第37話
俺たちはワイルドボアが向かっていったと思われる方へ歩いていく。
すると、より痕跡は大きくなっていく。途中にあった草木が踏みつけられ、木々などが折られている場所もある。
「ここで足跡が二つ。合流しているようですね」
「……二体で行動してるのか。面倒だな」
そうなると、ショットガンで狙うにしても厄介な可能性が高い。
もう一つ、召喚しておこうか?
しばらく進んでいったところで、ナーフィが片手をこちらに向けて制してきた。
それに合わせ、アンナが指差した。
「……いました」
小さな声で囁いてきたアンナが指差した先には、確かにでかい猪がいた。
全長二メートルほどだろうか? 四つの立派な足で立っていたワイルドボアたちは、何かの死体を食っている。
……たぶん、ゴブリンだ。あの貧相な体のどこに栄養があるのだろうか?
仮に、俺がワイルドボアになってもあれは食いたくないね。
「どうしましょうか」
耳元で囁いてくるアンナに、少しドキドキする。あんまり耳の近くで息を吹きかけないでほしいものだ。
ただ、嬉しさもある。アンナが俺に慣れてきたということもであるからな。
「新アイテムを試してみようと思う」
「新アイテム? 何よそれ?」
首を傾げたリアたちに、イヤーマフとゴーグルを渡す。
これはどちらも戦闘用で使うものだ。もともと、射撃のときの音が気になるので召喚自体はしていたのだが、防音性能が高くずっとつけておくのは戦闘中では危険なので使っていなかった。
そして、召喚したのは閃光手榴弾だ。
「これ、閃光手榴弾って言ってな」
「せんこうしゅりゅうだん?」
「閃光手榴弾は……強烈な光と音を出すんだ。これであいつらの目と耳を封じられれば、ショットガンを当てやすいと思ってな」
「……なるほど。それなら、さくっと一体はやれそうね。じゃあ、あたしたちは周囲の警戒をしてればいいかしら?」
「ああ。俺が目を潰したら、ナーフィはショットガンを一体にぶっ放して仕留めてくれ」
「ん」
俺がそう指示をだし、リアとアンナはハンドガンを準備し、周囲の警戒にあたる。
これが成功すれば、比較的楽に戦闘できるのではないか、という考えだ。
あ、あと……俺の召喚魔法が便利、ということを改めてアピールするためでもある。
さっそくイヤーマフとゴーグルを装備した俺たちは、閃光手榴弾のピンを抜いてワイルドボアの方へと投げつける。
問題なくワイルドボアたちの近くに落ちる。すると、気になったのかすぐにワイルドボアが視線を向け不思議そうにしていた。
「……?」
その瞬間、閃光手榴弾が発動した。
「ぶも!?」
「ぶもおお!?」
驚いたような声が上がった次の瞬間には、ナーフィが即座にダッシュする。
ワイルドボアたちはその場で蹲るようにして、体を震わせている。チャンスだ。
耳もダメになっているようで、ナーフィの接近にも全く気づいていない。
ナーフィは慣れた動きでショットガンを構えてぶっ放す。
「があああ!?」
一撃で足りなかったのでもう一発。
二発で沈んだので、もう一体にも同じようにぶっ放して仕留めていった。
ナーフィはワイルドボアをじっとみてから、くるりと振り返る。
……あっさり、だったな。
実際のところ、閃光手榴弾が魔物たちにどの程度効くかは分からなかったが、効果覿面だったな。
俺たちはゴーグルとイヤーマフを外し、ワイルドボアの死体へと近づく。
「バッチリだったわね。ここまで安全に狩れるのなんて珍しいわよ」
「はい……ご主人様の作戦通りでした」
「……作戦通りいってよかったよ。とりあえず、ここは移動しよう。ナーフィも、よくやってくれたな」
「ん」
撫でろ、とばかりに頭を向けてきたので頭を撫でてあげる。リアとアンナも同じように撫でると、ナーフィはとてもご満悦と言った表情になる。
さっきの戦闘音とゴブリンの死体の臭いもあるし、他の魔物が寄ってくる可能性がある。
ワイルドボアたちの死体を回収し、俺たちは一度そこを離れて水分補給だ。
リアたちは、栄養補給……ハンバーガーだ。嬉しそうに両手でハンバーガーを持つ姿は至って普通なだが、笑顔で食べるたび胸元が揺れる。
一時期流行っていた、タピオカチャレンジとかもできるのではないだろうか?
……今度、俺の世界の飲み方だ! とかいってやらせてみるか?
セクハラご主人様として、罪に罰せられるとかないだろうか?
そんなことを考えながら、歩いていく。
「とりあえず、またワイルドボアを探しつつ、ゴブリン狩りをしていくから……魔物の痕跡とか見つかったら教えてくれ」
「分かったわ」
魔物の索敵に便利な道具でもあればいいんだけどな。
ドローンでも飛ばして、周囲を見てみるのもいいかもしれないが……俺が操作できるかどうか不安だ。
失敗して、ご主人様への評価が下がるようなことはしたくない。
結局、今のところはこの方法で魔物を探していくのが一番か。
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