友達
早速、四人で模擬クイズ大会をやってみることになった。
クイズ問題は、桃香がオススメするクイズアプリで出題することにした。
結果はなんと……!
「すごいじゃん!ブドウちゃん答えれるじゃん!」
「えへへ」
「匠馬くんなんか手も足も出なかったもんねえ」
「うるせぇ。こんなの、ズルいだろ!」
匠馬はむくれた。
「出題テーマ、ファッションに、スイーツって……どう考えても女子に有利な出題じゃん!」
桃香はわざと、ブドウに有利になるように問題テーマを絞って出題設定をしたらしい。まさか食事をしないロボットのブドウがスイーツに詳しいとは思わず、匠馬は完全に油断した。
「はぁー?今どき、女子がとか男子がとかで区別するの?遅れてるー」
桃音はニヤニヤと笑ってみせる。
岳が、慌てて二人をとりなすように割って入った。
「ほら、一応ファッションとか流行とかの範囲もクイズ大会で出たことあるし。匠馬なんかそういうのよく取りこぼしてたから、あえてそういうの出題したんだよ、な?桃音さん」
「え?そうそう、どうせ匠馬くん、学校の教科書に書いてるようなクソ真面目な問題しか練習してないんじゃないかと思ってさ。ほら、解けた楽しさみたいなのを、この可愛いブドウちゃんに教えてあげようかと思って」
そう言って、桃音はブドウの頭をグリグリと撫でる。
ブドウは嬉しそうな顔でされるがままになっている。
――くそ、また頭取れるぞ。
匠馬はムスッとそう思った。
「楽しいね、答えられたら」
「でしょう。あ、そうだ、おすすめのクイズの一問一答のアプリもあるよ。ブドウちゃんスマホ持ってる?」
「持ってない」
「じゃあお父さんかお母さんに入れてもらってね」
桃香はサクサクとそう言って、アプリの名前を書いたメモをブドウに手渡した。
「あ、岳くん!もう塾の時間だよ!行かなきゃ!あ、ブドウちゃん、連絡先知りたいんだけど」
「お母さんのスマホでもいい?」
「ブドウちゃんがそれでいいなら」
ブドウはメモに連絡先を書き込むと、桃香にわたした。
「じゃあね!ブドウちゃん!あ、匠馬くんも!」
ついでみたいに言われて、匠馬はムスッとする。そんな匠馬に、岳は笑ってなだめた。
「まあまあ。ブドウさん取られて嫉妬する気持ちはわかるけど」
「嫉妬じゃねえよ!」
「ま、また暇な時練習相手なるから、呼んでくれよ。じゃあ、俺たち塾行くから」
勝手な事を言いながら、岳と桃香は去って行った。
「新しい友達、出来た!」
ブドウは嬉しそうに桃香からもらったアプリのメモを見つめていた。
「いっぱい友達作るようにプログラムされてるから、嬉しい」
「そこはプログラムとか言うなよ」
匠馬は呆れたように突っ込んだ。
「楽しかった!ね、楽しかった。わかったよ。クイズの楽しさ。お母さんとやるパズルみたいな楽しさなんだね!」
帰り道、一緒に帰るブドウは目をキラキラさせてまだ言っていた。相当楽しかったのだろう。
桃香のことは正直気に入らないけど、ブドウが楽しかったって言っているならまあいいか。と匠馬は自分を納得させた。
「ほら、答えられたら楽しいだろ。だからほら、色々練習を今度……」
「また桃香ちゃんとやりたいな」
「え」
ブドウはキラキラした目で言う。
匠馬は面倒くさそうに首をふった。
「やめようぜ。桃香さんは別に大会出ないから遊び半分なとこあるし」
「匠馬、もしかして桃香ちゃん苦手?」
ポンコツAIのくせに、的を得た事を言ってくるブドウに、匠馬はギクリとした。でもすぐに普通の顔で言った。
「別に。苦手とかじゃないけど。ほら、学校も違うしあんまり話したこと無いからさ」
「匠馬は、桃香ちゃんと一緒にやるの、嫌?」
「嫌……っていうか……まあ桃香さんじゃなくて岳ととかの方が気楽だなあとは思うけど」
どんどんブドウがシュンとしてくるのが目に見えてきて、匠馬はいたたまれなくなった。
いや、この態度は俺をコントロールするためのプログラムだから!前に泣いたのと同じで、ガッカリしてみせてこっちに罪悪感を与えて自分の思い通りにするためのプログラムだから!
匠馬は自分に言い聞かせた。しかし、やっぱりシュンとするブドウを見ていると、どうしてもいい気分にはならない。
「わ、わかったよ……たまに桃香さんとも一緒にやろう」
「ホント!?やった」
けろっと一瞬で元気になるブドウを見て、ああもうやっぱり!と匠馬はムスッと不貞腐れるのだった。
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