第2話 耳が好き
高校は別のところに進んだ。
その頃僕はよく家を開けていた。
開けるかこもるか。どちらかだった。
たまに近所で翔を見かけていた。
サラサラの髪で黒髪で少し長めで可愛かった。
でもあんまり関わらないようにしていた。
でもある日たまたま、駅裏でまた虐められてるのを見て一人で乗り込んだ。
盗られた財布を取り返して虐めてた奴らが逃げてくのを見た後に翔の手を引いて家に帰った。
――――――「いって……。」
「仕方ないじゃん。怪我してんだから。」
「なにやってんの?怪我?」
翔の母親が二人を見て話しかけてきた。
「稜太が僕守って怪我したの。」
「偉いじゃん。」
「子供扱いすんな。」
「偉い偉い。かっこいいよ。」
翔の母親は暖かい人だった。両耳がほぼ聞こえていない。補聴器を付けていてもほぼ聞こえていい。そしてこの人が僕らを抱きしめて育ててくれていた。
―――――――――また違うある日のこと。
夜中に公園で寝てると翔が来た。
「いつからここいるの?」
「わかんね。覚えてない」
「帰ろうよ。」
「もうちょっと。」
「じゃあ俺もいる。」
「……翔」
僕は立ち上がって翔を抱き寄せた。
「どうした?…」
「虐められてない?」
「大丈夫だよ。」
「お前は優しいから。」
「またヤバくなったら助けに来て。」
「いつでも行く。」
僕は翔を抱きしめて頭を撫でるのが好きだった。
―――――――――――――――。
その後翔も高校を卒業して、働き始めた。
そんな中、久々に連絡を取りあってご飯に行った。
「…お前最近耳どうなの?」
「左は聞こえなくなった。右は普通に聞こえてる。」
「そっか。辛いな」
「大丈夫。片耳聞こえてるからまだママよりは楽。」
「まぁな。」
翔の母親はこの時点で既に両耳が聞こえなくなっていた。
「…でもお前ほんとに可愛いな。」
「可愛くないよ。」
「…耳見せろ」
「え?」
「いいから。見せろ。」
「うん……」
翔が耳に髪をかけるとそこから補聴器が見えた。
「…綺麗な耳。その耳にそれって本当に興奮する。」
「…変態。」
「やらせろ。」
「やだ。稜太とは嫌。」
「他ならいいの?」
「他ならいいよ。稜太は嫌。」
「あぁそう。」
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