第3話 囁き

――――――数ヶ月後。


僕は色々あって塞ぎ込んでいると、翔から電話が来た。


―――――――――。

「稜太。」


優しい声。


「なに。」

「調子どう?」

「絶不調。」

「なんかあった?」


「…お前、優しいのな。」

「気になっただけ。」

「……やらせろ。」

「できる?元気ないよ。」

「…出来ない。」

「今、家?」

「うん」

「おうち行っていい?」

「鍵空いてる」

「ありがとう」



――――――――――――。


30分ほどして稜太が買い物袋を2つ持って入ってきた。


「通い妻か。」

「え?通っていいの?」

「飯作っておいてって。」

「それ『妻』じゃない。『飯炊きばばあ』」

「どっちも変わんない」

「変わる。じゃあ、稜太、ばばあとやれる?」

「やらない。抜いてくれるならいいよ」

「…クズだ。」

「なんか言った?」

「なんも言ってないよ。」


僕がソファで横になってると僕の頭元へ来て、

何をするかと思ったら静かに唇を重ねてきた。


「……。」

「僕ね…ずっと、稜太が好きだった。でもいいの。僕、男だしさ。稜太、嫌でしょ?」

「…お前ならいい。ずっと言ってんじゃん。」

「……稜太。僕だけの人になってくれる?」

「それ、俺も言いたい。俺と付き合うのは面倒臭いぞ。真里亜しかそれを理解して付き合えない。」

「その『真里亜』 は僕のママ。僕はその息子。…この手のかかる男の扱い方なら手に取る様にわかる。」


「……。」

翔は僕の上に乗って手の甲で僕の頬を撫でてきた。


「僕は稜太を寂しくさせない。いっぱい愛してあげるから。」


僕は下から稜太を引き寄せてキスした。


「甘い声、いっぱい聞かせろ」

「僕にも聞かせて?…耳くらいしか僕は真里亜に勝てないから。」

「『』じゃない。『力』もな。」

「こうやって、稜太を抑える力?手の大きさ?」

「やめろ……」

「可愛い。照れてる。…僕ね性格はママとそっくりだから。稜太がそうなると嬉しい。可愛い…。僕は悪い男だ…。ママから大切なものを奪おうとしてる。でもね…今凄く興奮してる。」

「やめろ…」

「ほら…イけ…」

「やめっ…あぁっ……」


「僕とママとの一番の違いおしえてあげよっか?」

「なに。。」

「ママは僕と比べて優しい。でも僕は粘っこい。しつこい。引かない。稜太が出すまで囁いてあげるから。出してもやめない。狂うまで…。懇願するまで…堕としてあげる。…もうママには戻れなくしてあげる、 、」



僕はこの日、出なくなるまで囁かれて撫でられた。一切そこには触れず。一切脱がず。





でも、寂しかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る