ずっと好きだった

海星

第1話 優しくて可愛いやつ

「何お前、きこえねーの?おーい!おーい!」

「……何?なんて言ったの?」

「な、なんでもないです…。」

「……謝れ。かけるに謝れ。」


「翔、ご、ごめん。」

「翔は聞こえてる。ちゃんと聞こえてる。次やったら殴るから。」

「はい……。」



小学生時代、たまにこういうことがあった。

優しくて繊細で傷つきやすい翔を守ることが生きがいだった。



―――――――――――中学生。


「何お前…ナヨナヨして気持ち悪いんだよ。」


よく学校の裏で翔が虐められていた。


「ねぇ、ちょっといい?」

「あぁ?」


僕はそのままそいつを殴った。


「お前誰だよ!?」

「うん?こいつの兄貴。次こいつ虐めてみろ。殺すから。」


「翔。帰ろ。」

「う、うん。」



――――――翔の家。


「さっきはありがとう。」

「怪我してないか?」

「大丈夫。その前に来てくれたから。」

「お前はナヨナヨしてんじゃないから。柔らかくて優しいの。おっとりしてんの。可愛いの。だからいいの。なんか言われたら俺に言え。いつでも行くから。」

「ありがとう。」


「……。」

「……。」


僕はこういう時によく翔を抱きしめて頭を撫でていた。

「いいの。お前は今のままでいいの。大丈夫。」

「うん。ありがとう。」



―――――――――――――――。


その頃よく僕は夜中に家を出ていた。

祖父母と暮らしていて、荒れてたのもあるけど、一匹狼なので一人で公園でタバコを吸ったりしていた。

すると、そういう時に限って静かに僕の隣に翔が来て座る事がよくあった。

何も言わずただ、僕の肩に首を乗せる。


それがまた可愛くて…。


「やめろ。」

「気持ち悪い?」

「違う。キスしたくなる。」

「俺、男だよ。稜太は嫌だなー。かっこいい人ならいいかもしれないけど」

「失礼な奴。」

「風邪ひかないうちに帰りなよ?」

「うん。そうする。」


誰の話も基本は聞かないが、翔と翔の母親の話なら素直に聞ける自分がいた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る