第34話
「お待たせ。着替え終わったわよ」
リアたちが部屋から出てきていたので、俺たちはギルドへと向かう。
今日から、Dランク迷宮に挑戦するためだ。
ギルドへとついた俺たちは早速受付前の列へと並ぶ。
アンナとナーフィは、前回と同じく隅の方に待機してもらう。
俺たちの順番になり、早速ギルド職員に問いかけてみると、彼女は難しそうな表情で頬をかいた。
「Dランク迷宮ですか……この街の近くだとDランク迷宮ってないんですよねぇ」
「……そうか。Cランク迷宮はあるのか?」
「ええ。南門を出てすぐのところにあります。もしも、Dランク迷宮に挑戦するのであれば別の街か村に移動した方がいいかもしれませんね」
「Dランク迷宮に一番近い村か街はあるのか?」
「南の方にある村がいいかと思います。ただ、馬車が出ていないので、商人などの護衛依頼のついでに行かれるといいかと思います。月に何度か向かっていますので、もうすぐ依頼も来ると思いますよ」
商人かぁ。護衛依頼自体は別にいいのだが、俺もたちの持っている武器が武器だからな。
この際、銃以外の武器でも召喚してみるか? 例えば、クロスボウとかだ。
あっちのほうが、銃火器よりも威力は下がるかもしれないがそれでも目立つことは少なくなるだろう。
ただ、クロスボウによる戦闘に慣れたところで、結局メインで扱う武器は銃だからなぁ。
「……なるほど、分かった。ありがとな」
リアとともに俺も頭を軽く下げてから、俺たちはアンナとナーフィと合流する。
アンナが俺の顔を見て小首を傾げてきた。
「どうでしたか、ご主人様?」
「近くにDランク迷宮はないらしいんだよ。一応、Cランク迷宮はあるらしいんだけど……どう思うリア?」
今の我がパーティーの戦力と、Cランク迷宮との戦力についての差を考えるとき、リアが一番正確に判断できると思うので聞いてみた。
「ちょっと、どうなるか分からないわね。ショットガンが通用するなら、問題ないと思うんだけど……この前の戦闘的にDランクくらいまでなら余裕だとは思うけど……」
「そうだよな。……一度、お試しで入ってみて様子を見るっていうのはどうだ?」
「万が一、があるのよね……。そりゃあうまくできればいいけど、魔物が強くて逃げられない時は危険だし……」
リアとしては、あまり無理には行きたくないという感じか。
……アンナの表情も険しく、今の状態で無理に挑戦するのはよくないだろう。
戦闘中に恐怖で動けないとかになったら、最悪だしな。
Cランク迷宮でも火力面では問題ないかもしれないが、俺の動きはそこまで良くはない。
攻撃を当てられれば勝てると思うが、向こうの攻撃を喰らってやられる可能性もある。
確実に前に進んで行った方がいいだろう。
「とりあえず、Cランク迷宮への挑戦はまたあとにしよう。南の村に移動するための護衛依頼を受けるとして……依頼って冒険者ランクが高くないと受けられないとかあるのか?」
「そうね」
「リアたちのランクは?」
「Gランクよ。シドー様も……Gランクよね?」
「……そうだ」
「これだと、なかなか護衛依頼は受けられないわね。とりあえず、ランク上げでもする?」
あるいは、徒歩で移動するか?
それか自分たちで馬でも用意するか……。
乗り物は……さすがに召喚までは厳しいか? もしかしたら安い中古のものを狙えばどうにかなるかもしれないが……道も荒れているし、大変か。
車なんて魔力足りないし……今の俺の召喚魔法だと自転車が精々か。
俺はともかくとして、自転車をリアたちが乗りこなせるかどうかも疑問だ。
道は荒れているし、そもそも乗れるようになるまで時間がかかるかもしれないし……。
もしも、移動系の道具で召喚するなら、四人で移動できる車の方がいいだろう。
運転の仕方は分からないけど。
仕方ない。ひとまずは依頼を受けてランクを上げていけばいいか。
別に急ぐ必要もないんだしな。
そうだな。護衛依頼を受けられるようにランク上げて行こうか」
「そうですね。ランクが高いと色々と便利なことも多いしね。Dランクくらいあれば護衛依頼もすんなり受けられると思うわよ」
リアが頷いてくれたので、早速依頼を受けることにする。
依頼は常に張り出されているものもある。周辺で増えてきた魔物や薬草の採取などだ。
……魔物。ゴブリンも入っているな。
最近、街から離れたところにゴブリンが増えているとのことで、討伐を命じる依頼が出されているようだ。
これって、もしかしたら俺たちがこの前狩りまくっていたゴブリンたちかもしれない。
とりあえず、すべてアイテムボックスに入れてあるし、ランク上げるため、ということにしてギルドと提携している解体場に運んでみるか。
早速ギルドに隣接された解体場へと向かい、受付を行う。
その後、個室へと案内され、強面の筋肉質な男性に声をかけられる。
「んで、ゴブリンの解体をお願いしたいって?」
「ああ。収納魔法にまるまるゴブリンを入れてきて、何体かいるんだ。頼めるか?」
「おう、了解だ。ここに出してくれや」
俺たちが初心者冒険者、ということもあってか男性はかなり優しい。見た目で、損をするタイプの人だな。
すぐにアイテムボックスからゴブリンを出していくと、男性はだんだんと頬が引き攣っていく。
そうしてすべてのゴブリンをアイテムボックスから出し終えた俺は、死体の山に少しひく。
これがすべてアイテムボックスに入っていたんだよな……。
「い、いやさすがに多いな。兄ちゃん、かなり収納魔法に恵まれてんな!」
「みたいだな」
「これなら冒険者よりも商人のほうが稼げるんじゃないか? まあ、解体やっとくからまた午後にでも来てくれ」
……驚いた様子ではあったが、あくまで最初だけ。
すぐに男性は笑顔を浮かべてくれた。
番号の書かれた木製の板が渡される。
これが、俺の受付番号ということだろう。
アイテムボックスにしまってから、解体場を後にした。
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