第18話 浅層にいる魔獣じゃないでしょう?!
「浅層に多くいるのはビッグボア、ホーンラビット、ナーゲルフォックス、ワイルドウルフあたりです。他にもたくさんいますが個体数が多いのはそのあたりですね」
でも全部肉食なんだって。ホーンラビット、ラビットってついてるのに、肉食なんだって! まぁ魔獣だからね!
身に着けた装備を確認し、今日は『夜明』を使うことにした。
「嬉しそう、だな」
「嬉しそう、ですね」
ぶんぶんと『夜明』を振り回していたら、ネーベルとヒルトが声をそろえて同じことを言う。
だって、やっと魔獣狩りが出来るんだよ? 魔獣狩りが出来なきゃフルフトバールの一員じゃない。おじい様の跡取りなんて名乗れないじゃないか。
みんなの準備が終わって、さっそく樹海の中の魔獣狩りに行くことになった。
安置拠点は魔石で強めの結界を張っているから、魔獣は近寄らないようになっているので、狩りに必要ではない物は、安置拠点に置いていき、僕らは武器と、対魔獣用の攻撃用の飛び道具だけを持ち、安置拠点から離れた。
不帰の樹海には、ちゃんと生態系が出来ているから、種別ごとに、どの辺にどの魔獣がいるというのも、魔獣狩りであるトレッフとピートは熟知している。この不帰の樹海で魔獣狩りをしている者は、魔獣の分布図がだいたい頭に入っているそうだ、あとそういう情報も、魔獣狩りをする者には周知しているのだという。
初陣だけど気負う必要はないとのことで、魔獣の中でも小型のホーンラビットか、ナーゲルフォックスを狩ることにした。
ホーンラビットはその名の通り、一角を持つウサギで大きさは大型犬ぐらいの大きさだ。常時、三・四匹で固まっているらしい。毛色はほぼ白が主流で、稀にグレー、それから本当にたまーに黒毛がいる。ナーゲルフォックスは、鋭利な長い爪と二つ尾を持つ狐で、大きさはホーンラビットと同じぐらい。こちらは灰毛がほとんど、たまーに白毛がいるそうだ。
どっちも毛皮が高値で取引されていて、フルフトバールの財源の一つになっている。
ホーンラビットが獲れたら角をイグナーツくんのお土産にしよう。ナーゲルフォックスだったら爪かな。あと魔石も取れたらいいなぁ。
先にホーンラビットの生息地に向かうと、ピートが教えてくれた。
樹海の中を歩いていると、鳥系の魔獣なのかな? キャーとかギャーとか、あっちこっちで聞こえる。風で葉っぱが揺れる音、あと遠くのほうから水の音が聞こえる。近くに川っていうかせせらぎがあるのかな?
空気が……、草木とそれから土の匂い、濃いなぁ。
「もうそろそろ、ホーンラビットの生息地に入りますよ」
ピートに教えてもらって、ちょっと緊張する。
「あれ? いないな。いつもならもう何匹か目視できるんだけど」
なんだろう、さっきとまでとなにか違う。
バサバサという音、は、もしかして風の音じゃなくって、鳥が、羽ばたくような、あとミシシッとかベキッとか、樹木の枝がおれるような音が、近づいて……。
近づいて? 唐突に僕らの上に、影が落ちる。
はっとして上を見上げると、すぐそばに大きな鷲頭の魔獣の姿が見えた。
「うっそだろ?!」
「どうしてこんなところに?!」
フェアヴァルターとピートの声が重なる。
「グリフォン?!」
「違うっ! こいつはグリフォンじゃない!」
テオの声にトレッフがすかさず否定する。
「ヒポグリフだ!!」
いきなり大型魔獣かよ!!
大人組に二人ずつ抱えられ、ヒポグリフから距離を取る。
「っんで、深層の魔獣がこんなところまで来てやがんだよ!!」
ピートはすかさず鉈を大きくしたような武器を構えて、それから傍にいる僕とネーベルの存在を思い出してはっとする。
「えーっと、えーっと、どーすりゃいいんだぁぁ!!」
僕らを守るかヒポグリフを狩るか。
「そんなの決まってるでしょ?!」
「やるしかねーよ!」
僕らも武器を構えて、フェアヴァルターに作ってもらったお散歩コースで動くのと同じように、魔力巡りをして、ヒポグリフが鷲の前脚で踏みつぶそうとしてくるのを避けながら、近くの樹木の幹を足場にして飛び上がる。
「キャァァァァァー!」
ヒポグリフの雄叫び? 咆哮? 耳がキーンってなる!! それから翼を羽ばたかせて、風を起こすから、迂闊に近寄れない。
よし、上から攻撃する!
樹木をつたって飛び上がって、上から『夜明』を振りぬこうとするんだけど、そのたびに風ではばまれる。
くっそぉ! こういう時、攻撃魔術使えたらなぁ。ラノベのスキル持ちとか魔術師主人公うらやましすぎんだろぉ! こちとら攻撃魔術なしで、物理で攻撃だよ!! まさにモンハンだよ! 安置からの遠距離攻撃、出来るなら僕だってやりてーわ!
「弱点どこぉ?!」
僕の叫びに答えたのは、フェアヴァルターとトレッフとピートだった。
「首!!」
「前脚!」
「翼の付け根!」
人間でも魔獣でも、結局は首かい!
トレッフが足止めをしようとするけど、ヒポグリフは首を振りながら突進してくるから、なかなか足止めが出来ない。
「どの生き物も、眼は急所の一つですわよね!」
ヘッダが少し離れた場所で、弓を構えてる。
「一瞬で構いませんわ! どなたか足止めしてくださいませ!」
ヘッダの言葉に動いたのはフェアヴァルターで、ヒポグリフが突進してこようとするタイミングに合わせて、土壁をヒポグリフの足元に出現させる。
ヘッダは弓を持っていたけど矢は持っていなかった。けど弦を引くのに合わせて弓腹から中仕掛けの間に光の矢が出現し、ヒポグリフの眼に目がけて放たれる。
「ギャァァァァァァァ!」
命中した! すごい!
片目を潰されたヒポグリフはしきりに首を振りまわす。
「前脚斬り落とせ!」
フェアヴァルターの掛け声に、ピートとトレッフがヒポグリフの足元に駆け寄り、得物である剣を振りぬく。けど、また風、っていうか風圧が飛ばされて、傷つけることが出来たのは、皮一枚。
くっそ、風圧さえ飛ばされなかったら、あの前脚斬り飛ばされてたはずなのに!!
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