寂しい

※※※※


 大会が終わってから、また普通の日々に戻った。

 最低限の学校生活のことや友達のデータを詰め込んでやって来たブドウは、少しぎこちない笑顔をしていた。


 それでも学校に復帰したブドウは、友達から「おかえりー」とこねくり回されている様子はとても楽しそうであった。ちなみに首は少し強度のあるものに変えたらしい。


「土曜日、匠馬とクイズ大会出てたでしょー。私、見に行ったよー」

 ブドウの友達は口々に言った。

「体調不良で棄権は悔しかったねー」

「まああれは、病み上がりのブドウを出場させた匠馬が悪いよね」

「何でだよ」

 急にディスられて匠馬は憤慨する。ブドウは慌てて言った。

「匠馬は全然悪くないよ!」

「わかってるわかってる」

 友達は慌てるブドウを撫でた。

 匠馬だって、本気でディスっているわけではないことはわかっているし、こんなのは同級生同士のじゃれ合いみたいなものだ。


 ブドウは記憶を失い、友達の事も忘れてしまっている。データだけは必死で今日まで入れてきてはいるものの、友達同士のじゃれ合いの感覚まではまだわからないようだ。


 でも少しずつ、また一生懸命覚えていくのだろう。ブドウは友達をたくさん作ることをプログラムされているのだから。


「匠馬、ちょっと寂しいだろ」

 急に岳に声をかけられて、匠馬は首を傾げた。

「何がだよ」

「ブドウさんともうクイズして遊べなくなって」

「別に」

 匠馬はプイッと顔をそらす。

「強がるなって。まあ受験終わったらまた俺も相手してやるから」

「本当か?約束だぞ!」

 匠馬は顔をキラキラさせた。

 本当に、匠馬はクイズ馬鹿だよな、と岳が小さく笑った。



 元々付き合うグループも何もかも違っていた匠馬とブドウは、結局その後、小学校を卒業するまで特に仲良くすることなく、ただの同級生として過ごすこととなった。


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