平日の印刷室を占領したあなた達に殺到した苦情を処理をしたのも、いったい誰だったかしら?」

 指折り数えながら語った絵理子は、一拍置いて叫ぶ。

「全部私よ!」

 一度ヒステリーを炸裂させた後も、彼女はねちねちと苦言を続ける。

「古くなった楽器の買い換えを要求して生徒会室の前でデモしたり、定期演奏会の集客をするために校内の掲示板をビラで埋め尽くしたり。そういえば授業を抜け出して、音楽準備室で延々と課題曲を聞いていたのは誰だったかしら?」

 目の前にいる部長の肩が少し震える。自供しているも同然の彼女を無視して、絵理子はもう一度大きく息を吸い込んだ。

「そんなことばっかりしてるから後輩に逃げられるし、周りからも非難されるんでしょうが! どうしてあなた達が被害者面をしているのよ!」

 今日一番の怒鳴り声に、さすがの部員達も驚きを隠せずにいる。全員「こんな絵理子先生は知らない」という顔である。

「そもそも学校側が演奏活動の自粛を決めたのは、校長へ殴り込みに行ったことが原因でしょう!? それなのにさっき、もう一度襲撃しようって言いかけなかった!?」

 やっぱり「襲撃」だった。なんて血生臭い奴らだ。

「どう、恭洋?」

 ぜえぜえと息を吐く絵理子は、突然俺に話を振る。

「どう、って言われても……」

「イカれているでしょう、この子達」

 絵理子は笑みを浮かべているものの、もはやその目は猟奇的と言えるほど不気味であり、これまで相当ストレスを溜め込んでいるのが窺えた。絵理子の述べた事柄が全て事実だとしたら、この子達はたしかに制御不能の迷惑集団である。不可抗力的に顧問となった絵理子が、彼らに振り回され続けただろうことは想像に難くない。というか、そこまで部活に打ち込んでいたなら上達するに決まっている。

 一同は未だに呆然としていた。おそらく絵理子がここまで感情を表に出したことがこれまでに無かったのかもしれない。だが、彼女は彼女で自らの不甲斐無さを痛感し、部員達を咎める資格が無いと思っていたのだろう。

 そんな絵理子は、今はすっきりした顔をしておりしばらく口を開く様子は無い。原因はどうであれ生徒に八つ当たりする教師の図というのはコンプライアンス的にまずいのではないかと思ったが、俺は皆が萎縮し大人しくなっている状況を利用することにした。

「……君達みたいに本気で何かに取り組める人間は凄いと思うよ」

 素直な気持ちを吐露する。

「そこまで君達を突き動かすものは、いったいなんなんだ?」

 人間にとって最も難しいことの一つが、モチベーションを保ち続けることだと思う。ただ「好き」なだけでも飽きが訪れるのだ。ここにいる全員が修行のように練習を続ける裏には、よほどの目標ややり甲斐があるに違いない。

「それは……」

 生徒指揮者が皆を代表して口を開けたが、すぐに黙ってしまった。

「絵理子から聞いたんだが、半年ほど前に、その……。不幸なことがあったらしいな」

 もちろん日向の件だ。名前を出さずとも、皆は即座に察したようだった。久しぶりに日向の方へ視線を向けると、緊張した面持ちで皆を見つめている。

「その子のために、こんなに頑張っているのか?」

 俺は先ほど絵理子が暴露した事実は聞かないふりをして、まずは彼らの努力を認めることにした。実際、演奏技術はとんでもなく高い訳で、それについて評価するのは甘やかしではない。

「当然、それもあるけど……」

 生徒指揮者が歯切れ悪く答える。俺としてはもう少し部員達に質問したいところであったが、いきなり「日向が死んだ時に何を言われたのか」などとストレートに聞けるはずも無い。絵理子すら知らなかった件を俺が尋ねたところで、不信感が募るだけだ。歯がゆいが、ここは生徒の反応を見ることにする。

