第36話



「ちょ、ちょっとアンナとナーフィの一口ちょうだい!」

「わ、私も二人の少しもらってもいいですか?」

「ん」


 それぞれ、交換しながら食べていく。

 ……うん、仲良いな。

 なんだか、美少女三人がこうしているのを眺めているだけで俺としては心が穏やかになる。

 ……まあ、実際は甘いもの漬けで俺に依存させているところなんだがな。

 三人が交換しながら食べ終えていたので、また新しいドーナツを召喚しておくと、すかさず食べていく。


「こ、こっちは中からチョコレートが出てきたわ!?」

「こ、これはまた違う甘さがあります……っ!」

「ん」


 ……三人とも。

 食べる速度が異常だ。もしもこれをすべて現金で購入していたらと考えると、確かに俺にエルフの奴隷を持つことはできなかっただろう。

 召喚魔法によって俺にこの力を与えてくれた術者には感謝しかない。


 ……そうなんだよな。

 召喚魔法は、召喚したものに特殊な力を与えることができるのは、俺たちの勇者召喚を見ても明らかだ。


 いずれ、俺の召喚魔法もその領域に到達できるのだろうか?

 あるいは、今も使用する魔力を多くすればそういったことが可能なのだろうか。


 例えば、武器にエンチャントのようなものができるのか、とかだ。

 ハンドガンをより強いハンドガンとして召喚してみるなどだ。


 アサルトライフルやスナイパーライフル、ロケットランチャーといった武器を召喚するとして、どこかでもしかしたら魔物を突破できなくなるときがあるかもしれない。


 そうなったとき、俺の召喚魔法でできることといえば、強化したものを召喚することだろう。


 あとで、色々と試してみたいのだが、もう少し魔力に余裕がないとなぁ。

 せめて、まずはアサルトライフルが欲しい。あれがあれば、ハンドガンよりも明らかに討伐が簡単になるはずだ。





 栄養補給を終えた俺たちは、早速森の中で魔物を狩っていく。


「……今、体がめちゃくちゃ軽いわ」


 そう言って、リアはその場でぴょんぴょんと跳ねている。

 ……リアも、結構肉づきにいい体をしているので、あまりそうやって動かないで欲しいものだ。


「だからって、無茶とかはしないようにな」

「ええ、もちろんよ」


 俺はあまりそちらをみないようにしながら、それだけを伝えておく。


 ゴブリン……ここにも結構いるんだな。

 ハンドガンを使って、確実に頭を撃ち抜いて仕留めていく。

 ふっ、俺も結構な腕前になってきたな。


 そんなことを考えている間に、ゴブリンの群れが襲ってきて、リアたちがさくっと倒していった。


 ……俺が慎重に狙い撃っているのに、三人はさっくり決めていった。

 くっ、何か俺専用装備でも用意した方がいいかもしれない。

 ゴブリン相手なら、ハンドガンで十分なので、俺たちはハンドガンで戦っていく。

 倒したゴブリンたちはすべて収納魔法にしまっていく。


「ゴブリンって繁殖の速度は早いのか?」

「結構早いわね。どこかに巣などがあったら、もう最悪よ。小さな村くらい、すぐに潰されちゃうわよ」

「なるほどな。巣ごと潰さないと、どんなに雑魚狩っても減らないよな」

「そうね。ただ、ゴブリンの巣とかはだいたい騎士とかが破壊するために動くわよ。たまに、忙しいとかで冒険者とかに依頼されることもあるけど、でも高ランクの冒険者とかね。魔法を使う個体や、統率しているゴブリンリーダーとかもいる可能性があるから、下手に手を出さないほうがいいのよ」

「……なるほどなぁ」


 まあ別に、細かい管理はギルドや騎士たちが行うだろう。

 俺たち末端の冒険者は、淡々と依頼にあることだけをすればいいのだ。

 死体はもれなく回収し、ゴブリンと戦っていくとアンナが地面に視線を向ける。


「どうしたんだ?」

「先ほどから地面を見て移動していたのですが、こちらの足跡は恐らくワイルドボアだと……思います」

「……」


 え? マジで?

 俺もしゃがみ、土をじっとみる。


「これ、か?」

「それは私たちの足跡です。こちらですよ」


 ふふ、と微笑むアンナが指差したのは、枯葉の間にあった足跡だ。


「はぁ……よくみてるわね、アンナ」


 リアが感心したように声を上げ、ナーフィもふんふんと頷いている。

 アンナは少し恥ずかしそうに、頭をかいていた。


「えへへ……私の故郷って、森の中で暮らしてて、日常的に狩りとかしてたから……教えられたんです」


 いかん。

 あまり過去のことを深く話をさせると、彼女が落ち込む可能性がある。

 ……スラムで暮らさなければならないような状況になった何かしらの理由があるわけなので、あまり深く話させないほうがいいだろう。

 リアもそれを感じたようで、ちらとこちらをみてくる。

 もちろん、分かってるとも。


「なるほどな。じゃあ、この足跡をおってみるか。また見つけたら、教えてくれな」

「は、はい……!」


 アンナが元気な声をあげ、頷いた。

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