多答クイズ パズル

 次の種目はボロボロだった。種目は多答クイズ。二人で2つ以上の答えがある問題をかわりばんこに答えるのだ。

 そう、いくら匠馬が出来たって、ブドウも分からなくては何の意味もない。

 これに関しては全問不正解だった。

「ごめん。何も分からなかった」

「いや、うん、大丈夫……」

 大丈夫、と匠馬は言ったものの、全問不正解はさすがにちょっとキツかった。

 さっき全問正解したものの、ここから挽回できるかどうか微妙である。


「見たか?あのチーム。あの女子全然できなかったよな」

「一人で優勝できると思ってんのかな」

 クスクス、と陰口がどこからともなく聞こえてきた。

 匠馬は文句を言おうと辺りを見渡すが、誰が言ったかは分からなかった。ブドウにも聞こえてしまったのか、微妙な顔をしている。

 ――ふざけるな。ブドウは努力はしてたんだ。本当なら一つくらいは正解出来たはずだ。

 匠馬は、自分のことのように悔しくて、唇を噛んだ。


 そうしているうちに、次の種目だ。

 次は……。

「パ、パズル……!?」

 匠馬は青くなった。

 去年までの大会でパズル問題は出たことがない。対策なんて一切していないし、何より匠馬はパズルが苦手である。

 数独、型ハメパズル、論理パズルの3つの早解きだ。

 さっきの全問不正解を何とかしたいのに、これで逆転は厳しそうだ。

「うわぁ。これはキツイ……」

 匠馬が頭を抱えている横で、相変わらずブドウはケロッとした顔をしている。

 そして、匠馬に何ともないような口調でたずねた。

「へえ、パズルもやるんだ。匠馬、どれから行く?私数独は自信あるからサッサとできると思うんだけど、論理パズルは時間かかりそうだから先に考えててもらってもいい?」

「へ?」

「え?匠馬も数独やりたい?」

「じゃなくて。ブドウ、パズルできるの?」

「え?できるよ。いつもね、お母さんがパズル得意でね。よく教えてもらってたんだ」

 匠馬は、あっ!と思い出した。

 そうだ!前にそう言ってた。はじめのころ、家でちゃんとクイズ覚えてきてるのかと詰ったときに、言ってた気がする。

『あのね、お母さんパズル凄く得意でね。私よく教えてもらうんだ』

 そう言っていた!

「俺、パズル苦手なんだ!ブドウ、頼む!」

「そうなんだ。へへ、任せて」

 相変わらずケロッとした顔はしているが、こころなしか得意げだ。


 そうしているうちに、スタートの合図がなる。

 スタートと同時に、ブドウはすごい勢いで解いていく。

「すげえ」

 匠馬は思わず感心した。

 これが毎日小百合さんに教えてもらっていた効果か。

 感心と同時に、小百合さんとの記憶が残っていた事が感慨深く思えてきた。よかったな、ブドウ。小百合さんと楽しく過ごした日々は覚えていたんだな。

「解けたよ。次いくね」

 あっさりと数独を解いたブドウは次の型ハメに取り掛かる。

「匠馬、そっちは大丈夫?」

「あ、ごめん、全然解けてない……」

「いいよ。私今すぐ解いてそっち行くから」

 ブドウが頼もしい。匠馬は少し感動した。


 ブドウの活躍で、パズルは2位通過だった。さすがにブドウ一人では1位通過は難しかったが、それでも優勝圏内に食い込むことは出来た。


「よし!ブドウ!いけるぞ!」

「うん!楽しいね!」

 ブドウの楽しい、という言葉を聞いた瞬間、匠馬はなんだか妙に嬉しくなってしまった。






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