第6話 親子

「……ねぇ。翔、真里亜。」

「うん?」

「ん?」


同じ顔して僕を見る2人。

僕は真里亜の元へ歩いて行って頬を手で支えキスした。


「俺ね…やっぱりこの人がいい。聞こえなくていい。聞こえなくても俺の事ちゃんと分かっててくれる。ちゃんと与えてくれる。」


僕が真里亜の隣に座ると真里亜はじっと僕の目を見た。

「…あんたは病気だから。言葉じゃ伝わらない」

「怖い…」

「大丈夫…私はわかってるから。」


真里亜は立ち上がって僕を抱き締めた。


「翔、多分あんたにこの子は無理。泣いて私の所に駆け込ませるのがオチ。…稜太、小学生の時ってこの間言ってたけど、あれ私があんたのスネ蹴った時でしょ?本当に何かの拍子でそうなったやつ。」

「うん。真里亜はめちゃくちゃ俺に謝ってくれた。でも…嬉しかった。真里亜は違う家だっから毎日なんて来てくれないし、『おはよう』も言えない。『おやすみ』だって言えない…。でもその痣があれば真里亜を感じれる。そばに居る。って感じた。」


「……あんた引き取ってればよかった。」

「そうしたら翔が可愛そう。翔にも母親は必要。」


「……ねぇ稜太」

「うん?」


翔が僕に話しかけてきた。


「稜太は真里亜を『母親』として見てるの?」

「うーん。微妙。でも色々して欲しい。」

「いいの。私たちには私達の関係性があるから。」

「俺、小さい頃から真里亜にしか心開けなかった。ばぁばも、じいもダメで。真里亜だけが俺の中に入ってきてくれた。」

「…あたしはそれだけあんたに愛情与えてたから。麗美の分まで。それ以上にって。翔もあんたも私の子だから。」

「……やっぱり超えちゃいけないのかな。……翔に申し訳ない。」

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