第2話
ホームルームが終わって一息つく。それにしても女子多いな~でも名前も分かんないし話しかけるのも難しい。とりあえず無難に過ごすなら誰とも話さなければいいか……
「ゆ~すけ~!」
俺のことを呼ぶ声が聞こえる。まずいぞ、誰だ誰だ、俺は声の主を見る。
金糸雀色のショートカットで目力のある自信の溢れた表情に、たわわに実った果実がついていた。でけぇな、そして鍛えられた体のスカートから覗いているスパッツが似合っている。
「貸してたノート返して~」
「ああ、ちょっと待って」
ノートか、鞄の中に入ってるかな? 入ってるだろ、最悪忘れてたら明日返せばいい。鞄の中を漁ると俺以外の名前の書かれたノートを見つける。名前は……なつみか。
「あった、はい助かったよ」
知らんけど。
「どういたしまして、俺の字汚くなかったか?」
俺っ子!? これはこれで……ありだな! あと中身見てないから知らん。
「問題なかったよ、そんなことないと思うよ」
「へへっ、そう? それじゃあまたね」
「あぁ」
元気いっぱいな笑顔をしたなつみは自分の席へと戻っていた。しかしなつみは葵とは別ベクトルで可愛いな。葵が正統派美少女ならなつみはボーイッシュ美少女だ。くそ、雄介うらやましいぞ。
「まあこれから俺が雄介なんだから役得なのは俺なんだけどな」
誰にも聞こえない声で呟く。それよりも目下の問題がある。どうやら今日からテストらしい。雄介って勉強出来たりするんだろうか、出来るか?
そしてテストが始まった。テスト用紙を見る。
何故か何となく分かる。テストなんて何年振りか分からないけど雄介に残った記憶が俺を引っ張ってくれる。全部は分からないけど平均点くらいは取れそうだ。いや、結構いい点取れそうだな。
俺はとりあえず問題の答えを埋めていく。結局午前中のテストは空欄はなく終えることが出来た。
昼休みになって俺は弁当を食べる。カップ麺じゃない食事はいいな、最近は冷食の弁当は愛がないとか言うけど冷食って普通にうまいし手抜きじゃないと思うんだけどなぁ。
「うまいうまい」
俺は少し涙目になっていると教室に吸い込まれるような黒染めの長髪を靡かせて長身の美人が入ってきた。ほえ~っと俺が眺めているとまっすぐ俺の席に来た。
「テストはどうだった?」
「あぁ、まぁまぁかな?」
「しっかりしてくれよ、この
お、自分で名前を名乗ってくれるのはありがたい。あ、なんかタイの色が違う。上級生かな? ていうか大人っぽいなぁ、とても同じ高校生徒は思えない。切れ目な顔はミステリアスな雰囲気がしてまっすぐ見つめる目に吸いこまれそうになる。
京子がすっと耳打ちするように顔を近づけ来た。
「んっ……また今度、あそこで待ってるよ」
「あ、あぁ」
すごくいい匂いがした。というかまただけど主語を言え主語を、あれとかこれとか言われても分かんないよ。あまり声を大にして言えないことなのか?
俺が疑問に思っていると京子は俺から離れていった。
「じゃあね」
京子は腰まで掛かる長髪をさらりと振り去っていった。うーん、いい女だったな。
その後クラスの女子に京子との関係をいいね~とか話かけられたりした。ちょっとモテてる気分を味わっていると弁当を持った葵が教室に入ってきた。おいおいモテモテだな、気分がいいぜ。
「ご飯食べよ~」
「もう食べてるよ」
「もう、待っててよ~」
「悪い悪い」
葵は空いている机を寄せて隣に来て座った。ちょっと近くない? 別にいいけど。
近くにいた女子は葵が来るとさーっと掃けていった。空気を読んで離れていったようだ。俺と葵ってそういう関係なのか?
「はい、あーん」
は!? こんな衆人環境で? 恥ずかしいんだが?
しかし周りを見ると皆気にした様子がない。これが普通なのか?
それは……ええい仕方がないなぁ。
「あ、あ~ん」
「はい、どう? おいしい?」
「……んぐっ、あぁうまい」
「えへへ」
はにかむ葵に俺の心臓はドキドキと脈打っていた。反則だろそれは。顔真っ赤になってないかな?
俺たちは何回かあ~んをしながら完食した。
「それじゃまたね」
葵は自分の教室へと帰っていった。俺はというと机に突っ伏してニヤニヤしていた。なんていうか、心が癒されるな。こんな甘々な学生生活を送った覚えがない。本命は葵か? なつみと京子とも仲がいいから四角関係にとかになっていなければいいが。そんな甲斐性はないと思いたい。
葵との昼飯で英気を養った俺は午後のテストも順調に解答した。しかし英語だけはよくわからなかった。俺の元の頭が悪いのか雄介も苦手科目があったのか分からないが。他はよさそうだからいいか、一つくらい弱点があった方が魅力あるだろ? 多分。
人間完璧より隙がある方がいいって言うし。
放課後になってこれからどうしようかと頭を悩ます。友好的な関係を築いている女子が3人もいて、特に葵とはいちゃいちゃしててもあんまり何も言われない。このまま生活していても問題はなさそうだけどいきなり違う人になっているというのは怖いんだよな。誰かが目的をもって俺をこんな状況に置いたなら理由があるはずだ。
つまりただ普通に生活していていいのかと言われれば答えはノーだ。
「ただそのとっかかりも分かんないんだよなぁ……」
俺は頬杖をついてため息を吐く。
気付いたら教室にいた生徒たちはほとんど帰っていた。俺も帰ろうと思うと京子が入ってきた。
「ああ、まだいたのか。よかった、これからちょっと付き合ってくれないか?」
「ああ、いいよ」
特に用事もないし、葵も用事があるとかで放課後は一緒に帰らないって言ってたからいいだろう。家への帰り道は覚えているしな。
京子の後ろをついていく。後ろ姿も美しい。背は俺より少し低いくらいで女子としては長身で、葵となつみとは違って所謂モデル体型と言った感じだ。ほどよく柔らかそうな桃のような胸部に今フリフリと動く張りのよさそうな臀部は劣情を誘う。他の生徒と違ってスカートの丈が膝下にありそこから覗く足は色白ですべすべしてそうだ。
「ここ……だ」
ここ? 生徒会室? もしかして生徒会長か?
俺も生徒会員だったりするんだろうか?
俺は京子に促されるままに部屋へと入る。続いて入った京子が鍵を閉めた。それ必要ある?
「やっと……耐えるのに苦労した……あっ」
振り返ると熱を帯びた視線でこちらを見る京子がいた。
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