泣く

 そしてまた三日後。同じ公民館の自由室。


「四国の四つの県全部答えて」

「香川、徳島、高知、愛知……」

「愛知は違う。愛媛!愛しか合ってない!」

「うう……」

「じゃあ、日本で一番市が多いのは?」

「えーっと……東京?」

「埼玉!!あーもうだめだな知識系。じゃあナゾナゾ行こう。まずはパンはパンでも食べられないパンの答え、四つは出してみて」

「フライパン……、パンダ……、パン……」

「色々あるだろ。サイパンとかショパンとかパンツとか」

「女のコだからパンツは言えない」

 ブドウは不貞腐れる。そんな様子を見て、匠馬はあからさまにむっとした。

「ねえ、ちゃんとやった?」

「やった。結構頑張った。今回は空き時間全部覚えるのに使った。お母さんとパズルの練習するのもやめて覚えた」

「結果が伴ってないんだけど」

 匠馬はわざと大きなため息をついてみせた。

「だって忘れちゃうから」

 ブドウも負けじと言い返す。全く悪いと思っていないような態度でケロッというのが、さらに匠馬を苛立たせた。

「忘れたらもう一回やるの!全然頑張りが足りない。これじゃあ全然だめ。俺、ブドウのこと、もっとできると思ってたけど、見込み違いだったみた……」

 ふと、匠馬は言葉を途切れさせた。ブドウの方からグスン、グスン、と声が聞こえてきたのだ。


 慌ててブドウの顔を見ると、俯いてグスグス涙をこぼしていた。


「ち、ちょっと……え?泣く?泣いてるの?」

「だって……グスン。言われた通り時間いっぱい使った。もうこれ以上出来ない。もう充電時間削るしかない……グスン」

 ボロボロの涙をこぼすブドウに、匠馬は慌てた。

「わ、悪かったよ。言い過ぎた。ちょっと、泣くなよ」


 自由室を使っている他の児童たちもこちらを見ている。

「あ、女の子泣かせてるー」

 とヒソヒソされたりもしたので、匠馬はいたたまれなくなってブドウを立たせると、手を引いて急いで自由室から出た。


「悪かったってば。一回帰ろう。な?泣き止んでくれよ」

 必死でブドウをなだめながら、匠馬はブドウを家に送って行くのだった。







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