暇を持て余した魔王の勇者観察

しろめし

第1話 魔王そして暇人


 我は最強にして最恐。魔族の王にして世界を征服せんとするもの。『魔王』である。


 魔王である我は強くカリスマがあり、魔族を率いている。

 そんな我が配下の魔族は今日も今日とて人類と争っている。

 だがその魔族の王である我は


「暇だ」


 非常に暇だった。



 今日の我の一日はこうだ。

 朝、起きて着替えて私室からでる。玉座の間に行く。道中配下にヘコヘコされる。玉座の間に入る。玉座に座る。


 で終わりだ。ずっと椅子に座る毎日。食事とお手洗いに行くときはさすがに動くがほとんど動かない。


 我が魔王しているのは会議に出るときと人類を攻撃するときぐらい。



 夜になり外が闇に包まれたら痛い腰を持ち上げ私室へと向かう。お風呂に入り、着替えて寝る。


 ニートもビックリの毎日だ。

 魔王である我はそんな日々を送っていた。


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 ある日の午後

 我は玉座に座り、服のシワの数を数えていたら


 バン


 と扉が開けられ


「た、大変です、魔王様」


 といい男の魔族が入ってきた。とりあえず話しかけるか。


「貴様、何用で来た」

「ゆ、ゆ、ゆ、勇者が、人類に勇者が現れました!」

「む、勇者だと」


 勇者といえば魔族を殺戮し、我が首を狙う不届き者か。


「レイヴァント王国にて勇者が誕生したようです」

「ほう、そうか」

「魔王様、どういたしますか。潜入部隊に暗殺を――」

「いらん」


 簡潔に我はそう答えた。

 勇者誕生か、なかなか面白そうではないか。我は不敵に笑った。


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 勇者誕生が報告された翌日、我は城に併設されている教会へと来ていた。

 目の前には邪神像があり、不気味に笑っている。そんな像に向かって


「おい」


 と話しかけた。


「おい、邪神」

『ん?おぉ久しぶりだな、魔王。元気してたか』

「ふむ、気分はさほど悪くない。それよりもだ。とあるものが欲しい」

『ふーん、とあるものとは何だい♪』


 邪神の声は弾んでいた。この話し合いが楽しいのだろう。


「それは……」

『それは?』

「遠隔で対象を見ることが出来る道具だ」

『ふーん』

「無理か?」

『いんや、無理じゃあないよ。そのくらい余裕さ余裕。お茶の子さいさいだよ』

「ほう、ならばいい、すぐ作ってくれ」

『まぁいいけど。何に使うんだい?もしかして覗き?』

「はぁ、そんな訳なかろう。勇者だ勇者」

『えっ、勇者。へぇ〜もうそんな時期か。魔王もやんちゃし過ぎたってことだね』

「やんちゃとは何だやんちゃとは。まぁいい早く頼む」

『おk、分かった』


 といった瞬間、邪神像がまばゆく輝き……


 魔王の目の前にメタリックなゴーグルがあった。


「何だこれは」

『あ〜それはね、地球という世界にあるものを参考に創ったものさ。VRってヤツだよ』

「ほう、VRか」

『これを被ってゴーグル部分を目に当てると好きな対象を相手にバレず見たり聞いたりできるよ♪』

「感謝する」


 といい我は教会を後にした。勇者がどんなやつか、楽しみだな。













『ふふっ、魔王が勇者に対してどんな反応をするのか楽しみだ♪』



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