第10話

 ……さっきの今日で、またここにくることになるとは。

 それに、今度はメイド服を着させた三人だ。……こうなるならば、もうちょっとちゃんとした服にしてあげればよかったと後悔していた。


 リアたちとともに奴隷商へと入り、すぐに受付を済ませる。少しして、ゴーツがやってきた。


「シドー様。どうしましたか?」

「彼女たちと奴隷契約を結びたいと思っている。契約内容含めて、立ち会いをお願いしたいんだけどいいか?」

「……かしこまりました。それでは、奥の部屋で対応しますね」


 少し、ゴーツは警戒したように見てくる。さっきも話していたが、違法な奴隷契約というのが多いからだろう。

 問題があるとすれば、アンナか。アンナはどうにも俺に警戒しているというか、苦手意識があるようで、視線を合わせることもないからな。


 奥へと向かったところで、俺たちは席につき、ゴーツが一枚の紙を持ってきた。


「それでは、細かく契約をまとめていきますね。まず、契約の中身はどの程度のものを想定していますか?」

「俺と彼女たちは……商売での関係みたいなものだ。俺は彼女らの衣食住を含めた生活を提供し、彼女たちにはレベル上げを手伝ってもらいたいと思ってる」

「分かりました。そうなると、一般的な上司部下のような関係が近いですね。こちらにいくつか例がありますので、似たような契約のものがあれば教えてください」


 差し出された紙に書かれた文字をじっと見ていく。

 リアも文字の読み書きはできるようで、彼女が見ている。


「これ、近いんじゃないか?」

「……そうね。これを元に作っていくのがいいかもしれないわね」


 リアも納得してくれたようだ。

 一つの事例を元にして、俺たちの契約を詰めていく。


「休みに関しては週に何日欲しいんだ?」

「そうね……二日とか? 一般的なものでいいわよ。体調が悪い日に休めるくらいには余裕がほしいわね」


 細かい休みの条件を決めたり、食事に関してもだ。

 食事については、太りすぎない程度に、というのは決めさせてもらった。

 バクバク食べるのはいいが、それで体調不良になって余計なお金がかかるというのはダメだ、と。


 ……まあ、亜人は太りにくいし風邪もほとんど引かないらしいので、問題ないと思います、とはゴーツの意見だ。


 初めは警戒していたゴーツだが、今では俺たちが和気藹々と打ち合わせをしているのを聞いてそれもなくなっている。


「それじゃあ、最後ですね。いわゆる一番の問題でして、性奴隷として認めるかどうかですね」

「俺は特にその予定はない」

「あたしたちもそのつもりはないわ」

「じゃあ、普通の男女関係としておきましょうか」


 それでいいだろう。

 ぶっちゃけ、亜人の子たちは俺よりも力が強いので、万が一にも俺が襲って何かするということはないだろう。

 これで、契約のすべてが完了したので、奴隷紋を刻んでもらうことになる。


 俺の右手にゴーツが手を触れ、それからリア、アンナ、ナーフィの右手にも触れる。

 一度、魔法陣のようなものが浮かんだが、すぐにそれは消えた。


「奴隷紋は、奴隷商しか操作できません。契約内容などに変更があればまたお越しください」

「分かった」

「それでは、一人当たり金貨一枚、合計三枚お願いします」

「ああ」


 俺はアイテムボックスにしまってあった金貨三枚を取り出し、ゴーツに渡した。

 これで契約はすべて終了した。



 結構難しいことを話しあっていたので、疲れてきてしまった。

 奴隷の契約って、かなり細かい部分まで色々とあったんだよな。

 例えば、主従の間で特に重要視されているのが、性と死に関してだ。


 ……奴隷の中には、殺意とは無縁を装って相手を殺すのもいるそうだ。

 基本的に、奴隷が主人を無理やりどうこうすることはできないのが、意図的でなければそれも可能になる。


 そういった細かい部分含めて、なるべく制限をかける必要があると言うことでかなり細かいことまで話し合う必要があった。

 まあ、それでも完全には制御できないので、お互いに仲良くやりましょう、というのがゴーツの最終意見だった。


 軽く伸びをしていると、ゴーツが声をかけてきた。


「亜人の方三名も契約するとなると、食費などはかなりかかると思いますのでそこだけお気をつけください」

「……ああ、分かってる」


 正直言って、かなり大変だとは思う。

 ただまあ、今の俺のレベルでも三人の食事を賄うくらいは難しくない。

 奴隷契約を終え、奴隷商を後にする。

 三人はこれで晴れて俺の奴隷となった。……契約の中身はともかくとして、俺は奴隷を手に入れた。

 ……責任は持たないとな。

 さっきの契約でもあったが、衣食住で彼女らが満足できるようにする必要があるわけで……ひとまず、もうちょっと動きやすい服に着替えさせよう。


「それじゃあ、早速で悪いんだが……魔物との戦闘がどのくらいできるか、試してみたいんだがいいか?」

「いいわよ。……って今は、敬語のほうがいいわよね?」

「いや、そのままにしてくれ。別に本物の主従関係とは違うんだしな」


 ていうか、ここで改められても俺としてもやりにくい。

 リアはこの方が距離感としてはちょうどいいと思っている。


「……分かったわ。でも、シドー様、くらいは呼ぶわよ」

「……うーん、分かった」


 そこはそれぞれ、話しやすいようにしてくれればそれでいいだろう。

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