第32話 楽しい旅行計画
国王陛下のやらかしは、イジーには反面教師になってるんだと思うけど、同時にトラウマにもなってるんだと思う。
もしかして、だからこそ、異性にそういった気持ちが持てないのかな?
そこは、僕も同じなんだけど、僕はヒルトに言われて、リハビリ中だからなぁ。
イジーはヘッダという婚約者がいていずれ結婚することが決まっているから、色恋を考えなくてもいいと思っているかもしれない。
でもそういう考えが一番危ないんだよ。
国王陛下のようなことはしない。ヘッダは大事にする。そこに恋に落ちちゃいましたってなったら、その反動が恐ろしい。
そういう意味では、テオがイジーをあっちこっちひっぱりまわして、いろんなことにつき合わせてるのは、有り難いんだよ。
何事も経験が大事。
まぁテオのあれは狙ってやってるんじゃなく、自分のやりたいことにイジーを付き合わせてるだけなんだけどね。
イジーはヘッダに対して誠実であるようにという僕の言葉に、なにを思っただろうか?
何かを静かに考えこんでいる様子であった。
ただ、最後に「気になる相手が出来た時は、兄上に報告します」と言ってくれたから、一人で勝手に暴走するようなことはないと思いたい。
そう、いや、もう本当に、卒業式後のプロムで、婚約破棄劇場とか、やらかすなよ?
王妃様がされたことを息子のイジーがやらかしたら、王妃様は自害しそうな気がするから、本当にそれだけはするなよ?
ちょっとだけしんみりした話は終了して、この間、宰相閣下からもらった手紙のことをネーベルとイジーそしてリュディガーに伝えた。
「今年の夏の長期休暇なんだけど、みんなでメッケル北方辺境地に行かない? 公務終わった後になるけど」
僕の言葉にイジーは目を見開き、リュディガーはきょとんとした顔をする。
「宰相閣下から許可でたのか?」
ネーベルは理解が早い、前に言ったことを覚えていたようだ。
「うん、スケジュール調整してもらった。夏の長期休暇を利用して、メッケル北方辺境地にある、ヴォータン神の主神殿に行く許可とった。イジーも一緒に行くよね?」
そう訊ねると、何度も首を縦に振る。
「それでさ、アウトドアー・キャンプを決行したい!!」
むんと胸を張って主張すると、さすがにネーベルも僕の言葉に首を傾げた。
「アウトドアー・キャンプ?」
「って何ですか?」
ネーベルとリュディガーの問いに答える。
「えーっと、いうなれば野営」
「野営、ですか?」
「護衛をわんさかひきつれて、行楽避暑するんじゃなくって、軽装備、少人数で旅行するの。もちろん宿屋も利用するけど、なるべく野営設営できる場所で寝泊まりしながら、メッケル地方のヴォータン神の主神殿を目指す」
どうだ、ちょっとワクワクするだろう?
狙い通り、イジーとリュディガーの目がキラキラとする。
「大雑把に考えてることは、野営の時は、川で魚を釣ったり、狩りをして食料調達しようと思うんだ。もちろんそう簡単には獲物を狩れるともおもってないから、食料調達ができない場合を考えて、あらかじめ町や村によって一日分の食料は購入するよ」
「ルートは決まってるんですか?」
表情には出てないけどイジーがワクワクしている。
「それなんだけど、イジーとリュディガーはテオと一緒に七不思議調査があるし、僕とネーベルで計画を立てようかなと思ってるんだ。その代わり、イジーとリュディガーが行きたいところがあったらルートに入れようと思う。立ち寄りたい場所とかある? あったら教えて」
僕は、出来るだけ神殿に寄って行きたい。
マルコシアス家に加護を付けてくれているヴィント神の神殿と、それからヴォータン神の神殿があれば立ち寄りたいんだ。
「レーゲン湖に寄りたいです」
「ビルスナー領にある塩湖だね。うん、ルートに入れておくね。リュディガーは?」
「マインツに、夏場にだけやっている蚤の市があるんです。もし日程に重なっていたら寄ってみたいです」
「マインツ領の蚤の市ね。オッケー。ネーベルは?」
「すぐには出てこないな。決まったら言う」
「りょうかーい。一応みんなの行きたいところは寄りたいけど、最終的には同行者のフェアヴァルターたちに、ルートは修正してもらうことになると思う」
同行者はフェアヴァルターの他にゲルプ、ネーベルの養父であるクレフティゲ老、それからシルトとガーベルは決まってる。追加が何人か出てくるかもしれないけど多くても三人程度かな?
今回、男性ばかりの同行者なので、ランツェはお留守番。その代わりマルコシアス家の暗部、他のアッテンテータが影でついてくるはず。
「あ、少人数での旅行だから、お忍びの形になるよ。僕とイジーは貴族の子供だからね?」
爵位ははっきり決めないで、裕福なお貴族様という設定で。
空間魔術の付与がついてるアイテムボックスも使用するから、馬車の使用はなしで馬の移動になる。
「そう言えばイジーは自分の馬持ってるんだよね?」
「はい」
「僕もそろそろ自分の馬持ったほうがいいかなぁ。こんなふうに遠出することも多くなるし」
腕を組んでムーッと考えこんでいるとイジーがもの言いたげな視線を向けてくる。
「どうした? イジー」
「兄上の馬、ありますよね?」
「ないよ?」
公務で視察に行くときに使ってるのは、王宮から借りてる馬だから。
「……」
イジーが言いたいことは、なんとなくわかる。
王家の直系王子は父親……、国王陛下のことなんだけど、一歳の誕生日に馬を贈られるんだよ。
これからの人生がうまくいきますようにっていうゲン担ぎのようなものだ。
はいそうです。お察し案件! 僕、国王陛下から馬を贈られていません!!
別にアレから何かを貰いたくはねーし、それにねぇ、どーせ自分の馬を持つなら、かけ合わせから着手したいよねー。
いや、馬のお嬢さんたちをプロデュースするのと違うってことぐらい、ちゃんとわかってるんだよ?
でもさぁ、名馬作りたいよねぇ?
フルフトバールと縁のある馬牧場、おじい様に紹介してもらおう。
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