第2話 エンターキーは強く押せ!

 俺の左腕にクソデカエンターキーがくっついてる。


 なにを言ってるかわからんと思うが、正直俺にもわからん。


 わかるのはこのキーボードのデカさが上半身を覆うくらいの大きさ。

 そんで、色が白いってことくらいのもん。


 そんでそんで……。


 約七匹(大体!)くらいのゴブリンの集団が襲いかかってきてるってこと!


 あばばばば!


「グギャー!」


 ゴブリンがよだれを垂らして俺に飛びかかってくる。


 めっちゃ嬉しそうやんけ!

 そりゃそっか!

 なんてったって無防備な異世界人やもんね、俺!

 たぶん経験値的にも味的にも二度美味しい! ってやかましわっ!

 そんな微妙に上手いのか上手くないのか的なことを思ってるうちにはい、目の前! ゴブリン! きっしょ!


 とっさにエンターキーを掲げる。


 エンターキーにゴブリンがぶつかる。


 タンッ──。


 タンッ? 音までエンターキーやんけ!

 と思ってると。


 ばしゅう~っ!


 という音とともに骨だけ残してゴブリンが一瞬で焼け落ちた。


「なにこれぇ~!? エンターキーすごくない!?」


「グギギ……」


 パチンコのフィバータイムかのような勢いで向かってきてたゴブリンたちの足が止まる。


「ふふふ……悪いな、フィーバータイムはもう終了。打ち止めだぜ……?」


 カッコはつけれる時につける。

 それが俺のザ・美学☆

 これくらいのメンタルじゃないとネットゲーム世界やっていけね~んだよ。


 ってことで、くらえ~~~! 俺のエンターキー攻撃~~~!


「グギギギぃ~!」


 危険を感じ取ったゴブリンたちが伏せる。


「んしょ……んしょ……って、あれ……?」



 か た い 。



 このエンターキー固ぁ~~~い!


 しかも左腕についてるから右手で押しにくぅ~~~い!


「グギギ……(ニタァ)」


 あか~ん!

 フィーバータイムさらにもう一回来ちゃってますや~~~ん!

 誰だよ、打ち止めとか言ったやつ!

 俺~!

 俺だよ、俺俺~!


「ぬおおおおおおおお!」


 逃げる俺。

 めちゃめちゃ迫ってくるゴブリン(約六匹)。

 っていうかよく見たらゴブリンたちのボス格、めっちゃ邪悪なオーラ出てない!? 

 黒いし!

 絶対レア個体だろあれ!

 ヤバいって!


 と、逃げてるうちに目の前に見えたちょっとしたいい感じの高さのでかい岩。


「来た来たぁ~! これこれぇ~!」


 俺はそのまま岩に向かって猛ダッシュしてエンターキーごと体当たり!


 アーンド、すぐにエンターキーをゴブリンたちの方に向ける。


 ばしゅう~っ!


 骨だけ残して焼きただれたゴブリン(約六匹、レア個体含む)。


 よっしゃ、成功! ざまぁ! ゲーマーなめんな! 死ね!(死んでる)


 ふぃ~。

 お腹……空いたな。

 あ、一応ステータス確認しとくか。


 名前:ゼン

 種族:人間

 称号:エンタの初心者

 職業:キーボードクラッシャー

 スキル:キーボード

 レベル:8

 体力:2

 魔力:2

 攻撃:5

 防御:4

 素早さ:6

 知力:1

 器用さ:3

 運:2

 カリスマ:1


 レベル8!

 このレベル上がり具合、やっぱさっきのレア個体やん!

 でもレベルめっちゃ上がったわりにはステータスめっちゃ微増!

 知力とカリスマに関しては1のまんま! 喧嘩売ってんのか!

 んで、称号が増えてる!

 しかも「エンタの初心者」……ってこれ最終的に「エンタの神様」になるやつちゃうんか!?


 ま、でもとりえず敵に出会ったら固いものにぶつかってエンターキー押せばいいわけか。

 え、効率悪くない?

 う~ん、これは要るな……。


 エンターキー押し要員。


 つまり、仲間が!


 ってことで行くぞ、街!

 で、探すぞ仲間!

 エンターキーを押してくれる仲間を!

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