早押しクイズ
最後はシンプルに早押しクイズである。
「これは俺頑張るよ。さっきのパズルの汚名返上だ」
「オメイヘンジョウ」
ブドウはよくわかっていないようで首を傾げる。
「まあ、さっき活躍できなかったのを取り戻すよってこと。ブドウも、わかったらドンドン押せよ。間違ってもいいから」
「え、間違ってもいいの?」
「そうだよ!間違いに怯えて押さないのは一番早押しクイズで一番ダメだからね!」
匠馬はドヤ顔で言う。その後、何となく残念な気持ちになってしまった。
「本当はそういう早押しクイズのコツみたいなのも練習したかったんだけどね」
「私、忘れちゃったんでしょ」
「違う。喧嘩しちゃったんだよ。俺たち」
「ほへ」
ブドウは変な声をあげる。
「私と匠馬くんそんなに仲良かったんだ」
「はあ?なんでそんな話になるんだよ」
「喧嘩するほど仲が良い、んでしょ」
当たり前の顔でそんな事を言うブドウに、なんだか匠馬はおかしくなってしまった。
そうしているうちに、早押しクイズが始まった。
「日本で唯一ひらがなの県庁所在地は?」
「パソコンの『パソ』は何の略?」
「寿司屋で使われる言葉、『ナミダ』は何の事?」
次々出てくる問題。匠馬は必死でボタンを押す。
何問かは答えられた。でもライバル達も強い。
少しでも、ブドウも知ってる問題が出てくれたら…。
「フランス語で稲妻の意味を持つ、クリームの……」
匠馬より先に、ブドウの手がボタンを押した。
匠馬は少し驚いた。しかし、少しの差で他のチームの方が速かったようで回答権は取られてしまった。
「エクレア!」
正解のピンポンが鳴り響く中、ブドウは小声ながら必死に匠馬に訴えてきた。
「わかってたの!私もわかったの!」
「う、うん。そうだな」
「直前に見た、前の私が書いたノートに書いてあったのを覚えてたの!」
「うん、そうだな。ブドウが頑張ってた証拠だな」
匠馬はなだめるようにブドウの背中を叩く。
「気持ち切り替えていこう。大丈夫、ブドウも出来るって」
しかしその後、五問ほど問題が読まれたが、押し負けたりしてなかなか点数が取れなかった。
「一旦休憩に入ってから後半やります!」
スタッフの声がした。
「ちょっと緊張で手汗ヤバいからちょっと手洗ってくる」
と匠馬はトイレに行った。
すぐに戻ると、ブドウはいなくなっていた。
「あれ?ブドウもトイレかな」
匠馬が呟くと、隣のチームの一人が声をかけてきた。
「君の相方、そっちの女子チームと話が盛り上がって、一緒に自販機にジュース買いに行ったみたいだよ」
「あ、そうなんですか……」
今のうちに早押しクイズのコツとか話し合いたかったのだが。でもブドウはなるべく友達を作るようプログラムされているの言ってたし、仕方がないな。そう匠馬は思った。
しかし、最終決戦前にやっぱり黙ってもいられないので、ブドウを自販機のところまで迎えに行くことにした。
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