第41話

 用意されていた大きめの馬車へと乗り込んでいく。

 馬車は二台だ。


 御者はギルド側で用意してくれているようだ。

 すでにどちらの馬車の御者台に、それぞれ男性と女性が乗っている。


「シドーはもう一つの馬車に乗ってくれ。何かあった時の指示は任せる」

「おい、早速仕事あるじゃないか」

「安心しろ。オレたちの馬車と逸れてしまった場合だけだ。Dランク冒険者2人とEランク冒険者8人はこっちに乗ってくれ。残りは、シドーの方だ」


 ジェニスは爽やかな微笑を浮かべる。……ああ、引き受けなければよかったぜ。

 ただ、戦力に関してはこちらのほうが平均値は高そうだ。

 俺たちのほうはDランク8人、Eランク6人という編成だ。


 ジェニスも馬車へと乗り込んだところで、俺も乗り遅れがないのを確認してから、馬車へと乗った。

 馬車の中には、いくつかの箱も入っている。たぶんだが、村に届けるための物資とかだろう。


「それじゃあ、出発しますよー」


 女性の御者がそういったところで、馬が鳴き声をあげて馬車が動き出した。

 ……めっちゃ揺れるな。思っていた以上にがたがたと揺れるもんだ。

 車、くらいの感覚でいたので……これは酷い。

 

 移動中はラノベでも読みながら過ごそうかと思ったが、尻も痛いので座布団を召喚して、敷いておく。

 今召喚できる中でもかなりいいものを召喚したので、尻の痛みは軽減されたな。リアたちにも貸し出してやっていると、他の冒険者たちが興味深そうに見てきた。


「それ、なに?」

「座布団だ。知らないか?」

「知ってはいるけど、わざわざ持っている人は珍しいね」

「使ってみるか?」


 別に一緒に旅をしている間くらいはいいだろう。それに、疲れが溜まって全力を出せないとかなると、俺の仕事が増えるかもしれんし。


「……い、いいの?」

「ああ、まだあるからな」


 正確に言えばないのだが、収納魔法の中に召喚すればいい。

 さらに人数分召喚して渡してやると、皆その触感に驚いた様子だ。


「これ……とてもふわふわ!?」

「何の魔物の羽毛を使っているんですか!?」


 ……いや、羽毛ではなかったと思うが。召喚しただけで、原材料は分からん。


「なんだったか……どこかの商店で買ったものだからな」


 誤魔化しておく。


「……わあ! これ、全然お尻への負担違うね!?」

「ていうか、収納魔法、かなり入るんだね……羨ましいなぁ……」

「よく言われるな」


 皆感動した様子で尻に敷いている。……それは良かった。

 多少はマシになっていたし、揺れるかどうかは道にもよるようだ。

 今は比較的落ち着いているので、特に大きな問題はなさそうだな。


 ストントン村までは馬車で一日くらいはかかるらしい。

 ……馬車が結構荷物を積んでいるのもあって、移動がそれほど早くないのも理由の一つだろう。


 だから、途中で野営を行い、次の日に到着するのが目標だ。

 野営はあんまりしたくなかったが、俺たちだけで旅をするのに比べたら、遥かにマシだろう。


 まず外で寝るという行為があまりしたくない。

 ……もう少し、召喚魔法が強くなれば、コンテナハウスとかも召喚できるかもしれないが、基本的に旅で野営は大変だよな。


 ぼんやりと考えつつ、途中現れたゴブリンたちを倒していく。

 ……戦闘は基本的に部下たちに任せ、俺たちは周囲の警戒だ。


 たまに、ハンドガンで援護はするが、ジェニスの方もそんな感じなのでリーダーたちはこれでいいだろう。


「シドーたちのその武器はなんというんだ? 凄まじい威力だな……」


 やはり、ハンドガンは注目されるようでジェニスが感心したように聞いてくる。


「これは俺の魔法で作り出した魔道具でな。魔力を込めた弾を放てるんだ」


 ほぼ嘘であるが、納得してくれる理由としては問題ないだろう。

 すべての魔法が把握されているわけではないようだし、このくらいの嘘なら大丈夫だろう、とはリアからもお墨付きを頂いているしな。


 リアたちもこくこくと俺の意見を肯定するように頷いてくれている。


「そんな魔法があるんだな……。遠距離攻撃で、ゴブリンを一撃で仕留められるなんて非常に強力だな。弓でも上手く狙わなければ倒せないのに」

「威力は弓よりも高いと思うな。まあ、援護は任せてくれ」

「頼もしいな。任せるぞ」


 ジェニスとそんな話をしていると、ゴブリンとの戦闘も終了する。

 戦いを終えたジェニスはゴブリンたちを見ながら、険しい表情をしていた。

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