第25話
「全然、大丈夫でしたね……」
「まあ、このくらいの相手ならなんとかなるわね」
「ん」
三人はとても頼りになるな。
戦闘の基本は三人に任せて、俺は魔石回収係にでもなっていようか。
ナーフィが拾っていた魔石を受け取りつつ、リアに問いかける。
「魔石ってどのくらいの金になるんだ?」
「このランクの魔石だと、銅貨数枚くらいになると思うわよ。魔石ごとに内部の魔力量が変わるから、なんとも言えないけどね」
「まあ、生活費を稼げるくらいって感じか?」
「そうね。ただ、このペースで魔物を狩れるなら、収支はプラスになると思うわよ」
確かにそうだな。銅貨100枚で銀貨1枚だ。そして、昨日借りた宿は銀貨1枚だ。どんなにのんびりやっても半日もあればそんくらいは余裕で稼げるだろう。
「お金の問題は大丈夫そうだな」
普通の人なら、他にも細々とお金はかかると思うが俺たちはひとまず宿代させ稼げれば大丈夫だ。
「まあ、もしもお金足りないっていうなら、ギルドには依頼もあるから、そこら辺を受ければいいと思うわよ」
「……なるほどな」
「あっ、こちらの薬草とかも、採取しておけば換金できますから、採取していきましょう」
そういってアンナが薬草を摘んでいく。
「薬草か……迷宮のものとかも回収できるのか?」
「素材として回収できるものとできないものがあります。例えば、こちらの木などは取ろうとしても消滅してしまいます」
「……なるほどな」
「薬草は……大丈夫そうです。どうぞ」
「ありがとな。アンナも色々詳しいよな」
「……はい。昔、教えてもらいましたから」
ちょっと、元気なく笑う。……やばい、地雷の傍を通過してしまったようだ。
あまりこのことを深く触れることはしないでおこう。
薬草が採取できるかどうかは、ゲームの採取ポイント、みたいなものなのかもしれない。
アンナに薬草とそうではない雑草の違いを教えてもらいつつ、魔物を倒して進んでいく。
「一階層は問題ないな。二階層に行ってみるか」
「ん」
ナーフィがこくこくと頷いている。戦闘に関しては、ナーフィが問題なければ問題ないだろうとは思う。
リアも、同じ意見のようで首を縦に振っている。
「そうね。ここまで問題なく通用するなら、Dランク迷宮でも良かったかもしれないわね」
「まあでも、無理して怪我したら意味ないからな。リアはEランク迷宮がちょうどいいと思ったんだろう?」
「そうよ。でも……あたしたちやっぱり、体のキレがかなりいいのよ」
「やっぱり、俺の食事の効果なのか?」
「たぶん、そうだと思うわ。あたしたちにとっては、支援魔法と同じくらいの効果があるんだと思うわ」
なるほどな。
確かに、ゲームによっては食事効果でステータスに補正などが入るし、何かしらあるんだろう。
こうなると、俺はますます後方支援がメインになりそうだな。
「……リアちゃん。レベルアップのペースも早くないですか?」
「……そうなのよね。これは勇者としての力なのか、食事の影響なのか……ちょっと判断つかないわね」
リアとアンナの言葉に、首を捻る。
勇者として異世界に召喚されたときにそんなことは特に話していなかったと思う。
「……もしかしたら、食事によって経験値増加みたいな効果もあるのかもしれないな」
仮に、俺に効果がなくても、リア達の経験値が増えれば間接的に俺がもらえる経験値も増えるので、悪くはないだろう。
「まあでも、悪いことは別にないし。全部ラッキーくらいに思っておくのがちょうどいいわよね」
「……そうだな」
それを前提として立ち回るのはもしも効果がなくなった時に危険なので、このくらいがちょうどいいだろう。
俺たちはさらに魔物を狩りつつ、レベルを上げていく。
……俺のレベルは14まであがり、三人のレベルも平均12くらいまであがったそうだ。
ナーフィだけ、もともと結構戦っていたことがあるらしく、レベルが少し高い。
二階層でしばらく戦闘していたのだが、ナーフィが食事を要求してきたので、一度休憩を挟むことにする。
一階層と二階層をつなぐ階段へと、移動する。
ここは魔物が、基本的には侵入できない場所らしいので、休憩を取るときはここがいいらしい。
まだ、昼食にするには少し早い時間なので……今日はおやつでも用意しようか。
「この後、ちゃんとしたお昼は食べるし、ひとまずはおやつでも用意するか」
「……おやつ!? え、えとそれってお菓子とかよね!?」
目の色を変えたのはリアだ。アンナとナーフィはお菓子を知らないのか、首を傾げている。
「ああ。色々あるがどうする? クッキーとかチョコとか団子とか……」
ぱっと思いつくものを口にしていく。
あとはコンビニスイーツとかが、俺にとっては身近なものだ。
とりあえず、チョコでも召喚してみるか。
飴玉のような丸い形をしている個包装のチョコレートを取り出す。
それをリアたちに渡すと、彼女は両手の上に乗せながらじっと顔を寄せる。
ナーフィがそのまま食べようとしたので、その手首を掴んで止める。
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