第4話

 なつみの後ろを歩く。引き締まった体躯は鍛えすぎというわけではなく、ちょうどいい具合に健康体だ。スベスベとした素材のスパッツがパツパツに張り付いている太ももは綺麗な曲線美を描いている。

 短く切りそろえられた髪で隠されていない首筋はうっすらと汗ばんでいた。何か運動でもしてたのかな?


「ここ、今日は空いてるんだぁ~」


 そう言ってなつみが指さしたのはどこかの部室、何か部活動に所属しているのだろうか。どちらにせよ今日はテスト期間中で部活動はないはずだが?


 そんな俺の疑問を他所に部室に手招きするなつみにホイホイとついて行ってしまう。あれ? なんかデジャブが……


 カチャリ


 俺が部室に入ると後ろ手になつみが部屋の鍵を閉めた。

 先ほどの嫌な感じが思い出される。いやいや、まさかそんな普通だろ? 変なことは起きないはずだ。


 俺はゆっくりと後ろを振り返る。そこにはぎらついた目で俺を見るなつみがいた。


「なつみ……さん?」


「ゆ~すけ~今日は何して遊ぶ~?」


「な、なんだろうね~」


 ゲームか? いやそんな雰囲気じゃない。明らかにまずい流れだ。

 主導権を相手に握られている。そして逃げようにもドアは塞がれている。窓は……ある!


 俺はなつみを牽制しながらじりじりと後退する。そんな俺の行動を不思議に思ったのか、なつみは首を傾げている。


「どうしたの? 今日はなんだか変だね。でもそういうのも悪くないかも」


「そうか? いつも通りだと思うが」


「ふ~ん」


 よしっ、今だ! 俺は窓に向かって一直線に駆け出す。鍵はしまっているが空けて横にスライドすれば……


「逃がさないよ~」


 なっ! 早い。

 後ろから両手を掴まれ俺は驚愕する。そしてするりと腕が肩口から首へと回され首を締め上げる。その力は簡単には振りほどけるものではなかった。


「く、苦しっ」


「え~今日はこういうプレイがしたかったの~? いいよ付き合ってあげる」


 チョークスリーパーが俺に決まっている。なんだこれは、俺は死ぬのか? 意味わかんねぇよどうなってんだよこれ。

 俺は何度もなつみの腕を叩きタップをするが、一向に緩む気配はない。

 もうだめだ、そう諦めたときすっと俺への拘束は解かれた。


「ヴォ……ゲホッ! おぇ、はぁ……はぁ……」


 俺はその場に倒れこみ咳き込んだ。目がちかちかする。


「だ、大丈夫~?」


 俺を心配するような声でなつみが話しかけてくる。

 大丈夫なわけないだろうが! 何言ってんだお前マッチポンプか!


「だ、大丈夫……じゃないかも。なんで急にこんなことするの」


「ごめんね、ごめんね。ゆ~すけが可愛くてついいじめたくなっちゃったの」


 いやいじめたくなったって小学生か? というかその範囲を逸脱しているというか、まぁ女の子がすることだここは大きな器で受け止めてあげようじゃないか。


「まぁ気にするなよ。今度からは抑えてくれればいいから」


「う~、ありがとうゆ~すけ~」


 そういって座り込んでいる俺をなつみが抱きしめてきた。先ほどとは打って変わって優しい抱擁は傷んだ俺の体に染み渡るようだった。そして非常に嬉しいのが顔に柔らかいものがぐにぐにと押しあてられていることだ。う~ん、大きいのはやっぱりいいな。俺は別に巨乳派と言うわけではないがこの圧倒的な質量は中々お目にかかれるものではない。堪能させてもらおう。


「そうだゆ~すけ~膝枕してあげる」


 なつみは俺を立たせると部室にあった4~5人用の長椅子に俺を寝かせて膝枕をしてくれる。頭に感じる太ももの感触が心地いい。そして眼前には二つの山、眼福である。

 俺が幸せに浸っているとなつみが俺の手を掴みそっと自分の胸へと持って行った。

 

 むにゅ


 強制的に揉まされたなつみの胸は押し返されるような弾力があり、それでいて沈み込むような矛盾を孕んでいた。


「なつみっ!?」


「おわび~」


「そ、そうか」


 にこにことこちらを見て笑うなつみに俺はこの状況を受け入れた。無心になり手を動かす。手のひらには収まりきらないなつみのおっぱいを揉む、揉む、揉む。

 なつみはそれに対して嬌声を上げることもなくただ俺の見てにこにこしている。少し怖い。


「あ~、ゆ~すけおっきくしてる~」


 そりゃ反応もするよ。部屋の中は汗の匂いが充満し、女性特有のいい匂いが拡散している。そして肉欲を満たすような行為を俺はしているのだ。そりゃ大きくもなる。


「そんな子には~えい!」


「うっ」


 なつみはおもむろに俺の肉棒を掴む。急に急所を握られ声が漏れる。


「そんなこには~お仕置きです」


 俺は期待してしまった。馬鹿だった。さっきまで何が起こっていたのかすっかり忘れていたのだ。


「ぎゃぁああ!!」


 思いっきり玉を掴まれた。ころころと撫でるようにではない、潰すのかというくらい強めに握られた。俺は硬直して動けなくなった。そして下腹部にずーんと痛みが広がる。


「やめっ、なつみ、ちょっと、手を、離して」


「え~だってそれじゃあお仕置きにならないでしょ~?」


 なつみの顔は笑っていた。目は……笑っていなかった。

 背筋が凍る。生殺与奪の権を握られているのだ。まずい、非常にまずい。


「あれ? ちっちゃくなっちゃった。ほんと今日は変だね~いつもならカチカチで喜ぶのに」


 はぁ? 何言ってんだ無理無理無理。というか京子もなつみもやべぇんだが? どうなってんだこの世界は。とにかく今がチャンスだ、戸惑っているなつみを見て俺は急いで動く。

 名残惜しい右手を胸から離し、体を撥ねるように飛び上がらせ股間にある手を振りほどく、そして急いで扉を開けて部室から駆け出す。なつみは……追ってこなかった。逃げる獲物に興味はないってか。助かる。


 校庭を抜け校門を通り過ぎ人気のなくなった通学路をひたすら走る。安全な所へ、家に帰ればいいんだ。今日はちょっと色々起こったが、この世界が危険な罠で溢れていることが分かっただけでも収穫だ。


 息を切らして家の近くまで来て、進む足を緩めて息を整えながら歩く。


「はぁはぁ……ふぅ、疲れた……雄介お前どんな生活してんだよ」


 俺は体の主である雄介を訝しんだ。


「雄介今帰ったの?」


 俺の隣の家から葵が顔を出した。

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