第42話
「シドー、ゴブリンたちに違和感はなかったか?」
「いろんな武器を使ってたな」
今までのゴブリンは、武器を持たない個体も多かったし、持っていても太い木の棒とかだった。
なのに、今回戦ったのは、皆石斧や木の槍など、少々加工されたものを使っていた。
おまけに、人間のように連携していて、後衛にいたゴブリンが石を投げるなどしてきていた。
「そうだね……たぶんだが、進化した個体なんだろう。……規模はかなりあるようだし、早めに騎士団がゴブリンの巣を破壊してくれないと面倒なことになりそうだ」
今も、騎士団がゴブリンの巣を破壊して回っているらしい。
だからまあ、俺たちはそれが終わるまでの間、村の警備を行うのだ。
それから、一週間程度、馬車は滞在してくれるそうなので、任務が終わってからDランク迷宮に挑戦する期間もある。
「そうだな。まあ、そっちは騎士団に任せて、俺たちは防衛に尽力すればいいんだろ?」
「……そうだね」
何か思うことがあるのか、ジェニスの思案する表情は変わらなかった。
馬車へと戻ると、先ほどの戦闘についての話がされていた。
「シドーたち、めっちゃ強かったな!」
Dランク冒険者のストガイが笑顔とともに声をかけてきた。
……ジェニスに憧れていた様子の彼は初めこそ俺を恨めしそうに見ていたのだが、今はもうそんな様子はない。
戦闘で力を示せたからだろうか。
「ストガイもゴブリンを吹っ飛ばしてて凄かったな。ジェニスみたいな冒険者に憧れてるのか?」
「……へへ、まあな。オレ、体格もいいし、パワーもあるだろ? だからまあ、タイプにてるだろ? だから……サブリーダーやりたかったんだよなぁ」
がくりと肩を落としているストガイ。変な嫉妬をされたくないので、ジェニスの考えも話しておくか。
「ジェニスは自分と似た考えを持っている人をサブリーダーにしたくなかっただけみたいだぞ?」
「え? どういうことだ?」
「もしも、自分の判断が間違った時に指摘できる人間をサブリーダーにしたいそうだ」
「……なるほど。確かに、そうだな……」
「まあ、だからあんまり気にしなくていいと思うぞ。別に嫌いだからとかじゃないだろうし。それに、サブリーダーじゃなければ、自由に動けるんだし、ジェニスをよく観察していたらいいんじゃないか?」
「そうだな! 前向きに考えるよ」
とりあえず、これで俺に対して敵意を向けられることもないだろう。
「……あんたって、人と接するの得意よね?」
「……そうでもないけどな。たまたま、相性が良かったんだと思うぞ」
むしろ、苦手だと思っているんだけど。
クラスでも基本ぼっちだったしな。友人ができたのは、俺のハンバーガーを求めてきた佐藤くんと田中くんだけだし。
……今頃、二人はどうしているのだろうか。無事であればいいのだが。
それからしばらく問題なく馬車は進んでいき、夕方になったところで馬車が止まった。
ジェニスの指示だ。彼が馬車から降りてきて、俺たちもそれに続く。
「それじゃあ、目標地点に到着したから、今夜はここで野営にするぞ!」
ジェニスの元気な声が響き、俺たちはすぐに野営の準備を開始する。
まずは火だが……これは火魔法が使えるものが準備してくれた。
俺もライターとかは用意していたので、いつでも協力する準備はできていたが不要そうだ。
あとは二人ずつ程度で見張りについて、皆が仮眠をとって夜を過ごし、空が明るくなったら出発する……という感じだ。
食事はそれぞれ持ってきていたものを食べていくというわけで、俺たちも準備していたハンバーガーを取り出して食べていく。
ただし、今回はいつものようにカラフルな包装は外して、タッパーに入れてある。
……いつものように、マッグドナルドからそのまま持ってきました、というのは目立つからな。
「「いただきます……!」」
「ん」
リアとアンナはそう言って、すぐに食べ始めた。
ナーフィも両手を合わせると、パクパクと食べていく。
……相変わらずの速度だ。
三人とも、それはもう幸せそうな笑顔で、ハンバーガーを食べている。
毎日、とまではいかなくても結構な頻度で食事をしているので飽きてくるのではないかと危惧していたが、今のところそんな様子はない。
ポテトフライも召喚しているのだが、れも美味しそうに食べていく。
俺も一緒に食べていくと、ジェニスがちらとこちらを見てきた。
「そ、それはなんだ?」
……目立たないようにはしていたが、まあ注目されるか。
「俺の両親がよく作ってくれたハンバーガーだ。……食べてみるか?」
「……い、いいのか?」
「ああ。亜人の子たちのためにも、結構用意してきているからな」
アイテムボックスからビッグマッグを取り出し、皿にのせてからジェニスのほうに差し出す。
食事くらいで目立つようなことは少ないだろう。これを使って商売でもしたらラフォーン王国にまで届くかもしれないが。
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