最終話

 星の海の中、星夜はたった1人でゆっくりと歩いていた


 いつもと違う、真っ白なワンピースに、青いリボンを巻いて


 誰も居ない、ひとりぼっちの空中散歩


 星夜はひたすらに歩いているだけだった


『星海の病』から解放された


 それはよかった


 でも、周りには誰も居ない


 たった1人、取り残されてしまった


 この、広い星の海の中で



 気がつけば歩くのをやめていた


 だって、意味がなかったから


『星海』を渡る


 それは、姉との一つの約束だったから



「お姉、ちゃん…会いたい、よ…」



 ポツポツと大粒の涙が空に舞う


 あぁ、これから1人でどうすれば良いんだろう


 あの国の人は全員、『星海の病』に完全に蝕まれた星夜の願いによって、偽の星空の元となってしまった


 1人取り残された私は、どうすれば良いのか分からない


 何時間も歩いたが、それも意味がなかった


 全てを諦め、自分もこの星の屑になろうとした、その時だった



「何1人で悩んでいるの?星夜」



 声がした


 いつもの、優しい、温かい声が


 勢いよく顔を上げ、そこに居た人物を見た



「お姉、ちゃん…?」



 彼女はにっと笑って、言う



「そうだよ、星夜のたった1人のお姉ちゃんだよ」


「…本当?」


「なぁに?お姉ちゃんを疑ってるの?ヘッドロックしようか?」


「それは…やだ…でも…」


「…はぁ、ほれ」



 彼女は両手を広げた


 星夜は少し戸惑いながらも、ゆっくりと近づき、そして…



「お姉ちゃん!お姉ちゃんだ…!」



 ぎゅっと、星の腕の中に入った


 温かい、いつまでも変わらない、姉の腕の中


 大粒の涙がぽろぽろとこぼれ落ちる



「ふふふ…相変わらず泣き虫だね、星夜は」


「だって…だって…お姉ちゃん…!」


「はいはい。お姉ちゃんはここにいるよ」


「ふえぇぇ…お姉ちゃぁぁぁん…」


「…ごめんね、星夜、最後まで…守れなくって。結局、星夜を苦しませちゃった…」


「そんなのどうだって良いよ…お姉ちゃんは、最後まで私の味方だったもん…!」


「星夜…」



 すると、星はニコッと笑って、星夜の手を引っ張り、走り出した


 勿論驚いた


 躓きそうにもなった


 でも、すぐに立ち直って星と一緒に走る



「さ、一緒に本物の星空を見に行こ!星夜の大好きな金平糖を持って!」


「…!うん!」



 満面の笑みで2人は走る


 後ろを振り返ることなく、夜空に向かって足を前に進むのだった

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