「……私達には音楽しかありませんから」

 部長が言葉を受け継いだ。そのセリフを肯定するように、一同は俯いている。

「それはなんとなく察するけど」

「勉強や運動はできないし、友達もいません」

 なんてことないように部長が自白した。中身が悲しくていたたまれなくなってくる。

「みんなの前でそんな自傷行為みたいなことしなくても……」

「いいんです。だってみんなそうですから」

「は?」

「ここにいるみんな、そういう人間です」

 つまり、本当に音楽しか取り柄のない人間同士が、なんの因果か寄り集まって一つの集団になったとでも言いたいのだろうか。

「秋村さん。あなたが過去にいろいろあったように、私達にも問題があるようです。それでもいいですか」

 この期に及んで「あるようです」と、あくまで自分達の行動が正当だと考えている部長には若干引いてしまったが、彼女達のイカれ具合に関してはおおよそ俺の想定内だ。

「そんなこと聞かれるまでもないよ。指揮を振りたいと言った俺の意思は、その程度で無くなるものじゃない」

「そうですか」

 相変わらず淡白に部長が答えた。

 とはいえ、いまだに彼女達がなんのためにここまで部活にこだわるのかがわからない。他にやることがないから音楽をやっています、という高校生らしからぬ色褪せた理由で活動を続けているだけであれば、俺が関与しても意味は無いだろう。簡潔に言えば、それは「惰性」である。しかし少なくとも音楽をする以上、誰かに聞いてもらいたいとか、評価されたいという当たり前の願いは持ち合わせているはずなのだ。

 高校時代の俺は、誰にも見向きをされなかった過去から解放されていた。関わった者が不幸にならないという初めての経験に、浮かれていたのだ。人間の自己顕示欲というのは素直なもので、俺はそれまでの努力を認めてもらえると信じて突っ走った。自分の演奏で観客が感動し、拍手を送られたいという欲望に支配された当時の俺は、音楽のことしか眼中になかった。

 目の前の彼女達もそうなのだろうか。俺は一人だったから、当時も「変わった奴がいるな」と思われるだけで済んだ。だが今の三年生達は集団で事を起こしてしまった。それが原因で部活存亡の危機に瀕していると推察するのは、さして難しいことではない。

 高い評価を得たいがために行動した結果として評価者に見向きもされなくなったのだとしたら、なんという皮肉だろう。問題ばかり起こして親に愛想を尽かされた子どものようだ。世間一般ではそういう子のことを「手に負えない」と表現する。とくに面倒なのが、彼女達は自分が間違っていると一ミリも考えていないということだ。

「……そうやってまた私は除け者なのね」

 しばらく大人しかった絵理子から、耳に入るだけで呪いに感染しそうな暗い呟きが聞こえた。すると彼女はふらふらと廊下側の出口へ向かい、そのまま退室してしまった。様子を見ていた日向の姿も消える。絵理子を追いかけたのだろう。

 俺は部員達に向き直った。

「今日は顧問と話もつけていない状態でいきなり現れて申し訳無かった。でも俺としては、このまま吹奏楽部が消滅するような事態は見過ごせないと思っている。十年前に一度、この部をぶっ壊した張本人が言っても説得力は無いかもしれないがな……」

