助っ人
※※※※
「匠馬!」
その日、匠馬とブドウは、岳と放課後公民館の自由室で待ち合わせをしていた。
先日の事を反省した匠馬は、せめて何人かと楽しくワイワイ模擬クイズ大会でもやろうと思いついたのだ。
「おー、岳。悪いな、今日も塾だろ」
「ん、まだ時間あるし。いやぁ、まさか真中ブドウさんと組んでるとは思わなかったよ」
岳は、そう言ってブドウに笑いかけた。
「匠馬スパルタだろ?大丈夫か?」
「うん、スパルタ。私泣いたもん」
「うわ。お前女のコ泣かせるとかサイテー」
岳は茶化すように言った。
「うるさい。反省してるってば。ブドウも、わざわざ広めんなよ」
「ごめん」
「ほらほら、また泣かすぞー」
岳は完全に面白がっている。
「ところでさ、今日もう一人呼んでるんだけどいいかな。うちの塾で会ったんだ」
岳がそう言うと、匠馬はあからさまに嫌そうな顔になった。
「勝手に呼ぶなよ。俺、結構人見知りなんだぞ」
「いや、匠馬も知ってるやつだし」
「え?知ってるやつ?」
匠馬が聞こうとしたときだった。
「ひっさしぶり~!」
妙に元気な声が響いて、匠馬は恐る恐るその声の方を向いた。
「げ……」
匠馬は思わず唸った。
「うわー、嫌そうな顔された!酷い!」
コロコロ変わる表情は、去年会ったときと変わらない。
学校は違うけれど、匠馬と同じ小学生六年生。
そして、去年の小学生クイズ大会の優勝者である。
「桃音さんもまた今年も出るの?」
「んーん。今年はお兄ちゃん中学生になっちゃったから出れなくて。別に私はお兄ちゃんの付き添いで出てただけだし」
ケロッとした顔でそう言い放つのが、匠馬には気に入らない。
自分は必死なのに、桃音は軽いノリで大会に出て、それでいて匠馬より強い。
「なんか、岳くんから匠馬くんの事聞いてさ、苦労してるみたいだからちょっと助太刀しちゃおうかなーって思ってさ」
「別にいらねえけど」
「テレ屋〜。なんだよ、思春期かよ思春期かよ」
桃音は同い年のくせに変な絡み方をしてくる。
「あの。はじめまして」
元気にはしゃいでいる桃音に、恐る恐るブドウが声をかけてきた。
「自己紹介まだだったので。真中ブドウです」
桃音はマジマジと、丁寧に頭を下げるブドウを見つめ、そしてパッと顔を輝かせた。
「よろしく!私、村井桃音!ブドウちゃん?可愛い名前!てか名前だけじゃなくて見た目も声も可愛い」
「ほえ」
急に褒められて、ブドウはすぐに反応できなかったらしく、変な声が出た。
「やだぁ。スベスベ羨ましい。人間離れしたキレイな肌だねえ」
桃音は一切の遠慮をしないでブドウにくっついてきた。
――そんなにくっついて、ロボットだってバレないよな?
匠馬はハラハラと二人を見つめた。
「ほら、桃音さんって明るいし。ブドウも女の子一緒のほうが楽しいかなって」
ブドウにベタベタする桃音を見ながら、岳は能天気に言った。
「まあ、楽しそう、だけどさ」
匠馬は、桃音にくっつかれながらもまんざらでもなさそうな顔をしているブドウを見ながら、少しおもしろくなさそうに口をとがらせた。
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