第24話


 目標が決まったので、俺たちはハンドガンをすぐに使えるようにしながら周囲を伺う。

 しばらく歩いていると、俺たちの進行方向に霧のようなものが現れる。

 それが集まっていくと、魔物の姿へと変化した。


 数は一体。こちらをじっと見てくるのは木の魔物だ。

 人形をした細い木だ。人間でいう腕の部分をにゅるにゅると鞭のようにしならせている。


「……こいつが、迷宮の魔物か」

「スモールウッドマンよ。腕を鞭のように使ってくるからあんまり近づかない方がいいわよ」

「分かった」

「ガアア!」


 スモールウッドマンが叫ぶと、こちらに腕が伸びてくる。

 その攻撃を横に跳んでかわす。……初めて、攻撃されたかもしれない。

 分かっていたからかわせたが、何も知らなかったら直撃していたかもしれないぞ。


 おっと、驚いてばかりではだめだ。

 コマンドバトルではないが、攻撃されたのだから反撃しないとな。

 ハンドガンを構えようとしたとき、銃声が響いた。

 あれ? 俺まだ撃ってないけど?


 視線を向けると、ナーフィがすでに発砲していた。


 ……うーん、鮮やか。

 スモールウッドマンは全部で五発の銃弾をその身に受けると、その体が霧のように消えていった。


 死んだ、ってことでいいのだろうか?

 見れば、魔石が一つ残っていたので……仕留めたということで良さそうだ。


「ん」


 ナーフィは魔石を回収し、こちらへ差し出してきた。

 収納魔法は繋がっているので自分でしまってくれればいいのだが、なんだか褒めて欲しそうだ。


「ありがとな、ナーフィ。ナイス」


 ぐっと親指を立てると、ナーフィはどこか満足げにしていた。

 ハンドガンを構えていたリアとアンナも安堵している。

 ……リアは通用するとは考えていたようだが、実際のところやってみないと分からなかった部分があるだろう。


「ハンドガンは問題なく通用するみたいね」

「ゴブリンよりは硬そうでしたけど、問題なさそうですね。やっぱり、ご主人様の武器、すごいです」


 リアとアンナはハンドガンを確認していた。

 ……ただ、ハンドガンではEランクくらいが限界か。

 もっと威力を上げるか、あるいは連射力のある武器に切り替えないとここから先のランクはキツくなってくるかもしれない。


 ショットガンやアサルトライフル、あるいはスナイパーライフルとかだろうか?

 他にも、色々と思いつくものはあるが……ま、まあまだ無理に召喚しなくてもいいよな。


 高値のものを召喚するには、かなり疲れるからな……。

 もっとレベルを上げてからでもいいだろう。


 それにしても、やはりナーフィの戦闘能力は高いな。

 彼女はどこか嬉しそうにハンドガンを構えながら、先陣きって歩いていく。


 俺がレベルアップしているように、三人もレベルアップしているとはいえ、元々の戦闘のセンスが違うよな。

 俺も、負けないように頑張らなければ。


 魔物を探して歩いていると、野生のスモールウッドマンを発見した。数は三体か。


「今度のは、最初から出現してるんだな」

「魔物は一定時間が経過すると生み出されるのよ。冒険者の近くだったり、あるいは全然別の場所だったりね。こいつらはたぶん全然別の場所で出てきて、徘徊してたのよ」

「魔物が出現しまくったら、溢れたりしないのか?」

「通常は、溢れることはないわね。ただ、迷宮が暴走状態になっちゃったりすると、魔物の出現数に限界がなくなり、魔物が大量に生み出され、外に出てくるってことはあるわよ。そういう時は、街の人たち全員で暴走が治るまで魔物を倒し続ける必要があるわ」

「……なるほどな」

「とりあえず、三体いるし、一人一体ずつでいいわよね?」

「わ、分かりました」

「ん」


 あの、俺の分は?

 問いかける前に、三人がハンドガンを構えて放っていく。


 リアがスモールウッドマンに狙いをつける。向こうに気づかれる前に、射撃を開始する。

 ヒットした。一発くらうとかなりよろめいていたのだが、すぐに体勢を立て直そうとする。


 ゴブリンと比較すると明らかに耐久力が違う。まあ、ゴブリンなんておそらくGランク程度の魔物だもんな。

 リアがさらに引き金を引き、スモールウッドマンに弾丸を叩き込む。

 ……リアも、初めは精度がそこまで高くなかったが、今ではかなりなれている。

 全弾命中でスモールウッドマンを仕留めた。


 すでに仕留め終えたナーフィはふふんと得意げに魔石を回収し、持ってくる。

 アンナも安堵した様子で息を吐きつつも、すでに倒し終えていた。


「三人とも……凄いな。俺の出番が……ない」

「まあ、いいじゃない。シドー様の武器のおかげなんだし、実際のところはあんたの出番ばっかりみたいなものじゃない?」


 ……ま、まあそうかもしれないな。

 とはいえ、このハンドガンを作ったのが俺ならともかく、俺は誰かが作ってくれたものを召喚しているだけだからな。

 ……俺、なんか中抜き業者みたいじゃないか?

 あまり深くは考えないでおこう。

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