 自嘲気味に笑った俺へ、言葉を掛ける生徒はいない。

 五線譜が書かれた黒板の上の時計に目を向けると、時刻が昼前であることを示していた。

「いつもは何時まで練習しているんだ?」

「休日は、今は原則七時です」

「……昔は?」

「とくに終了時間は設けていませんでした」

 ストイック過ぎる。

「じゃあ、まだ今日も時間はある訳だな」

 俺は一度深呼吸した。

「絵理子のことは俺がなんとかする。君らももう一度、三年生として最後の半年間をどう過ごしたいか考えてみてくれ。それから……」

 たまたま目の前に置いてあった、部長の譜面台に乗った楽譜ファイルを拝借する。パラパラとめくると、とある楽曲が俺の目に留まった。

「『オーメンズ・オブ・ラブ』って、みんな練習しているのか?」

「そりゃ、まあ……」

 サックス吹きの副部長が答える。

 この楽曲は、伝統的に翡翠館高校吹奏楽部のコンサートのアンコールに演奏されていた。今もそうであるなら、三年生も一通りは合奏できるだろう。

「ためしに、君達の音を聞かせてくれないか?」

 俺からしてみれば軽いお願いだったのだが、それを口にした瞬間、明らかに皆が緊張した。

「……悪かった。無理強いはしないよ」

「やります」

 諦めようと指揮台を下りかけた俺を部長が止める。

「他の皆もいいのか?」

 俺が問い掛けると、一同はぎこちなく頷いた。

「じゃあ、各自音出しとチューニングをしてくれ。五分後に戻る」

 そう言い残し、俺は一度指揮台を下りて音楽準備室へと向かった。その背後から早くも各楽器の音が響き始める。チューニング一つを取っても、このバンドのレベルが非常に高いことが窺えた。音は真っ直ぐ伸びて雑味が無く、音程も正確だ。

 そんな部員達を尻目に、俺は楽器庫の棚から木製のケースを引っ張り出した。少し埃が舞う。三十センチほどの縦長の箱を開けると、若干色褪せた指揮棒が収まっていた。代々の生徒指揮者が使っていたものだ。

「またこれを振る日が来るとはな……」

 つい数日前には自宅のベッドの上で死にかけていたというのに、人生はわからないものだ。

 再度音楽室に戻り指揮台の上で左手を挙げると、すっと音が消える。ほんの少し残った余韻すら心地良い。このバンドの実力は本物だろう。握った指揮棒のコルクの感触が懐かしい。全員、俺に注目している。

「よろしくお願いします」

 俺が手を上げると同時に、皆が楽器を構える。

 ――この時の俺は、一つだけ思い違いをしていた。

 音楽に限らず集団で一つのモノを作り上げようとするとき、実力があるのに人間関係が崩壊しているのは最も「もったいない」ことである。実力は無いけれど人間関係が良好なだけなら「馴れ合い」だし、両方ダメであれば「どうしようもない」状態だ。

 だから、実力さえあるのならばなんとでもなるのではないか、と思っていた。しかし、そもそも人間関係を構築することすらまともにできなかった俺の考えはあまりにも浅はかであったと、すぐに思い知らされることとなる。

 この『オーメンズ・オブ・ラブ』は、日本のインストゥルメンタルバンド、T―SQUAREの楽曲であり、吹奏楽編曲版は同じく人気の高い『宝島』とともに演奏会のプログラム常連の曲だ。タイトルの通り「恋の予感」を漂わせながらアップテンポのリズムに乗って駆け抜ける爽やかなメロディーは、新しい生活が始まる春にぴったりである。人並みの感性があれば、譜面を追っていくだけで勝手に盛り上がるような名曲中の名曲だ。

 だが、イントロの段階で俺の腕は鉛のように重かった。久しぶりに指揮を振るので体が感覚を忘れていたせいもあるだろうが、原因の大半は俺ではなく目の前で繰り広げられる演奏そのものにあった。

 ――暗い。

 とにかく暗い。元の譜面を全てマイナーコードに書き換えたのかと錯覚するほど真っ暗だ。

 表現も全く無い。譜面の音型の上下すら感じられない。まだ素人の唱えるお経の方が抑揚に富んでいる。

 イントロを経て木管楽器のメロディーラインが始まるまでの加速感も希薄で、無理矢理テンポを上げようとするドラムとの温度差で風邪を引きそうである。自然と手拍子が起こる曲調なのに、こいつらの演奏を聞いていると合掌したくなる。

