第11話
「それで、早速戦いに行くって言ってたけど、あたしたちの武器はどうするの? 何も持ってないわよ?」
「……それについては、ちょっと戦闘を体験してから考えようと思ってる」
とりあえず、俺のハンドガンを使ってみて、リアたちが使いこなせそうなら、もう一度ハンドガンの召喚を行う。
きっと前よりも召喚しやすくはなっているはずだが……あれ、結構大変だからな。
ハンドガンをさらに三つ用意するとなると、たぶんかなり疲れる。
できる限り、先延ばしにしたいのだ。
まあ、ハンドガンはほぼ素人の俺でも使いこなせたし……いけんじゃね? とは思っているが。
俺に勇者チートがあっただけかもしれないが、俺より戦闘センスがいい人はたくさんいるだろう。
そんなことをぼんやりと考えているときだった。
ぐーっという音がした。視線を向けると、ナーフィだ。
さっき、食ったよな?
特にナーフィの食欲は化け物のようで、「ん」と片手を向けてきた。
……まあ、契約だからな。
燃費が悪いのは仕方ない。
彼女にハンバーガーを渡してあげると、嬉しそうに食べ始めた。
……まあ、こうやって美味しそうに食べてくれるのだから悪いきはしない。
「まったく、行儀悪いわよ」
「別に、冒険者の行儀を気にする奴はいないから、いいだろう。ただ、口の周りにソースをつけたままにはしないようにな」
ハンカチを取り出し、ナーフィに渡そうとすると、彼女は「ん」とこちらに顔を近づけてきた。
ふけということらしい。
……ま、まあ、触れていいのなら触れようじゃないか。
ごしごしと整った顔を丁寧に拭ってあげると、ナーフィは気持ちよさそうに目を細めていた。
「ちょっとナーフィ。一応ご主人様なんだから、そのくらいは自分でやりなさいよ。っていうか、人としてだらしなさすぎるのよあんたは……」
「いや、別に気にしなくていいから」
俺はふきふきおナーフィの面倒を見てやる。なんとなく子どもの世話でもしている気分になってくるな。ただまあ、体つきは三人の中でも一番立派なので脳がバグりそうだ。
「まだ食べたいか?」
「ポテト」
ナーフィが初めての別の言葉を話した。
よほど気に入ってくれたようだ。ポテトを取り出し、彼女に差し出すと、ぱくぱくと食べていく。
クックックッ。
ナーフィは完全に俺の食事の虜になってくれたようだ。
これなら、計画通りにいくだろう。
そんなことを考えていると、ぐーっと今度は別の場所から音が鳴った。
みると、頬を恥ずかしそうに赤くしていたアンナがいた。
「……あ、あのぉ……その、匂いを嗅いでいたら、お腹が空いてきちゃって……」
「分かった。ハンバーガーとポテト、どっちがいい?」
「は、ハンバーガーでお願いします」
「それならまた、別の味にするか?」
「べ、別の味ですか?」
「ああ。口に合うかどうかは分からないが……えびマッグにするか」
「ん!」
ナーフィも食べたいようで、いつもより主張強く声をあげる。
はいはい、分かってるって。
「リアはどうする?」
「……よ、余裕があるなら、あたしもちょっと食べたいわ」
だろうな。さっきからずっと食べたそうに見てるんだもん。
俺が召喚したのはえびのフライが入ったハンバーガーだ。それを召喚して彼女に渡すと、アンナはもう最初のようなためらいなく一気に食べ始める。
「……お、おいしい!? さっきのお肉とは違って、なんだか違う生物が入っていますね……っ」
「ああ。えびっていう……水辺にいる生物なんだがわかるか?」
そういえば……いま特に気にせず食わせているが、アレルギーとか大丈夫なのだろうか……?
そこら辺ちょっと心配であるが、今のところは問題なさそうだ。
「は、はい。聞いたことあります……それを揚げたもの、ですか……揚げるのって大変ですよね?」
そうなんだろうか?
こちらの世界では油も貴重なら、確かにその可能性は高い。
「俺の世界だとそうでもないんだよ。気にせず食べてくれ」
「は、はい……っ! こちらの中に入っている液体も美味しいですね……! なんですかこれは?」
「それは、ソースって言ってな……えーと、確か、マヨネーズと何かで合わせて作ったんだったか……」
さすがに、普段食べる側として何をどのようにして作っているのかまでは覚えていない。
俺は別に食レポしているわけではないので、◯◯がどうこうで……なんて解説はできなかった。
「まよねーず……ですか?」
「えーと、それは卵を使って作るんだけど……卵は知ってるか?」
「はい。……魔物たちが生み出すものですよね?」
ちょっと、アンナは不安そうにしている。
うん、これは俺の言い方が悪かった。
今頃、アンナの頭の中にはドラゴンが卵を産み落としている場面でも想像しているのかもしれない。
「今回使っているのは鶏っていう生物の卵なんだが、それは知ってるか?」
「に、鶏は知っています。……あの卵がこれになったんですか……ご主人様は色々と知っていて凄いんですね」
アンナは俺のことをご主人様、と呼ぶようだ。
彼女は一口食べた部分をじっと見て、何やら感動した様子だった。
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