第47話


 これはゲームでも使ったことがある見た目だ。

 名前までは……よく覚えていないが。


 弾数は30発……これだけあれば、群れでくるゴブリンたちを一掃できるだろう。

 ハンドガンよりも反動はあるが、射程も伸びる。近づいてくる前に前のゴブリンを殺せば、それに巻き込まれたゴブリンを仕留めることもできるだろう。


 アンナがゴブリンリーダーたちを狙撃する予定だが、失敗した時や魔物に囲まれたときはこれで応戦できるようにした方がいいだろう。


 ……どうなるか分からない以上、準備は万全にしておく必要がある。

 めっちゃ気分悪いが、アサルトライフルをさらに三つ、召喚しておく。

 全員が装備できるようにな。


「リア……メルトロウたちに、ゴブリンリーダー討伐作戦ができるってこと、伝えてきてくれ……」

「分かったわ」

「わ、私も行きますね。ナーフィちゃんご主人様を見守っててください」

「ん」


 リアとアンナにそちらは任せ、俺はブルーシートを敷いて横になる。

 面倒を見てくれ、と頼まれたからかナーフィが頭を撫でてくれた。


 ……うん、心地いい。膝枕までしてくれ、もうこのまま眠りにつきたいところだったが、リアが顔を覗き込んでくる。

 もう、そんなに経っただろうか?


 体をゆっくりと起こすと、ジェニスとメルトロウがこちらへとやってきていた。

 ジェニスは片手に丸めた紙を持っている。おそらくは地図ではないだろうか。


「おお、シドー。作戦が実行できると聞いたからきたんだが大丈夫か?」

「あ、ああ。一応な」


 さっきよりは、だいぶ体の調子も良くなってきた。

 軽く伸びをしてから立ち上がると、ジェニスが口を開いた。


「これから……リーダーを狙って攻撃を仕掛けようかと思っているが、どういう作戦なんだ?」

「俺たち四人で、こっそりとゴブリンリーダーだけを倒してくるっていう作戦だ」


 今回の作戦は、隠密行動だ。もちろん、ジェニスがいた方がいいのかもしれないが、俺としてはむしろいないほうが自由に戦えるからこのほうがいいと思っている。


「……君たちだけで行くのかい!? 君たちが強いのは分かっているが……さすがにそれは危険だ!」


 ジェニスの言葉に、メルトロウも渋い顔で口を開く。


「若いのよ。ここで活躍して名声をあげたい気持ちはわかるが……生き急ぐんじゃない」

「そういうわけじゃないんだが……今回の作戦は、実際に見てもらった方が早いか。ちょっとついてきてくれ」


 まだジェニスたちは俺たちがどうやってゴブリンリーダーを狙うかを見ていない。

 それを見せれば、隠密行動をする理由もわかるだろう。

 ジェニスとメルトロウが顔を見合わせてから、俺のあとをついてくる。

 再び門に戻ってくると、ストガイがジェニスに敬礼をしている。ジェニスは微笑のみを返し、それからこちらを見てくる。


「それで……ここにきて何をするんだい?」

「あそこに倒れている木々が見えないか?」

「……ん? ああ、見えるけど」


 ジェニスは目を細めながらその木を見ていた。……先ほどの俺たちの狙撃練習で薙ぎ払われた木々たちだ。


「……あれもゴブリンたちの仕業かい?」


 すみません……俺たちです……。


「アンナ。一度、見本を見せてくれるか?」

「はい……! 分かりました……!」


 少し、緊張した様子であったがアンナは俺の言葉に頷き、それからスナイパーライフルを取り出す。

 アンナは慣れた様子でスナイパーライフルを構えている。


「……あの武器はなんだ?」

「シドーが作った魔道具だ。オレも、あんな大きなものをみたのは初めてだけど」

「アンナ、あの倒れている木を狙撃してくれるか?」


 根の部分が射抜かれ、倒れた木を目標にすると、アンナはこくりと頷いてスコープを覗いた。

 俺の指示を聞いていたジェニスとメルトロウが、目を見開いている。


 「まさか、そんなことできるわけがない」。ジェニスはともかく、メルトロウは完全に疑ってみている。

 ――アンナが引き金を引く。

 倒れていた木が射抜かれ、吹き飛ぶ。


「……な!?」


 驚きの声をあげたのはメルトロウだ。ジェニスは、ただただ乾いた笑い声を上げていた。


「す、凄いな……あの距離を、あの威力で射抜くなんて……!」

「こういうわけだ。俺たちなら無理に近づかなくても戦える。あんまり大勢で動くと見つかる可能性もあるし、そもそもゴブリンリーダーたちが村に襲ってくる可能性もある。ってわけで、別行動はどうだ?」


 ここまで見せれば、ジェニスもメルトロウも納得してくれたようだ。

 それまでの疑いの目から、メルトロウは完全に希望に溢れた顔でこちらをみてくる。


「……ああ! これなら、確かに下手な人数を動かすよりも断然いいな。……頼む、この村に力を貸してくれ」


 メルトロウが頭を下げてきて、俺は苦笑を返す。


「ああ、任せてくれ」


 これで、あとはうまく狙撃してくれれば問題ない。

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