きみょうな地上絵

雨宮 徹

きみょうな地上絵

 僕は窓から運動場を見る。今日もだ。運動場にラインカーで落書きがされている。これで二日連続。



「なあ、東雲しののめ、奇妙だと思わないか? わざわざ運動場に落書きするなんて」



「そうかしら。よくあることじゃない」



 いや、よくあったら困る。



「東雲はクラス一のミステリーオタクだろ? 興味はないのか?」



「はあ、まこと。あんな幼稚なイタズラに興味はないわ」



 そうですか。



「そうそう。これはイタズラで済まない話なんだけど。理科室に勉強用に化石が置いてあるだろ? あれが盗まれたんだ」



「で?」



「犯人は分かってるんだ。成田の奴だ」



 僕は黒板の前で楽しそうに話しているクラスメイトに目をやる。



「ふーん。じゃあ、先生に言えばいいじゃん」



「それがな、そうもいかないんだ。確かに僕は成田が化石を盗むのを見た。だから、走って逃げる奴を追いかけたさ。でも、部屋に追い詰めたは良かったんだけど、あいつ、化石を持ってなかったんだ。間違いなく、部屋のどこかに隠したに違いない。だから、物証がない」



「なるほどね。ところで、理科室の隣は体育の用具室だけど、まことが成田を追い詰めた場所はそこ?」



「その通り。もちろん、部屋中探したさ。でも、見つからなかった。成田がどんな手を使ったのか、さっぱり分からない」



 犯人が分かっていても、証拠がない。もどかしい。



「で、その事件が起きたのはいつ?」



「うーん、一昨日かな。ちょうど、翌日から運動場の落書きがあったし、そうだと思う」



「じゃあ、隠し場所は明白ね。。おそらく、成田はとっさにラインカーの中に隠したのね。でも、体育の授業で使われて、どれか分からなくなった。だから、運動場にイタズラ書きしたのよ」



「でもさ、それならイタズラ書きしなくても良くないか?」と僕。



「じゃあ、真はラインカーの中身をぶちまける?」



「いや、それじゃあバレバレだ」



「そういうこと。成田は夜に学校へ忍び込むことで有名よ。夜にラインカーの中身を撒き散らしたら、自白しているようなものよ。落書きで誤魔化したつもりでしょうけど、あまり賢いとは言えないわね」



「そうかもな」



「まあ、あくまでも推測よ。ひとまず、ラインカーの中を探すことね。もう遅いかもしれないけれど」

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きみょうな地上絵 雨宮 徹 @AmemiyaTooru1993

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