第26話
「これも、ハンバーガーと同じで周りの包装を剥がしてから食べるんだ。剥がしたゴミはいつものように収納魔法に入れておいてくれ」
俺がそう伝えると、ナーフィはすぐに包装を剥がし、口へと運ぶ。
そして、目を大きく見開き、いつも以上に激しく俺の方に手を差し出してくる。
「んっ、んっ!」
「分かった、分かった。ほら、いっぱい食べろ」
……どうやら甘いものはかなりの好物のようだな。
リアとアンナはナーフィが美味しそうに食べているのを見ていたが、しばらくリアは匂いを嗅いでいた。
「こ、これ何か甘い匂いするけど……なに?」
包装されたチョコレートに鼻を近づけ、匂いを嗅いでいるリア。
「チョコレートって分かるか?」
「ええ。こちらの世界にもあるわよ。あまり美味しくないし飲み物よね?」
美味しくない? どういうことだろう?
飲み物って……確かに地球でも昔は薬のように飲まれていた時期もあったと聞いたことがあるが、こちらの世界でもそうなのだろうか?
確かに、それを基準とするとチョコレートと聞いたら首を傾げるかもしれない。
「まあ、うまいから食べてみるといい。合わなかったら……まあ、ごめん」
「……ええ、そうね」
俺も同じように一つとりだし、口に運ぶ。
ミルクチョコレートだったので、口いっぱいに甘さが広がる。
体を動かしていたこともあってか、それがとても美味しく感じる。
リアたちも甘い匂いに期待感が高まったのか、袋を開けて同じように口へ運んだ。
そして、目を何度もぱちくりとして頬に手を当てる。
「……っ! ……っ!」
……めちゃくちゃ、美味しかったのかもしれない。
リアもアンナも同じように声にならない叫びをあげている。
もしかしたら過去一番の反応かもしれない。
「これ……とても甘くてほっぺたが落ちそうです!」
アンナが興奮した様子で叫んだ。
……ここまで彼女が感情を爆発させたのは初めてだろう。
クックックッ。彼女らの胃袋を掴む作戦は今のところ順調だな。
「……そうか。色々な味があるけど、食べてみるか?」
「は、はい……!」
それから、リアたちにチョコレートを渡していく。ピーナッツチョコ、ホワイトチョコ、ビターチョコなどなど。
「どれが一番美味しかった?」
「どれも美味しかったわ……!」
「……はいっ」
「んっ」
……ですよね。ずっと同じようにその場で飛び跳ねるような反応をしていたんだし。
「……おやつ、というのはまだまだあるの?」
「ああ。そうだな。今後も頑張ってくれればいくらでも用意するからな」
「「「……」」」
三人は、それはもうやる気に満ちた顔になっていた。
……餌付け、成功だな。
「とりあえず、ちゃんとしたお昼もあるし食べ過ぎは良くないからな。そろそろ、レベル上げ再開でいいか?」
「ええ、そうね。さっきの食事でまた体も軽くなってきたし、バンバン狩るわよ」
……うん。これはまた俺の出番はなさそうだな。
とりあえず、奴隷とご主人様の関係としては……今の所順調にいっていると考えてもいいだろう。
迷宮の基本的な知識として。
ボス階層を突破した先にある魔石を破壊しない限り、迷宮は消滅しないらしい。
ボス階層の魔物も復活するらしいので、自由に討伐しても良いそうだ。
なので、そこを目指して俺たちは進行中だ。
現在三階層で戦っているのだが、スモールウッドマンにハンドガンは問題なくダメージを与えられる。
ただ、弾七発必要なので、そこはちょっとネックだ。ハンドガンのみだと、余裕を持って戦えるのはEランクくらいなのかもしれない。
……俺はハンドガンをいつでも使えるように準備していたが、今の所は出番がない。
スモールウッドマンたちは五体とか大所帯になってきて、俺の出番か? と思っているのだが、三人がリロード含めてスムーズに討伐していくのだ。
なので俺は、移動しながら基本的には考え事だ。
今は、この迷宮についてばかりを考えている。
迷宮というのは、一体どこの世界にあるんだろうな。
俺のアイテムボックスもそうだが、この世界とはまた別の空間がどこかにある、ということなんだろうか?
近いようで案外遠いのだろうか。
俺が知らなかっただけで、様々な世界が広がっているのかもしれない。
……そこから何か日本に戻る手がかりもあるかもしれないので考えてみたが、まあ何の知識もないわけで考えることしかできない。
結局のところ、俺の召喚魔法が一番地球に近いんだと思う。
もっと、鍛えていかないとな。
移動中も、魔力の使い道が召喚魔法くらいしかないので、大量の食品をアイテムボックス内に召喚しまくっている。
そろそろ、結構大物も召喚できるのではないか、という気持ちもある。
「さっきの戦闘でナーフィちょっと前に出過ぎじゃない?」
「ん?」
「攻撃掠りそうになってたでしょ? もうちょっと距離開けなさいって。怪我とかしたら大変なんだから」
「そうですよ。ナーフィちゃんがうちで一番強いんですから。何かあったら大変ですよ」
「ん」
ナーフィはこくりと頷いている。
……確かに、ナーフィはあんまり恐怖心とかがないのか、魔物相手に近接で突っ込む場面が多い。
ハンドガンの射程を活かしつつ、ハンドガンの威力を上げるためなのか、距離を詰めて乱射することが多く、みていてちょっと不安になるときはある。
「まあ、ナーフィは当たらないようにしているんだと思うけど、怪我しないように、無茶な攻撃はしなくていいからな?」
「ん」
同じ立場のリアたちに言われるよりは、一応ご主人様の俺から改めて言っておいた方がいいだろう。
ナーフィは素直だから、今の言葉でわかるだろう。
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