 金管楽器のファンファーレも全然キラキラしていないというか、錆びている。ベースの伴奏も泥沼の中を歩いているかのようにもたもたしていて、こいつらのせいでとにかく指揮棒が重い。

 何よりも気が狂いそうになるのは、こんな暗黒みたいな演奏なのに音色と音程は全く問題無いし、完璧に譜面を追えているのだ。こんな演奏は、後にも先にも聞いたことが無い。

 楽曲が終盤に差し掛かっても、演奏は相も変わらず平坦に進行していく。起伏が皆無であるだけならまだしも、雰囲気が暗澹としているのは救いようが無い。木管楽器のトリルもまるで悲鳴である。俺の頭の中には、何故かピカソの「ゲルニカ」が浮かんでいた。意味がわからない。

 再びテンポが落ちイントロのメロディーが奏でられるが、せっかく主役が回ってきたというのに中低音の楽器達も真冬の日本海みたいな冷たい音しか出さない。そのまま無し崩し的にフィナーレへ突入したのだが、本来なら華やかであるはずの最後の音も、「ここからが終わりの始まりだ」と告げる魔王の背景で流れていても違和感が無いくらい絶望的である。いや、そもそも最初から最後まで華やかでなければおかしいのだが。

「……」

 黙ったまま指揮棒を持つ手を下ろすと、皆も揃って脱力した。そのまま室内には気まずい沈黙が流れる。

 こいつらと俺は、たしかに似ている。音楽にしか生き甲斐を見出せないことも、それ以外が壊滅的であることも、結果的に孤立して疎まれていることも。とはいえ、生み出す音楽に関しては決定的に違うと言える。

 ――こいつらには、誰も見えていない。指揮者も、聴衆も、隣にいる奏者ですら視界に入っていないのだ。

「お前ら、今の演奏はどういうつもりなんだ?」

 俺の漠然とした問いに要領を得ないのか、返事をする者はいない。

「おい部長」

「はい」

「この曲のタイトル、どういう意味か言ってみろ」

「……」

 本気で知らないのだろう。

「恋の予感、だよ。でも今のお前らはいったいなんだ? 『迫り来る死!』って感じだったわ!」

 俺がつい声を荒げると、この期に及んでもそれなりの評価を受けられると思っていたのか、副部長が眉を顰めた。

「楽譜通りに吹いただけですし、久しぶりの合奏だったんですよ? そこまで言わなくてもいいじゃないですか」

 俺は頭を抱えた。

「なんでこの曲を楽譜通りに演奏していて、指揮者の頭の中に『ゲルニカ』が出てくるんだ? 序盤からパニックだったんだけど」

「……前衛的ってことですか?」

「褒めてねえんだよ!」

 今さらながら、もしこんな呪いみたいな演奏を日常的に絵理子が聞いていたのであれば、手に負えないのもやむを得ないと思った。それを是正するのが絵理子の仕事と言えばそれまでだが、生徒指揮者を務めていた俺ですら消化しきれずに吐き気がするほど暗い演奏なのだから、常人なら鬱になってもおかしくない。

 俺はほんの数秒だけ目を閉じた。この先の身の振り方を考え、決断する。

「……とにかく、参考にはなった。お疲れ様」

 血の上った頭を無理矢理鎮めて、俺は指揮台を下りた。

「お前ら、いったいこの先どうしたいんだ?」

 部員達の空虚な双眸が一点に俺を見つめている。

「……昼過ぎにはまた戻る。ちゃんと絵理子を連れてな。それまでに、今後のことをしっかり考えておいてくれ。指揮者がいればそれでいい、なんてことはないだろう?」

 俺はそう言い残すと、先ほど絵理子が出て行ったのと同じ扉から廊下へ出た。

 向かうのは彼女がいるであろう第三職員室。

 ――ではなく、部員達がかつて襲撃を仕掛けたという部屋。

 校長室である。

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